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【海外レポート/オーストラリア】飲食店&ホテル訪問記 / シドニー・メルボルン・バイロンベイ

1月に会社のメンバーと3年ぶりにオーストラリアに行ってきました。
オーストラリアは僕にとって一番インスピレーションをもらえる国。
せっかくなので、現地の空間ビジネスのことや、今回感じたこと等についてレポートに残してみようと思います。

今回は、3年前に一緒に行った経営チーム3人に加えて、Honeのシェフであるトミーを連れて4人での訪問。

Honeは一週間程レストラン営業を休ませてもらい、思いっきり学びのために時間を使ってきました。
(Hone1Fのスタンド、LOBBY、nephewというお店は通常営業。各店舗を守ってくれるメンバーの皆に感謝です。)

僕がオーストラリアが好きな理由

前述の通り、僕にとって、飲食店など場作りにおいてはオーストラリアが一番インスピレーションを得られる国。
ここ1年間でロンドン、コペンハーゲン、フランス、韓国、オーストラリアに訪れた結果、その考えは変わりませんでした。

その理由は大きく2つ。

固定概念なく良いと思うものを取り入れて、組み合わせられる風土

オーストラリアはヨーロッパに比べて歴史が浅く、多国籍の人が住むミックスカルチャーの国。
移民も積極的に受け入れているし、若い世代を中心に、人種や文化の受け入れにとてもフラットな印象を受けます。

だからこそ、固定概念なく良いと思うものを取り入れて、組み合わせられる風土があると思います。
飲食店の厨房を見ると、当たり前に色々な人種の人々がいるし、カフェの食事メニューも和洋折衷の要素が見て取れて面白い。

(そんな話を以前アメリカ人の友人にしたら、「オーストラリアはアメリカの追い掛けで面白くない」的な事を言っていたので、見る人によっては違う印象を持っているのかも。ただ最近のオーストラリアはアメリカというより北欧のインスピレーションが強い気がします。)

ヨーロッパではやはりクラシックな要素が根強く、伝統的な深さを学ぶことが出来ます。

良い悪いではなく、どちらも素晴らしいのですが、僕にとってはオーストラリアの方が参考になるという話です。

僕は& Supplyという会社で、内装やグラフィック、壁画制作のデザインを主戦場に、飲食店を3店舗、レンタルスペースを1店舗経営しています。

自身はインターネット業界出身なので、内装設計も、グラフィックも、壁画も飲食も、専門で勉強してきたり、仕事として従事してきた背景があるわけではありません。
バーをやっているけど、クラシックバーで働いたことは一度もありません。

そんな僕達には、場作りにおいて、「歴史をベースにしたこうあるべきもの」というクラシックな要素作りを強みにすることは出来ない。

となると、専門知識が無いこと・歴史を知らない弱みを活かして、「固定概念に捕われずに、今この場、この時の自分達の解釈を表現する」ことを強みとしていく必要があります。

それを国としてやっているのがオーストラリアだと思っています。
だからこそ学びが深く、街を歩く、お店に入るだけで沢山の気づきを得られます。

飲食店のビジュアルブランディングへの投資度合いが段違い

オーストラリアでは、小規模な個人店でも、デザインの投資度合いが日本の飲食店よりも圧倒的に大きい印象を受けます。

特にウェブサイトやSNS運用におけるビジュアルブランディングの領域。
各店舗にグラフィックデザイナーがいるのかと思うほど力を入れています。

例えばナチュラルワインのエチケット(ラベル)もアーティスティックなものが多い気がします。

以前聞いた話では、フランスでは皆ほっといてもワインを飲むから、エチケットはあまり考え直したりしないらしいです。クラシックがまだまだ主流。
内装デザインに関しても、昨年11月にパリに行ったところ、街角のカフェビストロは基本的に同じ傾向で、店舗ごとのオリジナリティはあまり見られませんでした。

でもオーストラリアでは誰もワインを飲まなかったから、エチケットもアーティスト達を起用して工夫しないと手に取ってくれなかった背景があったみたい。

同じ話で、オーストラリアではグラフィックも内装も頑張って、人々を楽しませる努力をしないとビジネスが成り立たないのかも。
だからこそ、新しいデザインを見に行くならオーストラリアに行くのが面白いと思っています。

そんなこんなで今回もたくさん学びになったオーストラリアの旅。
特に印象に残ったお店を、旅の時系列とともにあげていきます。

1日目:バイロンベイ

今回の旅程は、まずはゴールドコーストに飛び、ビーチエリアのバイロンベイに一泊。その後メルボルンに移り3泊し、シドニーで3泊するという流れ。

バイロンベイは15年程前に行ったきりでずっと再訪したい場所だったので、タイトなスケジュールの中無理やりねじ込みました。

ゴールドコーストから車を走らせ1時間少しすると到着。
1月は夏真っ只中。
年始ということでバケーションの人々もいて、ビーチも街も大賑わい。

オーストラリアの友人達から、「バイロンベイはもう良くも悪くも観光地化してる」と口を揃えて言われていた言葉通りな感じ。
ビーチカルチャーに紐付いたお店が多く、ハッピーなバイブスが流れる街でした。

バイロンベイでは街の外れに新しく出来たJonson Laneというショップとレジデンスの複合施設に出来た3つのお店のレポートを。

この施設に入る3つの飲食店、かなりハイセンスでした。

LIGHT YEARS 

LIGHT YEARS はモダンアジアンバー&ダイナー。外から覗いて気になってので、1杯だけウォークインで利用しました。

ピンクやブラウンを基調とした明るいインテリアが可愛い店内。
一見すると可愛さ重視の「インスタ映え」にくくられそうな店内ですが、実際は相当拘って作られており、ディティールまで手が込んだ空間でした。

あらゆる材質の掛け合わせで出来ている空間。壁にはアーチを入れていたり一工夫。天井に竹?っぽい素材を使ったりとアジアンな要素も忘れない。
僕達のお店、Honeでも使っている照明。バーバー&オズガビーの EDOHOTARU(えどほたる)。

このお店のウェブサイトもとても可愛いので是非見てほしいです。
店内同様、ピンクを基調に構成したウェブサイト。

店内、HP、SNSとここまで作り込んでいる飲食店はなかなか無い。

僕達が経営するLOBBYやnephewもキーカラーを決め、各グラフィックや店舗内装へそのキーカラーを落とし込みブランディングの一貫性を作る手法を実践しています。

この考え方はオーストラリアの飲食店から学んだもの。
お店づくりにおいて、まず目に入ってくるデザインの要素はとても重要だと気付かされます。

ピンクを基調に、アジアンな要素を感じる素材を使いバランス良くまとめた店舗デザイン。アートのハズシもセンス良い。
良い空間は、働くスタッフも気持ちが良いですよね。

PIXIE FOOD & WINE

PIXIEはイタリアンレストラン。
ACE HOTEL SYDNEYを手掛けたFlack Studioが内装設計を担当しているということで楽しみにしていたお店。

デザインラグジュアリーな空間に一同感嘆。
一つ一つが主役になれるような素材を組み合わせて構成されているのに、不思議とバランス感があります。
まるでデザインのレアルマドリード。はたまた昔のジャイアンツ。

日当たり抜群の広い店内。この時期は夜8時頃まで明るいので、気持ち良いディナーでした。
テラコッタタイルの中に不意に組み込まれたテラゾータイル。ギミックの工夫がすごい。
フロアから見るカウンターの壁に貼られたアクセントタイル。差し色的な使い方がおしゃれ。
設計のメンバー、ドテウチとも盛り上がった艶ありマスタードに塗られた天井。なんてこと無い塗装ですが、天井の意匠としては珍しく、やられた感。
料理はイタリアン。美味しかったけど、正直空間に持っていかれてあまり記憶に残らず。笑

こちらのウェブサイトはこちら。
このサイトもしっかり作り込まれています。

Instagramアカウントはこちら。
オーストラリアの飲食店はブランディングの平均値が高い。SNSの投稿写真も力を入れていることがわかります。

料理を4品、ワインを1本ボトルで頼んで、会計は219ドル。
約20,000円と、思ったよりもリーズナブルでした。

BAR HEATHER

BAR HEATHERはバイロンベイで一番感動したお店。
パリにインスパイアされたナチュラルワインバーだそうです。

このお店、とにかく雰囲気が好みでした。
入り口から店内の構造、内装、照明、スタッフ、そして介在するお客さん、全てが完璧にマッチしていたマジックアワーに入店したのかもしれません。

「ここ絶対良い店だ!」と、お店に入った瞬間から、「なんかもう超好き」という第一印象。
今これを書きながらその理由を考えてみます。

まず入り口ドアを開けると重厚なベロアのカーテンが店内を隠しています。

風除室としての機能を持っているようですが、演出としての効果もとても大きいと思いました。
外から中が見えないので、「カーテンを開ける」という行動が秘密の部屋を覗くような気分でワクワク感を演出します。
パリで行ったバーでも同じ仕組みを見たので、夜の業態であれば演出として成り立ちそうです。真似できそう。

中に入ると左右にテーブルスペース、奥にU字のカウンター。(設計のドテウチ曰く、松屋カウンター笑)
俯瞰した写真がなく伝えづらいのですが、席構成が見たことなくて新しい。

入店するとテーブル席。この左側はサービス用のステーションがあり、更に左にテーブル席がありました。この席は背もたれが垂直なのでめちゃ座りづらいです。笑 良くも悪くも長居させない席。

左奥にはキッチンがあり、その手前にU字カウンターがあります。

このカウンターはワインのサーバーやバーテンダーとしては憧れの形。
まるでステージのようで、コミュニケーションが好きな人は働いていて楽しいだろうなと思います。
いつかやってみたい形です。

店名にBARとあるのでお酒のお店かと思いきや、ワインに合うフードメニューも充実していました。
といってもガッツリ系はなく、あくまで「つまみ」という感じ。

東京にも沢山ワインバーはありますが、「バーの様な内装で、軽くつまみも食べられる」というお店は余り思い浮かばないので、新しい形態だなと感じました。

働いているスタッフ達もかっこ良い。

2日目〜4日目:メルボルン

2日目からはバイロンベイを後にしてメルボルンへ。

オーストラリアの2大都市であるメルボルンとシドニー。
それぞれに特徴があり、僕はどちらも大好きです。

メルボルンはコーヒーが有名だったり、よりアートやカルチャーが発展している街という印象です。

レストランやワインバーなど、素敵なお店がどんどん出来ていて数日ではとても回りきれない程。

今回は18店回った中で印象に残ったお店を紹介します。

Old Palm Liquor & Bahama Gold

ここは数年前にinstagramで見つけてからずっと気になっていたお店。
満を持しての訪問でしたが、期待を上回る満足度でたっぷり刺激を受けました。

店内に入ると、重厚なレストランバースペースが広がります。

濃い色のウッドで構成された重厚感ある店内。木造家屋を改装?したスペースの模様。

カウンターのバックバーがワインの収納セラーに。横並びでラベルもチラ見せしている陳列方法が新しく目を引きます。

ワインセラーの様に、「機能として必ず必要、かつスペース面積も占めてしまう要素を再考してデザインすることで、お店のアイコンとして見た目にも活躍させることができる」という点は大きな気づきでした。
ワインセラー以外の様々な要素で同じことが言えますよね。

大きな窓でたっぷり日が入る窓際席。天気が良くて最高に気持ち良い空間。
店内の音楽はレコードで。レコードは隣接するワインバーBahama Goldと共有しているようです。

レストラン奥のキッチン横のスペースを抜けるとかなり広い中庭が広がります。

屈強なボーイズスタッフ。皆個性があってかっこいい!働いているスタッフも多様性にあふれているのがオーストラリアの面白い所。

表からは見えないのでわかりませんでしたが、中庭を入れると、店内は80席ほどはありそうな超大型店舗でした。

訪問したのは年始の土曜日の夕方。
店内は常に8割程は埋まっていて、入れ代わり立ち代わりでどんどん人が来ていました。
街の中心部からは少し離れているのに、この大型店舗を埋められるのはすごい。

カウンター裏の壁を背にした向かいには、ビール&ワインバーBahama Goldがあります。

ここがとにかく気の良いごきげんなお店でめちゃくちゃ憧れました。
道路に並行してカウンターがあり、窓を全開放出来る設計。

外と中の境界が曖昧で、ビアガーデンのような気持ちで飲めます。道路でワイワイ立ち飲みしてるシーンが超グッドバイブス!

路面店、やりたくなります。

明るいけど、これは20時頃。

これが出来るのは寒暖差が落ち着いた気候と、道路沿いに面した立地の利点。羨ましい。
東京のように真夏が暑すぎたりすると結局夏も全開放出来ないんです。

ゆるーい雰囲気でお昼から飲める店内。こんなお店があったら毎週末行っちゃいますね。
更に奥にはボトルショップも併設。レアなナチュラルワインやクラフトビールのラインナップ。

この2店舗、音楽はレコードで。
メルボルンのナチュラルワインバーではレコードが主流でした。
ナチュラルワインとレコードは似たところがあるのでこれは納得。
カルチャーにも食にも造詣が深いヒップな人々が住むメルボルンならではの特徴かもしれません。

音楽の機材もかなりこだわって入れており、DJが入る日もあるそう。
ただ、自分達をリスニングバーとは銘打っておらず、音楽が好きな人でもそうでなくても楽しめるフラットな打ち出しが素敵です。

Bahama Goldを出た後は、系列店であり彼らの一号店のNeighbourhood Wineへ。

オーストラリアにしては珍しい2Fにある店舗です。
こちらも内装が凄まじい。3店舗の中では最もクラシカルな様相です。

3店舗とも統一感を感じつつも、それぞれに独自性が垣間見えて、同じく3店舗を別ブランドで経営している僕らにとって非常に参考になりました。

是非メルボルンに訪れる際はチェックしてほしいです!

メルボルンでは、友人であり大好きなアーティスト、Stephen Bakerと合流。

彼の巨大壁画を見に行ったり、久しぶりの再会も楽しみ、次の目的地のシドニーへ。

4日目〜7日目:シドニー

4日目にはシドニーへ移動。
カルチャーやデザインが秀でた飲食店はメルボルンに多い一方、ブティックホテルはシドニーの方が多いのは少し不思議です。

シドニー編では、今回泊った2つのホテルと、気になったバーについてレビューしていきます。

ACE HOTEL SYDNEY

まずは今回の旅で一番楽しみにしていたスポット、ACE HOTEL SYDNEYから。

大好きな街、シドニーにACEが出来ると聞いてからうずうずしていました。

しかもシドニーで1番好きなエリア、Sarry Hillsにできたということで、長年のACEファンとしては行かない訳にはいきません。

これでACEはNYC、LA、Palm Springs、London、Portland、京都に続いて7拠点目の訪問。

ACEはどの拠点も異なるデザインインスピレーションで作られていて、それでいてちゃんとACEらしさがあるから勉強になります。

今回もウキウキしながらエントランスを抜けると、荘厳なロビーラウンジがお出迎え。

超かっこいいキービジュアル。こんなところで働いてみたい。

ACEと言えばロビーラウンジ。
あらゆる用途を包み込むACEのロビーはホテル業界に多大な影響を与えたし、自分も大いに衝撃を受けました。

このロビーラウンジもかっこよくて大好き。
バーカウンターを望むショットは記憶に残るキービジュアルに。
PortlandやNYCのロビーしかり、ACEはキービジュアルの作り方が上手い。

オレンジの大理石やソファや天井に配置された深緑が印象的。
高い天井に、等ピッチで設置されたライトが目を引く。

オレンジとグリーンがこのホテルのキーカラーな様で、各エリアに差し色として登場してきます。この散りばめ方がセンス抜群。

ACE SYDNEYのロビーはシックで重厚。
良い意味でこれまで見てきたACEの軽やかさやラフさが無くて、そのギャップにまた心を奪われます。

右の謎のアートワークをはめているのがすごい。

飾られたアートワークも既視感が全く無くて、毎回すごいなーと感激させられます。クセのあるデザインも自然に馴染ませているのがかなりハイセンス。
滞在への期待値をグッと上げてくれる流石のロビーでした。

ロビーに隣接したオールデイダイニングLOAM。ロゴのフォントもかわいい。

1Fメインエントランスの真裏にはカフェエリアが。
ガレージのような空間で、ドアを全開放できて気持ち良い。

ここでも施設全体のキーカラーと思われるグリーンとオレンジをアクセントに配置し、エリア毎で異なるデザインの中でも一貫性を作り出しています。

カウンターのテラゾーもグリーンベース。
テラゾーはこうしてさりげなくキーカラーを落とし込む使い方がおしゃれ。

このスペースにはオレンジの椅子など、少しDIYっぽいラフな要素も組み込まれていて、起きぬけのままパジャマで行けるようなカジュアルさ。

バチバチなデザインのロビーレストランとの対比がとても良い。
このあたりはもちろん意図的だと思います。

施設内の各スペースでの過ごし方の分け方、デザインのバランスが秀逸です。

あえて軽い作りのスツール。オレンジが目を引きます。

続いて客室です。

今回は、約50平米の広いスイートに宿泊。
ホテルに泊まる時は、無理してでもグレードの高い部屋に泊まるようにしています。
グレードの高い部屋の方が空間投資額が段違いに高く、インプットの量が多くなるためです。
数万円の差で経験できる総量が変わるのならば、意味のある投資だと思います。
(一人で泊まる時も、涙を飲んで頑張って高い部屋にしています。笑)

リビングにはゆったりとしたL字のソファが。大人数でのんびり過ごせて気持ち良い。

客室にもキーカラーのグリーンとオレンジが散りばめられています。
と言っても全て全く同じカラーというわけでは無く、グリーン系、オレンジ系の中で色味はさまざま。
だからこそ押し付けがましい印象はなく自然に馴染み、よく見ると「キーカラーがある」とわかるちょうど良いバランスで配置されています。

リビングは、1Fのロビーと同じ深緑の革張りソファとオレンジのカーペットのコントラストが絶妙。

2脚あるチェアはグリーンのベロア?の生地張り。
洗面所のタイルは発色が良いオレンジ。

1FLOBBYのバーカウンターの腰や階段で使われていた大理石はキッチンの水回りで登場。

一見すると施設内の各エリアでデザインはバラバラに見えますが、色や素材の一部要素にルールを作ることで施設全体のブランディングの一貫性が保てることに気付かされます。

もちろんそんな小難しいこと考えて泊まる人はいないだろうし、自分も滞在中は気づいていませんでした。
多分、「振り返って見るとなんとなく意図が見えてくる」くらいが良いバランスなんだと思います。

これを書きながら設定されたルールに気づいて、僕自身もう一度答え合わせに行きたくなりました。

ACEの夜はシドニー拠点のイラストレーター、SONNYさんやACEチームとワイワイ飲んで楽しい夜でした。

Paramount House Hotel

Paramount Houseはシドニーだけにある独立系のホテル。
僕自身世界で最も好きなホテルの一つで、今回が3回目の宿泊です。


詳細なホテルログは過去にnoteにも記しています。

今回はこれまで泊まったことがなかったSUNNYという部屋に宿泊。

ドアを開けると広がる開放感のある室内。

これまで3タイプの部屋に泊まってきた中で、SUNNYの名の通り、角部屋でたっぷり日が入るこの部屋が一番気持ち良い時間を過ごせました。

各方面に大きな窓。たっぷりの光が差し込みます。

元々Paramount Pictures Studiosのオフィスだった建物をリノベーションしたホテル。
所々に残された構造や躯体が歴史を感じさせます。

粗い躯体を残すところと綺麗にするところのバランスが秀逸

このホテルは独立系ということもあり、ホテルに必要とされるあらゆる要素を再考して作られている点が魅力です。

デザインホテルでも、ミニバーは量販品だったり、ベッドリネンは白だったりすることがほとんどですが、ここにはいつも見たことない物や景色が用意されてます。


ハンドソープやシャンプー等はイソップ。
スナック類は定番ものもあれば、地元のクラフトプロダクトも。カトラリー類やお皿のセレクトも素晴らしいです。
ワイングラスもしっかりオリジナル。ティーカップは陶器のもの。

全ての細部に時間をかけて考えた工夫があって、それを見るのが楽しいホテルです。

ベッドリネンはホテルでは珍しく、ピンクやパープル、ブルーの組み合わせ。

このホテルはオーストラリアの家具ブランドJARDANの家具を多用しているので、おそらくこのリネンもJARDANのものだと思います。

このリネン、実現するのは簡単では無いと思います。

一般的なホテルのリネンは白。そして、基本的に洗濯等はリネン屋へ外注しているはず。
他のホテルと違うことをすると、リネン屋さんからも嫌がられるし、コストも上がる。

それでも、「白じゃなんか味気ない。ここも考えてこだわり抜いて、お客さんを喜ばせたいよね。」という意思が背景にあると想像すると、普通とは違うチャレンジやコスト投資から特別なホスピタリティを感じます。

こういった点はチェーンではなくて、理想を追求できる独立遊軍だから出来ること。

ホスピタリティは物理的な人のサービスだけじゃなくて、置いてあるもの全てから伝わってくるもの。

そんな事実に気付かされるホテルです。

Bar Planet

お次はバーのご紹介。

Bar Planetは、大好きなスタンドカクテルバーであるCantina OK!の姉妹店。

1年少し前に姉妹店がオープンしたのを見ていて、今回必ず行こうと狙い定めていたバーです。

Bar Planetは、今回の旅である意味最も衝撃を受けたお店でした。
内装がかっこいいとか、カクテルの味が美味しいとかではなく、スタイルの話。

場所はNew townというヒップなエリアにあります。カフェやビンテージショップ、パブ等が立ち並び、東京でいうと下北沢に似た感じ。

この街の雰囲気にバッチリあっていて、店内はカクテルバーというより、雑多なパブのような過ごし方になっています。

まずお店に入ると、いきなり遠目からポップコーンが入った袋を投げられてびっくりしました。笑

皆食べてるこのポップコーン、どうやらお通しの様な立ち位置。

オーストラリアではお酒を扱うお店の資格取得が厳しく、相応の資金力が求められるそう。完全にお酒だけの業態で運営するためにはその為の免許が必要となるそうで、それを持っていない人達はバーであっても何かの食べ物を提供しないといけないそうです。

この店ではポップコーンがそれ。
お酒と共にあるとつい食べちゃうので良いなと思いました。

面白かったのは、床にめちゃくちゃポップコーンが落ちてること。笑

落ちている細かいゴミがポップコーン
ガッツリ落ちてます。笑

確かにポップコーンてポロポロ落ちますよね。店員もお客さんも、特に気にしてる素振りは無く、営業中に掃除することはないようです。これがスタンダードな状態。

「ポップコーン投げちゃうし、床にころがっちゃってる。」

このゆるさがこのお店のスタンスを伝えて、店内での過ごし方まで示唆していて面白いなと思いました。
(食べ物を投げることは良いとは思えないので参考にはしませんが。)

「これで成立している」というより、「成立させている」という感じ。

お店づくりって、このスタンスの作り方、伝え方もとても大事だと日々思います。お店側も客側も、お互い期待値が揃っている方が気持ち良い時間を過ごせますよね。

前述の姉妹店、Cantina OKはワールドベストバーにも入るお店。
そんなお店をやっている一方で、こんなゆるすぎるスタンスのお店をやっている振れ幅もすごいなと思いました。

「抜ける所を抜ける」というのは、業界内の「こうあるべき」という習慣を疑い、「ここではそこまで求められて無くない?」という気づきを実行に移せるということ。

僕達の一号店、LOBBYの業態においてはかなり参考になる体験でした。

空間やメニューの見せ方も遊び心がありとても面白い。
独特なデザインのテラゾーテーブルは、インパクトがあって記憶に残ります。

入店すると、チラシの作られたメニューをちぎって渡されます。
初めて見たスタイルで衝撃を受けました。

このお店の売りはマティーニ。自分で人を選んだり、味わいを選んでカスタマイズが可能です。

カクテルのビジュアルは空間同様に不思議系で、遊び心と工夫が面白い。

ちなみに、Cantina OKとBar Planetを経営するのはMUCHO.というチーム。

業態、内装、メニューのアイデアが独特で既視感が無いのに加えて、スタッフのユニフォームまで考え尽くされていて刺激を受けます。

お店で必ず必要とされる機能の中には、思考停止でなんとなく決まっている物事も多い。
それを徹底的に見直すことで独自性のある場作りが実現できると気付かされます。

もう一度自分達の店舗の各側面を再考しなければと刺激を受けるチームです。

サービスはプロカジュアル。とにかく肯定から始まるコミュニケーションが気持ち良い。

他にもたくさん紹介したいお店やホテルがあったのですが、もうすぐ1万字になるのでここまでにします。

今回のオーストラリア旅もたっぷりと刺激を受け、食を通した場作りについて考えをめぐらす機会になりました。

主に内装やスタンスについて書いてきましたが、最後にトータルしたサービスの感想を。

オーストラリアの飲食店はサービスが本当に良くて、全店舗で不満を感じることは一度もありませんでした。
ハイエンドなお店でも固すぎずカジュアル&フレンドリー。だけど同時にプロフェッショナルな感じ。

(僕はこれをプロカジュアルと名付け、自分達のレストランHoneのサービスの目標として定義しています。)

一緒に行ったシェフのトミーの言葉が印象的でした。

オーストラリアの人々はとにかく優しく肯定的で、人生を楽しんでいる。先のことはもちろんそうだが、今をどう楽しむかを大切にしている印象。

お店で何かを頼めば「great、perfect、amazing、beautiful、nice」と、ショップでなにか持てば「cool」と、朝にコーヒーを買えば「have a good day」と、とにかくポジティブな言葉を投げかけてくれる。

トミーにとっては初の海外。
不安を抱いてお店に入って、ドキドキしながらオーダーしたときに、投げかけられる肯定的な言葉に救われたそうです。

これには本当に納得。
英語特有のコミュニケーション方法ではありますが、これは日本の自分達のお店でも真似できるなと再認識しました。

加えて、こうしてレポートを書きながら写真を見返していると、働いている人達がイキイキとしているし、自分のスタイルを持っていてかっこいいなーと改めて気付かされます。

オーストラリアでは、飲食業の各種待遇が他の業種と遜色なく、地位が低くない印象。かつ、レストランは週5営業だったり、カフェは朝7時〜午後3時頃までの営業。ワークライフバランスも保て、環境整備がしっかりしています。

加えて、やはり良い空間で働くと気持ちもポジティブになりますよね。

僕自身飲食店の現場で働いていて常に思うこととして、空間への投資は対お客様への提供価値だけでなく、働いているスタッフの満足度にも影響を及ぼします。
スタッフが気持ちよく働けるためにも、全体的な環境整備はとても重要です。

僕達のお店でも、チームメンバーがイキイキと働き続けられるように環境を常に見直さなければと再認識する非常に大事な機会になりました。

レポートは以上です!
かなり長くなりました。ここまで読んでいただいてありがとうございました。

皆様の参考になれば幸いです!


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