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【D2C】未経験からのブランド運営。ホームグッズブランドMYTONEが月商1600万円を超えるまで。

こんにちは。井澤卓です。

& Supplyという会社を経営し、飲食店やブランド運営、内装やグラフィックデザインの受託制作を行っています。

このnoteは、僕達が2020年7月に立ち上げたホームグッズブランド、MYTONEの立ち上げから現在までを明るみにする公開記事です。

これまでnoteでは、主に僕達が経営する飲食店、LOBBY、nephew、Honeというお店について書いてきました。

未経験から飲食店を始めるとどうなるのか。経営を成り立たせることはできるのか。「将来飲食店をやりたい!」という人が多かったので、そんな人々の助けになればという思いで書いたnoteです。

経営をする中で、「飲食店を開きたい」と同じくらい、「自分のブランドを持ちたい」という人が多いことに気づきました。

そこで今回は、僕達が運営するホームグッズブランド、MYTONEについて書いてみます。

MYTONEは2024年の4月の月商が1,600万円に達しました。
ブランドとしての規模はまだまだ小さいですが、少人数で運営する事業としては成り立つ数字に成長しました。
商品が1点売れるだけで飛び上がるほど喜び、手作業で発送していた頃から考えると想像もできない規模です。

何か特別な打ち手が成功したというよりも、日々地道にコツコツ継続していたことが繋がり、実を結び成長した形です。

その意味でも、「ゼロから自分のブランドを始めたい!」という方や、「立ち上げたばかりのブランドを伸ばしていきたい!」という方の参考になるはず。

立ち上げから時系列で過程をまとめたので、小規模ブランドで悩むポイントである、倉庫や発送、商品開発の外注や、人材採用のタイミングについても参考になるかもしれません。

包み隠さずプロセスや数字実態を書いたので、2万字弱の長文となってしまいました…!
その分興味のある方には実感を伴って読める内容だと思うので、、ブックマーク等してゆっくり読み進めていただけたらと思います。


はじめに:ホームグッズブランドMYTONEとは

まず初めに、ホームグッズブランドMYTONEについて。
MYTONE(マイトン)は、様々なパターングラフィックをモノに落とし込んだホームグッズブランドです。

MY TONE :直訳すると、私の気分・私の色合い

"Make your everyday life colorful." をコンセプトに、「数ある柄や色の中から自分が好きなデザインを選んで、日常を自分色に彩ろう。」というステートメントを掲げています。

自分の好きなトーン=MYTONEと暮らすことで、日々をポジティブに過ごすことが出来る。
インテリアにカラフルなパターンアートを用い、白壁がメインで画一的な日本の物件を自分の好きな空間に変えて、人々の日常を楽しくする事を目指しています。

バスタオル、タオルケットといったタオルプロダクトを中心に、ブランケット、ラグ、風呂敷、ポスター等、気軽に空間を彩れるインテリアアイテムを提案しています。

販売はオンラインサイトを中心に、全国各地でのPOP UPや、一部インテリアショップへの卸しも行っています。

このnoteを書いている現在のチームメンバーは僕を除くとフルタイムが2名のスモールチーム。

フルタイムは長らくディレクターの藤井のみという形で運営してきましたが、今年の2月から新たに山﨑がジョインし2名体制に。その他、プロジェクト単位でデザイナーがサポートしています。
5月からはさらにもう1名が加わり、ブランドの成長に向け土台を作っている段階です。

ブランドを始めた理由

ファブリックを主体とするブランドは、僕が長年温めていたアイデアの一つでした。

僕は昔から布が大好きで、海外に行く度にインテリアショップやアンティークショップを回ってファブリックプロダクトを買い集めていました。

今では、ブランケットは20枚以上、ラグは15枚以上持っています。といってもいつも全部を使うわけではないので、部屋の隅に重ねてあります。笑

ファブリックが好きな理由は、気分で空間の雰囲気を変えられるからです。

ラグやブランケットは、それ一枚あるだけで部屋の雰囲気をパッと変えてくれますよね。ブランケットはベッド掛け、ソファ掛け、椅子掛け、時には壁掛けしてタペストリーのようにも出来る。

白壁のシンプルな部屋でも、色鮮かやなブランケットがあるだけで、空間が明るくなります。
気分によって使うブランケットを変えれば、ファッションのように、毎日自分の好きなスタイルを楽しむことができるんです。

そんな絶えない布愛と共に布を探して練り歩いていた中で、日本にはあまり自分が欲しい柄がないなーと思っていました。

部屋がシンプルになりがちな分、差し色として使うファブリックはカラフルな物を置きたいけど、なかなか自分の好みに合うデザインが見つからない。

そこで、「無いなら自分で作ろう」と思い始めたのが今から6年程前のこと。
とはいえブランドの立ち上げは大きな費用がかかるし、ニーズがあるかもわからない。なかなか踏み出せず、二の足を踏んでいたところ、転機になったのがコロナでした。

当時、僕達は受託のデザイン事業を主軸にしていましたが、コロナの影響で仕事が全くなくなってしまったんです。

「どうしよう、やることが無い。でも何かやらないと。」
そんな焦りの中思い出したのが、温めていたファブリックブランドでした。

受注仕事に頼ると、不測の事態に対応することができない。デザインの仕事をするうえで、「自分達でコントロール出来る事業」が無いことはこの先大きなリスクになる。そう考え、思い切ってブランドを始めることにしました。

当時、人々がこれまで見過ごしてきた住環境の充実に目を向け始めたことから、インテリアブランドへの可能性も感じていました。

こうして、コロナ真っ只中の2020年7月に生まれたMYTONE。もうすぐ丸4年が経ちます。
といっても長らくはなかなか売れない期間が続き、過去には諦めようとしたこともありました。事業として成り立つ売上が作れるようになったのはここ1年弱のこと。

そんな成長の過程を続く章で書いていきます。

(余談ですが、自分自身が何かを始める際、生活者としての自分の視点から、「今は無いけど、あったらいいなと思う物事」を選んでいます。僕達が経営する飲食店は3店舗、そして7月に1店舗が増え合計4店舗になります。その全てが、自分が住む東京というマーケットに、その瞬間ありそうでなかった業態を打ち出しているつもりです。)

立ち上げから現在までの売上高推移

前提を簡単に振り返った上で、早速ここから運営の実態を書いていきます。
以下がこれまでの年商推移です。

ブランドはここ一年間で急成長を遂げ、年商は1億円の突破を見込んでいます。大きな第一目標として掲げていた大台への達成を目前にしていますが、ここまでの道中はやはり山あり谷あり。地道な取り組みを繰り返した4年間でした。
そんな今までの歩みを、それぞれ1年毎の活動とともに振り返ります。

1年目:2020年7月-2021年6月 / 年商632万円

まずは初年度。2020年7月にブランドを立ち上げてからの1年間の数字がこちら。Shopifyにかじりついて自分で作ったオンラインサイトでローンチしました。

立ち上げにかかった費用は100万円程。
商品の生産を工場へ委託した以外は自分達で手掛け、限界までコストを抑えてスタートしました。

2020年7月-2021年6月 売上高推移

最高売上がようやく150万円を超えたものの、10万円程しかない月も多々ありました。

購入数が少ない当時は、自分達の見知らぬ方々が商品を購入してくれたことが感激するほど嬉しく、毎回「売れたー!!」と歓喜していた時代です。

ブランド立ち上げ当初の商品はタオルブランケット3種類のみ。ビーチタオルとしても使える大判タオルです。

タオルを選んだのは、ウールブランケットは既に世の中にありふれているし、もっとインドアでもアウトドアでもカジュアルに使える素材にしたいという理由でした。

生産はタオルの名産地として名高い今治の工場に委託し、今なお継続しています。(現在のところ、タオル、ラグ、ブランケットなど、MYTONEの全ての製品は日本の工場で生産しています。)

初月は友人知人の購入が発生し50万円の売上となるも、続く数ヶ月は20万円にも満たない状態が続き、事業としては全く成り立っていません。

当時のタオルブランケットは13,750円。最初は自分達で発送もしていたので、発送工数を考えてなるべく高単価の商品を売りたいと考えていました。(1,000円でも1万円でも一度にかかる発送工数は同じ。であれば、購入頻度は減ったとしても、単価が高い商品を販売したほうが当然運営効率は良いですよね。)

とはいえなかなか売れない状況に、「タオルに1万円超えはさすがに買いづらいかな?」と、一回りサイズが小さいバスタオルを投入することに。これが現在の主力商品になっています。

日常使いするバスタオルやタオルケットは、部屋に干したりと目に見える機会も多いもの。
無地の物を選びがちですが、「日常的に目に入る物だからこそ、暮らしの中で気分が上がるデザインを落とし込んだタオルがあったらいいな」と考え作りました。

そこから風呂敷、オールシーズンブランケットと商品カテゴリを増やしていきます。デザイナーも社内にいたので、プロダクトデザインやブランディングは自社内で完結させていた時期です。

当時は、植物ポットも販売していました。
業務用卸しの植物屋へ行き、数百円で素焼きのポットを購入し、自分達でペイントして販売するという超人海戦術です。笑 

元々僕達はRELISHという名義で壁画制作事業も行っており、事務所に大量の塗料があったのを有効活用しようというアイデアでした。

このポットは利益率が80%と非常に高く、お客様からも高評価。ところが、1年弱で販売休止となります。
その理由は、売れるほど仕事が増えるためです。

ペイントに工数がかかる上、かさばって保管も大変だし、丁寧に梱包しても、お客様の手元へ届いたら割れていて返品交換、というトラブルも多い。

重ねて保管していたら、微妙に塗装が剥がれてしまって塗り直す。そしてその作業をしている最中、塗料でお気に入りの服が汚れて発狂する。
そんなお決まりのフローを、皆がコントのように繰り返していました。笑 

次第に、この商品は売れると余計に仕事が増えるため、皆売れることを喜べなくなり辞めることを決意。この時に、在庫を抱える商売は、かさばらない、劣化しない商品を選ぶことが重要だと学びました。

大きくてかさばるものはその分倉庫費用がかかる上、ECの送料も高い。劣化するものは、劣化したその瞬間に商品価値を失い不良在庫になる。数人でやるスモールビジネスには不効率過ぎて、自分達の首を絞めてしまいます。

よく考えれば当たり前ですが、EC初心者の僕達はやりながらこの事実に気づきました。「商品選定の段階で自分の首を絞めている」という事象は意外にも多く見受けられるので、気をつけたいポイントです。

そんな1年目の当時は、MYTONE専属のスタッフは存在せず、当時社員だったメンバーが代わる代わる発送をしたり、お客様対応をしたりという時代でした。

つまり、全員が兼務という状態。コロナの影響でなくなったデザインの受注仕事が復活すると、自社ブランド運営は後回しになっていき、売上は全く伸ばせませんでした。初年度の平均月商は52万円。潮目が変わったのは、2年目に現在のディレクターである藤井が専属スタッフになったタイミングです。

ちなみに、MYTONEの1年目の倉庫は、キュラーズ トランクルームの1室を借りていました。トランクルームまで歩いて10分弱ということで、在庫を取りに行くのも大変。在庫を誰が取りに行くか、毎度白熱のじゃんけんで決めていたのが懐かしいです。

2年目:2021年7月-2022年6月 / 年商2,585万円

2年目は、年商が2,585万円に。平均月商は215万と、初年度に比較して大きな成長を遂げました。
以下が2年目の月次売上推移です。200万円を超える月が出てきたのがわかります。

2021年7月-2022年6月 売上高推移

2年目の成長を牽引したのは大きく以下の3点です。

①商品バリエーションの増加 
②ギフトオプションの開始 
③POP UPの開始

それぞれ細かく解説していきます。


①商品バリエーションの増加

インテリアアイテムを買うなら、やっぱり数あるデザインから選びたい。ということで、この時期から各商品カテゴリのデザインバリエーションの増加に着手しました。

それまでは自社で全てのデザインを完結させていたところ、国内外のアーティストやデザイナー、イラストレーターとのコラボレーションに舵を切ることに。

日本では元々親交があった友人に、海外は社内で候補者を集め、メールで直接問い合わせをして制作を依頼しました。日本、イギリス、アメリカ、ベルギーのアーティストとコラボレーションし、ユーザーが選ぶ楽しさも増して購入数も伸びていきました。

メルボルン出身で、現在はLAに住むAntra。バスタオルとオールシーズンブランケットのデザインを担当してくれました。

②ギフトオプションの開始

次に着手したのがギフトオプション。それまでもギフトラッピングの要望は多かったものの、フルタイムスタッフがいなかったこともあり、工数の問題で取り入れることができませんでした。

2年目に藤井がMYTONE専属スタッフになったタイミングで、彼女が自らラッピング方法を生み出し、ギフト対応を開始しました。以下が当時のギフトラッピングです。

ギフトラッピングを始めた当初は、月の売上が100万円にも満たない時代。オリジナル資材も検討したものの、イニシャルコストが数十万円になってしまい導入が難しかったため、既製品でできるアイデアからスタートしました。ラッピングペーパーでくるみ、透明な袋で包装する手作り感あふれる仕立てです。

細かい作業。不器用で大雑把な僕にはなかなか億劫な作業でした。笑 

このように、MYTONEでは、「まず自分達の手でやってみる」ことを前提にしています。というと格好良いですが、資金不足でそうするしかなかったとも言えます。

また、いきなり外注すると十分な知識、理解が無いまま第三者に委ねることになり、不測の事態に直面した時にリスクが大きい。そのため、商品のデザイン、HP制作、商品撮影、広告、発送等、工場での生産以外の全工程を自分達で完結させていました。今はShopifyもCanvaもあるので、何でも自分達で作れますよね。

とはいえ、適切なタイミングで外注することも重要です。そのタイミングを見誤ると今度は作業に追われ、新しい売上を生み出す発展的な業務に当てる時間を失ってしまいます。これは人材採用にも同じことが言えます。

まずは自分達でやってみて、専門家が必要であれば依頼を検討する。資金余力がない初期に大事な考え方です。


③POP UPの開始

2年目の中盤から、POP UPの出店が始まります。
それまでもPOP UPオファーは度々あったものの、フルタイムメンバーが誰もいないMYTONEでは店頭スタッフを用意できず、断らざるを得ない状況でした。ただ、「商品を買う前に実物を見たい」という要望があることは理解していたので、人さえいればチャレンジしたいと思っていたところ、MYTONE専属になった藤井が手を上げてリードしてくれることに。

彼女は元々アパレル会社で働いており、販売経験もあったことから、POP UPでも着実に成果を上げてくれました。

POP UPは、響きこそ楽しげですが、実際はかなり過酷な現場です。
商業施設では、11時のオープンから21時まで店頭にいなければならない等ルールが厳しく、それが10日続くことも。設営や撤収など力仕事も多い現場。
一人ではさすがに無理があるので、藤井に加え、デザインチームのメンバーやインターンスタッフ、藤井の双子の妹や先輩など、仲間を巻き込んだまさに総力戦で乗り越えてくれました。僕はここに関しては本当に何もしていないので、彼女には頭が上がりません。

POP UPは、お客様の声を直に聞ける絶好の機会。ここで得た情報をもとに新しい商品を企画したり、マーケティングに反映したりと、顧客理解を深める大切な時間になっています。

現在は、ルミネやパルコといった商業施設をはじめ、単発のイベントなども幅広く出店しています。各POP UPの売上もどんどん成長しており、MYTONEの重要な販売チャネルです。

そんなこんなで、泥臭い取り組みで成長の片鱗を見せたMYTONEの2年目。
この時期の倉庫はオフィス近くに借りていたマンションの1ルームで、家賃は9万円。当時は発送数が少なく、外注するとかなり高くついてしまったので、まだ自分達で発送していました。

社宅として借りていた部屋だった当時の倉庫。ある日、工場から大量の商品が届いたのを管理人に目撃され、こっぴどく叱られたことも。それからは皆、そろりそろり納品したり、住んでいるぞという顔をしながら商品を取りに行ったのも良い思い出です。笑

3年目:2022年7月-2023年6月 / 年商3,497万円

続いて3年目。
3年目は、MYTONEが最も伸び悩んだ時期だったと思います。
全体年商では成長したものの、月次売上は前年対比を下回る月があり、目標にも達成しない日々が続きました。

3年目の月次売上推移は以下の通りです。

2022年7月-2023年6月 / 売上高

今振り返ると、3年目は土台作りの1年間だったと思います。
特に7月から12月の前半は、目標未達で利益もほぼ無い厳しい時期が続きましたが、この期間で仕込んだことが今になって実を結んでいると実感しています。

この期間に実施したことで特筆すべき点は以下2点です。

①倉庫・発送作業の外注
②高単価商品の開発


①倉庫・発送作業の外注

2022年の7月、初めて倉庫・発送作業を外注することにしました。
当時は毎日10件程の発送があり、全社員メンバーで週毎に担当を割り振り対応していました。ラッピングがあったりと細かい作業が多く、日によっては午前中が発送業務で潰れてしまうことも。作業に追われる日々に危機感を覚え、ついに外注を決断しました。

ただ、この外注の判断は少し遅すぎたと反省しています。
前述のように、MYTONEでは自社で小さな倉庫を借りていた手前、物件の契約期間の問題や、倉庫のリプレイスにまつわる作業工数の重さから、判断を先延ばしにしてしまったのです。
また、当時は毎月黒字化をさまようギリギリのラインだったため、なるべくコストは増やしたくないと考えていました。

経営に必要なのは、どこで先行投資をするかという適切な判断。
僕達の場合は、もっと早い段階で発送業務を外注していれば、サービスを向上するための活動に時間を充てることができ、成長ペースを加速できたかもしれません。コスト増で一時的に利益が下がり黒字化が遅れても、早期で挽回できたはず。振り返るとそう思います。

もしまた別のブランドを始めるとしたら、最初から発送業務は外注します。我々が利用している倉庫・発送会社のOPEN LOGIは従量課金制なので、発送数が少ない立ち上げたばかりのブランドにもおすすめです。

ちなみに、売り上げが1,000万円を超えるようになった現在の月額倉庫・発送の外注費用は110万円ほど。
かなり大きいコストではありますが、従量課金だからこそ成長に合わせて柔軟に委託できるため、当面は外注していく予定です。


②高単価商品の開発

合わせて取り組んだのは、高単価商品の開発です。

その当時の主力商品は1枚5,500円のバスタオル。ECの購入単価としては、もう少し価格を上げたいところ。MYTONEとしても、低価格を売りにするのでなく、高単価でも稼働するブランドに育てたかったこともあり、サイズの大きいファブリック商品の開発に着手しました。

そこで、タオルブランケットのデザインの拡充とともに、ベッドスローという新たな商品カテゴリをリリースすることに。
ダブルベッドを覆うほどの大判サイズのタオルです。

ベッドスローは、23,100円という高単価のため最初こそ動きは鈍かったですが、ここ最近は人気商品の一つになり、売上急成長の要因になっています。

また、バスタオル2枚セットのギフト商品を開始。
セット購入を促進することで購入単価を上げる目的のこの商品は、結婚祝いのペアギフトのニーズにしっかりと合致し、MYTONEで最も売れる商品になりました。

この商品の開発に当たり、一度は諦めたオリジナルギフトボックスも導入しました。このボックスはイニシャルコストに約40万円と大きな初期投資を要しましたが、そのかいあって平均単価を上げる起爆剤になりました。
(※イニシャルコストには、型代や資材実費等を含みます。)

ギフトは、リピート購入を獲得するために重要な商品と位置付けています。

ECビジネスではリピート率の高さが非常に重要ですが、インテリアアイテムやバスタオルは、ファッションのようにシーズン毎に買い替えを行うカテゴリではありません。ただ、ギフトであれば、気に入ってもらえれば同一ユーザーに何度も選んでもらえる可能性があります。

自分用に買って気に入ったから、誰かへの贈り物の機会にMYTONEを選ぶという購入シーンも想定できる。ギフト商品はリピート率の増加に直接的に寄与するため、この先更に強化していきたい戦略商品です。


3年目のスランプ

とはいえ先にも書いていたように、実行した打ち手はすぐには芽が出ず、3年目は伸び悩んだ年でした。

実をいうと、3年目の半ば、2022年の10月頃、MYTONEの事業を諦めるべきかと頭をよぎった時期がありました。ちょうどその頃、飲食事業でHoneというレストランバーを立ち上げ、僕自身も連夜サービスとして働き、現場につきっきりになっていました。

なかなかMYTONEの売上が上がらない状況を前に、「経営資源の分散が各事業の停滞を生んでいるとしたら、選択と集中をした方が良いのでは?」と迷いが出てしまったのです。

その気持ちを思い止まらせたのは、ここでもディレクター藤井の頑張りでした。

ブランド運営と聞くと、商品企画や開発、マーケティング・PR等、華やかな側面が思い浮かびます。
それももちろん大切な業務の一部ではありますが、実際は、生産管理、在庫管理、倉庫との連携作業、昼夜問わずやってくる卸先やカスタマーの問い合わせ対応、POP UPでの販売等、挙げればきりがないほどの地味で細かい作業の積み重ね。当然、並々ならぬコミットメントが無いとやりきれません。
そんな忍耐も体力も求められる泥臭いブランド運営を、藤井は一人で切り盛りしてくれました。

上に書いた3年目の取り組みも、全て彼女自身がやりきった施策です。なかなか絵に描いた成長が描けない苦しい期間も、粘り強く、諦めずに取り組んでブランドを存続させてくれました。彼女が我が子のように、僕以上にMYTONEを大切にする姿を見て、まだ辞められないと思ったことを覚えています。

藤井がいなければ、今のMYTONEは存在していなかったのは間違いありません。この経験から、自分と同じか、それ以上に愛を持って取り組んでくれるメンバーの存在が、ブランドの成長には不可欠だということを学びました。

ディレクターの藤井。社内外から愛され応援される、自慢のメンバーです。

4年目:2023年7月-2024年6月 / 年商1.02億円(予想)

最後に、現在進行系の4年目。
まだ期中にあるため予想額になりますが、年商は1億円を突破する見込みです。前年対比では285%となる急成長となりました。

3年目までは一度も達しなかった月商500万円の壁を常に突破し、3月には長らく目標としていた月商1,000万円を超えるなど、飛躍的な成長を遂げています。

2023年7月-2024年6月 売上高推移 ※5,6月は予想額

過去最高売上の更新が続いた4年目。ブランドが軌道に乗ってきた感覚がようやく芽生えています。4年目の主な成功要因は以下の2点です。

①動画マーケティングの成功
②卸先の拡大


①動画マーケティングの成功
2023年の7月から本格的に動画に着手。これが功を奏し、ブランドの認知度が広がり、売上にも反映されていきました。

インテリア商材は、自分の部屋に合うのか?と吟味した上で購入に至るカテゴリー。購入前の不安を解消すべく、様々な部屋でMYTONEを使うリアルなシーンを動画にし、「自分の部屋で使うイメージ」の育成を目指して配信しています。

動画マーケティングの中でも、特に効果を発揮したのがInstagramのリールです。あるきっかけを元に、毎日リールを投稿するようになってから風向きが大きく変わりました。

そのきっかけは以下のnoteに記しています。

2月から主にSNSを担当する山﨑がチームにジョインしたおかげで、発信の切り口も多角化しています。

具体的なマーケティング施策の詳細はこの後に続く章で詳細にまとめているので、そちらをご一読下さい。


②卸先の拡大
Instagramリールへの注力は、卸先の拡大にも繋がりました。
前提として、MYTONEは直販であるD2Cのビジネスモデルをベースにしているため、自分達から積極的に卸先を拡大するための戦略はとっていません。

直販を前提に設計すると、商品の原価率を高く設定し、売価を低くできるので、商品の購入ハードルを下げられます。ただそうなると、一般的な卸取引の卸掛け率には見合わなくなってしまうのです。

一般的な卸掛け率は60%が主流なところ、MYTONEでは70%に条件設定しています。70%という数字は、卸先企業(セレクトショップ、インテリアショップ)にとっては好条件とは言えません。

そんな中でも、MYTONEの商品背景を理解し、大切に取り扱ってくださる方々が増え、卸先が広がっています。
今では、全国のセレクトショップの店頭でMYTONEを目にする機会も増えてきました。

リールへの取り組みの結果Instagramのフォロワーが増え、MYTONEを目にする方々が増加する好循環が起こっています。
フォロワー数や発信量は、直接的なオンラインの売上に加え、POPUPの問い合わせや卸のお声掛けなど、副次的な効果ももたらしてくれます。

また、売上が急激に成長した4年目は、チームとして初めてのフルタイムメンバー(社員)の採用にも踏み切りました。
前述の山﨑に加え、このnoteを書いている5月にちょうどPOP UP担当として新たに富施がチームにジョイン。オンライン、オフライン双方で人員強化し、さらなる成長の土台を固めています。

MYTONEチームと、脇を固めるデザイナー陣。

オンラインでの購入に、POP UPや卸先からの売上が重なり、2024年の4月には売上高が1,600万円に。ほぼ一人運営だったブランドとしては、立派と言える数字に成長しました。

コロナの苦境の中、「何かやることを作らねば!」と始めたブランドがここまでの数字になるなんて。はじめに明確な大義を掲げて立ち上げたブランドではなかったので、自分でもまだ信じられないくらいです。

5月も好調が続いているのでこの先の飛躍も期待できそうです。

販売チャネル別売上

MYTONEでは、前述の通りオンラインでの販売をベースに、卸(一部OEM含む)やPOP UPで売上を構成しています。

それぞれの売上構成状況は以下です。

やはり売上の軸はオンラインのECサイト。
ECサイトはブランド立ち上げ時から変わらずShopifyを使い続けています。

POP UPは9.6%と割合が少ないですが、今後はこのチャネルを伸ばすべく、POP UP担当の新メンバーを採用。今まで人的リソースが足らずに断ってきた出店オファーも積極的に受け、実店舗売上の拡大を目指します。

D2CモデルであるMYTONEは、インバウンド(海外からの旅行者)へのリーチが難しい。だけど、世界的産地である今治ブランドをアピールすれば、商品自体はアジア圏にも拡販できるはず。

今後は、外国人旅行者の目に留まる立地でのPOP UP出店を強化していきます。

マーケティング

これまでは、ブランドの成長の過程を説明してきました。
ブランドの成長には、マーケティングの取り組みが欠かせません。

ここからは、どのようにして売上を伸ばしていったのか、マーケティングについて詳細に書き連ねていきます。

以下がMYTONEで設計している大まかなマーケティングファネルです。
起点とするプラットフォームをInstagramに設定し、広告を駆使して購入までの動線を設計しています。

Instagramマーケティング

ブランドを立ち上げたはいいものの、誰も知らないブランドは当然誰も買いません。僕達はブランド運営経験も無く、自身がフォロワーを抱えるインフルエンサーでもなかったので、認知活動には頭を悩ませました。

とはいえ、お金も人手も無いのが立ち上げ期の大きな課題。闇雲に手を出しても労力が分散するだけなので、マーケティングに投じるプラットフォームを一点集中することにしました。

そこで選んだのがInstagramです。

デザインに拘ったインテリアブランドとして立ち上げたMYTONEは、その強みを視覚的に訴求できるInstagramとの相性が良い。インテリアは広く興味関心が高い領域なので、部屋のコーディネートの参考にするメディアのような立ち位置で認知を伸ばせると考えました。

2024年5月19日現在でのフォロワーは6.1万人。
初期は後述するInstagram広告でフォロワーを獲得し、ユーザーが増えてからはブランドがメンションされたフィードやストーリー投稿が増加し、連鎖的に伸びていきました。

アカウントの運営方針

Instagramに取り組もうと決め、次に設定したのがアカウントの運営方針です。
物がありふれた現代に、ただ商品だけを訴求しても人は動かない。
よく言われることですが、この事実にはブランドの早期に気が付きました。

僕達は元々デザイン会社を運営していたこともあって、ブランド初期は作り込んだ写真を投稿していました。車でロケ地に出向き、イメージ写真を撮り、ブランディングに全力投球していたのです。

ただ、この投稿には悲しいほど反応が無く、商品が売れることもありませんでした。

それもそのはず。
僕達が主力商品としているタオルアイテムは、多くの人にとってただの日用品。6,000円を超えるタオルを自分用に購入した経験がある人は、あまりいませんよね。それなのに、僕達は利用シーンとかけ離れた、かっこいいイメージ画像を投稿し続けていたのです。

洋服の様に、既に多くの人が購買経験を持ち、良し悪しの判断軸を備える商品であれば、それを見た瞬間に自分の利用シーンが思い浮かぶもの。

でも、多くの人のお財布の中で優先順位が低くなりがちなインテリア、その中でも日用品枠にあるタオルは、利用イメージが沸かずに6,000円をかける価値を感じられない。

人が欲しいと思うためには、プロフェッショナル感ではなく、当事者意識の実感が必要なことに気が付いた瞬間です。

そこからMYTONEのマーケティングの基本方針を、「商品でなく、幸福感を訴求する。」と設定しました。

アカウント運営は、商品のデザイン性を武器に、MYTONEが自分の日常生活に入り込み、少しの幸福感を生んでくれる未来のイメージを育てる投稿を意識しています。

  • 「MYTONEが日常をちょっとでも良くしてくれるかも」というイメージ

    • Ex. 洗濯や、畳んでいる瞬間すらも楽しくなる

  • 「MYTONEなら、なりたい自分になれる」というイメージ

    • Ex. 服装のようにTPOを気にすることなく、自分だけのための部屋をつくり、なりたい自分になれる


動画投稿

その投稿で最も注力しているのが動画、つまりリール投稿です。
1年程前から取り組んでいるリールは、MYTONEの成長を後押しする重要な発信手法になっています。

リールの狙いは、日常の中でMYTONEが使われるリアルな生活シーンを切り取り、「視聴者自身の生活の中にMYTONEがある状態」を頭にイメージしてもらうこと。

そのため、インテリアやライフスタイルにこだわりを持つ友人の部屋を訪れ、その友人自身が出演した動画を投稿しています。


ここで大事なのは、メンバーが繋がりを持つ友人知人だけに依頼を限定すること。憧れ枠に入る有名人やインフルエンサーが動画に登場しても、憧れで終わってしまったり、ただのPR動画だと認識されてしまう。視聴者が当事者意識を持って、自分の生活に取り入れたいと思うことは難しいのではと考えています。

だからこそ、商品を実際に使っている仲間達に声をかけ、自然な利用シーンを発信する。MYTONEと過ごすシーンを見て、「こんな風に過ごせたら良いなぁ」と、頭の中に少しだけ幸せになった自分をイメージしてもらえたら成功だと思っています。

リールはMeta広告(Instagramの広告プラットフォーム)にも活用ができ、売上拡大に重要な役割を果たしています。

ちなみに、編集にはPCは使わず、無料のスマートフォンアプリCapcutを使用しています。経験の有無に関わらず、誰でも手元で直感的に編集ができる優良アプリです。

その分、カメラには投資しています。
現在のインターネットユーザーは動画に目が慣れているので、画質が悪いだけで離脱に繋がってしまいます。
そのため、カメラとレンズにはある程度投資する方が良いと思います。

僕達が利用している機種を以下にまとめました。
カメラは、SONYのa7CⅡと動画用にZV-E1を利用しています。

レンズは、コストパフォーマンスが良いTAMRONを。



投稿頻度

続いて投稿頻度について。
MYTONEでは、毎日(365日)リール1件、フィード1件、ストーリーズ3件以上の投稿をルールとしています。

このルールは、紆余曲折を経てたどり着きました。

Instagramマーケティングのトレンドが日々変わる中、投稿数の最適解は諸説あると思います。僕達も、これまで最新のアルゴリズムの情報にキャッチアップしながら実験を重ね、売上という最終目的の分析の結果行き着いたのが、「毎日投稿を大前提にする」という結論でした。

理由はシンプルで、「毎日投稿をしている期間は売上が伸び続け、していない期間は、その数週間後に成長が止まる」事象が確認できたためです。

「毎日投稿しなければならない」となれば、当然そのネタを考え続けなければなりません。これがなかなか大変。

自宅での利用シーンの動画は毎日撮影することが難しいので、事務所にいながら作成できるコンテンツを考える必要があります。

撮影ネタのヒントはユーザーの問い合わせに眠っています。
リールでは、利用シーンの他に、ユーザーが課題や疑問に思うことを先回りし、説明する動画も配信しています。

▼ポジャギカーテンの付け方動画

▼商品のサイズ別説明動画

こういった動画は、バズが起きることはありませんが、非常に意味がある動画です。実際に検討している方の課題を払拭し、購入に繋げる効果は大きいと捉えています。

毎日投稿することで、チームとして「今何をユーザーに届けるべきか。どんな課題を払拭するべきか。」と日々考える体制が身につきます。そして、そこに対してのアクションをユーザーは見ています。

「常に動かしている。改善している。新しい取り組みをしている。」とユーザーが無意識的に感じ取ることは、勢いがあるブランドの共通点だと思っています。

現在はこの重要なリールの企画を山﨑がリードしてくれています。問い合わせ対応も各メンバーが対応するMYTONEだからこそ、売りに直結する企画を生み出す事ができるので、CSとマーケティングは表裏一体だと実感します。

2月にフルタイムになりSNSを中心に奮闘する山﨑。ブランドの急成長を押し進めています。

ちなみに、現在のところInstagramのフォロワー数の目標は特に掲げていません。フォロワー数は資産になる為非常に重要ではありますが、数万を超えた時点からは、売上だけをKPIに運用を行っています。


広告運用

マーケティングプラットフォームの主戦場をInstagramに置いているMYTONE。

それを最大化するため、広告はMeta広告(FacebookとInstagramへ配信する広告プラットフォーム)を中心に投資しています。ブランド立ち上げ当初から細々と配信し続け、売上の成長とともに広告費も増加しています。

現在、売上に対する広告費率は約19%
Meta広告やGoogle広告等、インターネット広告の投資には200万円少々予算をかけています。

インターネット広告は、僕自身が会社員だった7年間のキャリアで身を置いてきた専門領域。現在も全運用を自ら担っています。
MYTONEでは、認知状況(=フォロワー数)のフェーズ毎に配信の大戦略を変えてきました。

僕はブランドの運営において、フォロワー数は非常に重要だと考えています。

フォロワーはブランドの信頼度を可視化する資産。
HPのアクセス数がどれほど多くても、それは対外的に伺い知れませんが、フォロワー数は誰もが一見して把握できます。

だからこそ、フォロワー数を念頭に広告予算の投資判断を行うべきだと考え、運用に取り組んできました。

※ここからは少し専門的な領域になります。Meta広告の運用について記載していますが、細かい説明は省略しているため、配信を担当している方向けの情報となります。必要無い方は読み飛ばして下さい。


①初期:フォロワー1万人まで / フォロワー獲得期

フォロワーが少ないということは、ブランドを知る人が少ないということ。
そんな状態で広告を配信し、商品に触れても、どこの馬の骨ともわからないブランドを信頼して買う人は少ない。

ましてや、MYTONEのタオルは6,000円を超える高価格。
そんな価格のタオルを自分用に買った経験がある人は世の中に多くないので、時間をかけて価値を伝えていく必要がある。

そう考え、初期はフォロワー数の獲得のみをKPIにして広告を配信していました。

KPI:フォロワー獲得
出稿費用:10万円〜20万円 / 月
キャンペーンの目的:トラフィック
ターゲティング:
クリック単価:6〜15円
ターゲティング: インテリアデザイン(デザイン)、装飾美術(ビジュアルアート)またはデザイン(デザイン)

具体的には、キャンペーンの目的をトラフィックに設定、広告のリンク先をInstagramアカウントへ設定する形で、フォロワーの獲得に全振りした配信を実施しました。

MYTONEの場合、商材がインテリアだったので、アカウントへ到達してくれさえすれば、「なんか良さそう。取り敢えずフォローしておこう。」と考える人が一定数いるはず。その後、ユーザーがなんとなくアカウントの投稿を見ている間に購入マインドを育てるという戦略でした。

その戦略は当たり、少ない投資でフォロワーを増やすことに成功し、連動して購入数も伸びていきました。

当時のストーリー広告。CANVAで簡単に作った広告でしたが、一時はクリック単価6円を叩き出す当たり広告に。

デザインに特化したインテリア商材ということで、当時のクリック単価は6円〜15円程度。劇的に安いクリック単価で流入が稼げたため、フォロワー獲得効率は非常に高く、初期の戦略としては成功でした。

(※このクリック単価は商材によります。僕自身、コンサルタントとして他業界の広告運用を担当していますが、10円を切ることは稀です。)

とはいえ、成長過程の章で書いた通り、1年目は売上が少なかったので、広告の投資対効果はほぼ無く、赤字にならない程度で細々と配信を続けていました。

潮目が変わったのは、フォロワーが1万人を超えた頃です。
ブランドに信頼性が増したからか、POP UPや卸し取引の問い合わせが急増しました。

フォロワー数はブランドの信頼度を示す資産。
それが実感できる事象に表れ始めたのが1万人という節目でした。


中期:フォロワー4万人まで / 手堅く攻める期

フォロワーが1万人を超えてからは、KPIを売上とトラフィック双方に設定し、ハイブリッドな配信を実施しました。

KPI:売上・フォロワー獲得
出稿費用:50万円〜80万円 / 月
キャンペーンの目的:
・売上(CVポイント:カートに追加)
・トラフィック(CVポイント:クリック)
ターゲティング:過去の購入者の類似ユーザー

具体的には、目的を売上に設定し、広告の遷移先をHPに設定したキャンペーンを並行配信した形です。

購入数がまだまだ少ない時期だったので、アルゴリズムの最適化を促進するべく、コンバージョンポイントを「商品の購入」ではなく、「カートに追加」に設定しました。

アルゴリズムに適切に働いてもらうためには、一定値以上のn数(コンバージョン数)が必要になります。n数が多い方が、統計データの精度は当然上がります。

当時は購入数がまだまだ少なく、十分な統計データが得られなかったため、購入前の段階である「カートに追加」を起点に最適化を進めました。

売上のキャンペーンでは、カスタマーリストという機能を使い、過去の購入者の類似ユーザーへターゲティング配信していました。

この当時の運用結果はまずまずと言ったところ。
僕もあまり精力的に運用に取り組んでいなかったので、振り返って反省しています。


現在:フォロワー5万人以上 / 全自動化・ブロード配信全振り期

フォロワーが5万人を超えた現在は広告のKPIを売上に一本化。
Meta広告の広告予算も増え、今月(2024年5月)は200万円弱に達しそうです。

この頃から飛躍的に売上が伸びてきました。

KPI:売上
出稿費用:140万円〜180万円 / 月
キャンペーンの目的:売上(CVポイント:購入)
‐ASC
‐売上
ROAS:330%
ターゲティング:無し

現在は、Advantage+ ショッピングキャンペーン(通称ASC)と、売上キャンペーンを並行配信しています。

■Advantage+ ショッピングキャンペーン(ASC)

ASCとは、Meta社が推し進める自動化に特化したキャンペーンです。

ここ数年、Meta、Google等各広告プラットフォームは、細かいターゲティングや調整を機械学習に任せる"広告の自動化"に注力しています。
(GoogleにはP-MAXという配信手法があり、MYTONEでも活用しています。)

本来、広告運用は人間よりも機械の方が得意な領域。
膨大なデータを元に、購入に近い潜在ユーザーを発見し、そのユーザーに適切な広告を配信する。
AIに任せれば、その判断を瞬時に行ってくれるので、人間が行うよりも合理的です。

ただ、その自動化が活躍するためには、前述の通りコンバージョン数のn数が必要。

MYTONEでは、フォロワーが5万を超え、売上が安定的に500万円を超えた段階からは、ユーザーの購買データが十分蓄積されていると判断し、配信を全て自動化に切り替えました。

ASCでは、カタログ広告が高い効果を発揮しています。
カタログ広告とは、機械学習によりユーザーの興味関心や意向、行動に関連する商品・サービスをユーザーに自動配信する動的広告です。

最近、多くのブランドやセレクトショップが活用しているカタログ広告。僕自身も良くクリックしてしまいます。

ShopifyとMetaを連携すると自動的に商品情報を読み込んでくれるため、複雑な設定は必要ありません。Shopifyは本当に便利で、運用者として助けられています。

ASCでは、カタログに並行し複数の切り口でバナー広告を展開しています。
広告の入れ替えを頻繁に行い、常に"当たり広告"を探しています。

■売上キャンペーン

ASCに加え、通常の売上キャンペーンも平行利用しています。

2024年4月19日〜5月18日の結果。

売上キャンペーンの並行は、Metaの担当者からの情報を元に実践しています。
以前、好調だったASCに全予算を集中化していたところ、「ASCに頼りすぎると疲弊して獲得効率が悪化する傾向があるため、売上キャンペーンを並行配信するのがおすすめ」と助言をもらいました。ASCと売上キャンペーンは配信先が被らないそうです。

売上キャンペーンはアルゴリズムを信頼し、ターゲティングを一切せず、ブロード配信のみ。
そして、配信するクリエイティブは様々な実験を経て、現在はリール広告のみとしています。

過去30日の配信結果は以下です。

見ていただくと分かる通り、ROASが360%と売上効率が高いにも関わらず、クリック単価(CPC)が52円と、あまり見ない高数字を叩き出しています。

通常、キャンペーンの目的を売上とした場合、クリック単価は100円を超える印象があります。300円を超えることも珍しくありません。

以下の動画が現在最も多く配信されているリール広告。ROASは363%と高いながら、クリック単価はなんと45円です。

購入だけでなく、認知にも効果を発揮しており、この広告が配信されてからフォロワーの伸びも加速したように思います。

目的に応じて配信手法を使い分けられるインターネット広告は、言い換えると、二兎を追うことが難しいと言えます。

アルゴリズムが最適化する際、認知目的なら認知獲得のみ、購入目的なら購入獲得のみに絞って最適化を図るためです。

だからこそ、購入にも認知にも効果を発揮しているこの広告が誕生した意義が大きいのです。

Meta広告は、このような当たり広告をいかに生み出せるかが非常に重要。当たり広告を発見するためには、新しい広告を作り続ける必要があります。

MYTONEでは、アカウント投稿時の反応が良いリールを、そのまま広告として配信して様子を観察しています。その後、広告としての配信パフォーマンスが高いリールのみ残す形で運用しています。
チームとして毎日欠かさずリール投稿を継続するからこそ実践できる手法です。

リール広告は、アカウント上でも再生数が可視化されるのでお得。
こちらも不意にユーザーが見た際に、ブランドの信頼度を高める資産になると思います。

このような広告の取り組みは、オンラインでの直接売上だけでなく、POP UPでの購入のアシスト効果もあります。
都内各地で実施しているPOP UPの店頭では、「広告で見たことがある」と足を止め、購入に至る方も少なくありません。

同じく卸先での購入も後押ししているはずなので、広告への投資は今後も更に強化していきたいと考えています。

(ただ、ここ数年ずっと一人で運用をしているので、暗中模索感が否めません。外部の方と情報交換がしたいと思っているので、もし広告についてお話してくださる方がいらっしゃれば、是非お願いします!)


広告運用は外注せず、自らやるべき!

以上、Meta広告に関してまとめてきました。
MYOTNEでは、Google広告やYahoo!広告、その他各種プラットフォームやアフィリエイトも一部実施していますが、ここでは割愛します。

なかなか一筋縄ではいかない広告運用ですが、小さなブランドの広告運用は、代理店に任せず自分自身で取り組むことを強くおすすめします。

代理店に外注する場合、広告予算が200万円程度までは、アサインされる担当者は経験の浅い若手になる可能性が高いからです。

広告代理店は手数料モデルとなっており、その手数料率は8〜20%程度。
仮に、100万円の予算で広告を配信したい場合、広告代理店の売上は20万円となります。

となると、この担当者は売上を立てるため、クライアントを少なくとも10社以上抱える必要があります。細かく戦略立てた配信計画の実行を、10社を抱えながらマネジメントできる優秀な若い運用者が存在するかというと疑問です。
小規模の広告費で代理店に委託すると、若く知識も乏しく、ビジネス理解も伴わず、リソースも割り当てられない担当者に、なけなしの手数料を払うという結末になる可能性が非常に高いです。

僕自身、長年インターネット広告の業界に身を置く中で、このようなシーンを何度も見てきました。

加えて、初期に外注をしてしまうと、ただでさえブラックボックスに見えるインターネット広告の内情が、より不透明になってしまいます。
ビジネスが伸びている理由も、停滞している理由も、広告の観点から振り返ることが出来ないのは大きなリスクです。

だからこそ、資金がなく、無駄な投資を極力防ぎたい小さなブランドは、自分自身で広告運用に取り組むことをおすすめします。

おわりに

以上、ブランドの成長と、それを支えたマーケティングについて綴ってきました。

全体的に大枠だけの話となってしまいましたが、実際のブランド運営は地味な施策や改善の積み重ね。商品企画やカスタマーサポート、在庫管理やサイト改善等、書ききれなかった項目もたくさんあるのですが、もうすぐ2万字に達するのでここまでとしておきます。このnoteが、皆様のブランドの成長に少しでも貢献できると嬉しいです。

ブランドを始めて4年。中でもこの1年間に、ブランドが掲げる提供価値へのニーズがより顕在化してきたと感じています。

先日、今治の工場へ出向いた時のこと。
今後の拡大に向けて数か所工場を巡って来たところ、「大判タオルの売上が伸びているのはすごい!」と各社から驚きの言葉をいただきました。

冠婚葬祭が減っている影響で、タオルは大きい商品ほど売れなくなっているそうです。

ブランドを始めた当時、「インテリアとしてタオルを使う」という価値観は存在しませんでした。
それ故に初期は販売に苦しみましたが、4年をかけてこの価値観を伝え続けることで、当時の自分の素直な考えに共感し、賛同してくれる人々が増えてきたことを実感しています。

世の中にまだないものを作り、新しい価値観を提案し、人々の生活を少しでも豊かにするというブランドの運営は、この上ないやりがいに満ちた仕事です。

ブランドはまだまだ序章。ようやく今がスタートラインという気持ちで、さらなる成長を目指していきます。

最後に、ブランド運営のノウハウを参考にさせてもらったnoteを紹介します。

■HushTugさん

男性向けバッグブランド、HushTugのnoteは熟読し、かなり参考にさせてもらいました。倉庫やカスタマーサポート、アフィリエイトのテクニックや広告運用のテクニックまで惜しみなく公開してくれており、ブランドを立ち上げる際の必読noteだと思います。
バッグというカテゴリでこの売上高は本当にすごいと尊敬しています。

情報量は満たないですが、このnoteも上記のHushTug Collegeを参考にさせていただきました。

「ひとりEC」著者:三浦卓也さん

一人でECサイトを運営する三浦さんのnoteや本は、スモールチームでブランドを作るにあたって必読です。
僕達自身、少人数で運営してきたので共感することも非常に多く、いつも参考にさせてもらっています。

三浦さんの提言を読み、MYTONEのカスタマーサポートもLINEへ一本化しました。すぐに導入できるテクニックを発信している方なので、Xでの発信も必ずチェックしています。

以上、長々と読んでいただきありがとうございました。

また何か共有できることが見つかればnoteを書いてみるので、よかったら感想等教えてください!

僕自身、同じような規模でブランド運営に取り組んでいる方々と情報交換がしたいと思っているので、もしお話してくださる方がいれば、気軽にご連絡いただけると嬉しいです。

Instagramも頻繁に投稿しているので、こちらのフォローも是非お願いします。




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