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Dolby Atmos対応モニターコントローラーの製作


なにするもの?

Dolby Atmos Music 「制作」をめぐる状況

Dolby Atmosって聞きなれない人はすみませんちょっと置いといて、映画好き、あるいは「ホームシアター」に興味がある人なら聴いたことはあると思います。

Dolby Atmos®
(ドルビーアトモス)とは?

ドルビーアトモスは、従来のサラウンドサウンドに加えてさらにレイヤーを追加することで、エンターテイメントにおいてプレミアムな多次元サウンドを体験できる空間オーディオテクノロジーのパイオニアです。ゲームをしていても、お気に入りの映画や番組を見ていても、新曲を繰り返し聴いていても、より多くの音を聴き、感じられるように、Dolby Atmosが、その世界へと深く引き込む空間サウンド体験にあなたを誘います。

Dolby Atmos - Official Site - Dolby

もともとは「サラウンド」などのテクノロジーを開発した上記の Dolby Laboratories, Inc. という会社が映画館の音響向けに開発した技術なのですが、数年前からこれを音楽にも応用しよう、ということで、立体感のある音楽が、主に音楽サブスクリプション(Apple Music、Amazon Music Unlimited、TIDAL)において公開され始めました。

以前から - 正確には高校のころ(40年前w)からサラウンドというより「包み込む」音響環境に興味があった私は、会社勤めを辞めて映像・音響関係で独立したのを機に、Dolby Atmosが制作可能な環境、つまり制作・編集スタジオを作り始めました。

で、エストニアに拠点を構え、かなり機材の入手に苦労しながら構築してみたのですが、やはりとても「お金がかかる。」

Dolby Atmos レンダラー(制作用)の画面

ある個人的都合で東京にももうひとつスタジオを構築する必要があり、そこではなるべくコストを抑えたかったので、中古機材をできるだけ活用したり、高い機材しかないところは自分で作る、という方針に。

ということで、課題とその解決法をまとめてみると、

  • Dolby Atmosは再生時は融通がきくが、そのコンテンツを制作する際は最低でも12チャンネル(7+1+4)のスピーカーを別々に設置して同時に鳴らす必要がある

  • つまりパソコンから最低12チャンネル別々の出力が必要

  • そんなオーディオインターフェースはなかなかない(あっても高い)

  • が、ライン出力のほかにADATという、最大8チャンネル同時の光デジタル出力があるものは、比較的安いものも結構ある(数万円で買える)

  • ADATを引っ張ってきてデジタル - アナログ変換する機器を製作し、もとのオーディオインターフェースの4チャンネルのライン出力と合わせれば、お手軽価格で合計12チャンネル!

ただライン出力の音量のコントロールはオーディオインターフェース側でできるが、ADATは固定だったりする。ライン出力のと同時に同じだけコントロールしたい。

ということで、

こんな感じの機能があれば足りる?

  • 8チャンネル対応ADAT入力からのデジタル→アナログ変換

  • 8(うち予備4)チャンネルバランスライン入力 (オーディオインターフェースのライン出力をここにつなぐ)

  • 16(うち予備4)チャンネルバランスライン出力(これをパワードスピーカーにつなぐ)

  • 16チャンネル音量一括コントロール(ミュートも)

さらに、

  • 同じ環境でDolby Atmosの既存のコンテンツを鑑賞するためのAVアンプからの7+1+4=12チャンネルのRCAアンバランスライン入力と切り替え

  • AVアンプからのライン出力はおおむね0.3V(-10dBV)が標準、対してオーディオインターフェースからはだいたい1.225V(+4dBu)が標準なので、両者のレベルを合わせてやる回路も組み込む

  • これで、AVアンプとオーディオインターフェースの間で入力を切り替えてもいきなり大きな音がでてびっくりする、ことも少ないはず

当然ながらこんな市販製品はないので、つくるしかなかったわけです。ああ結構苦労した…。

入出力の詳細

入力

  • ADAT デジタル8ch入力 / Toslink光接続

  • 12チャンネルアンバランスライン入力(0.3V標準) / D-sub 25ピン、独自配列

出力

  • 8チャンネル(1ch - 8ch) バランスライン出力(1.225V標準、最大+24dBu) / D-sub 25ピン、TASCAMピン配置

  • 8チャンネル(9ch - 16ch) - 同上

  • バランスライン出力 (上記ライン出力と同じもの 1 / 2ch)  / XLRオス x 2

シンプルなものです。一応バックパネルにはいくつか拡張端子用の穴をあけてあります。

接続マニュアルw

こんな感じで接続します。

接続例

オーディオインターフェースのラインアウト(6.5mm TRS)からD-sub 25ピンへはこういうケーブルを使用します。

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A/Vアンプからの12chの入力は、規格はないため独自ケーブルが必要になります。

コントローラーからパワードスピーカーへの出力は、D-sub 25ピンからXLRオス x 8へのケーブルが2本必要となります。上記と同様に、こういうケーブルが使用できます。これはほかにも多数種類があるようです。

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なかみもさらっと

内部のブロック図はこんな感じです。

ブロック図
まだ組み立て中
表示は簡潔に - 基本的には入力ソースと音量のみ
8チャンネルDAコンバーターAK4438 こんなに小さい
4chバランスライン出力基板 x 3

今後について

さて今回は、もともと別の目的で作り始めていた 8ch DAコンバーター基板、それにそのバランスライン出力基板(緑の「きれいな」基板)をベースに、入力切替え・電子ボリューム、全体の制御、バランスライン入力、それに電源をユニバーサル基板でほとんど手作りし、それをケース加工屋さんにオーダーしたケースに組み込んだものですが、

今後、もし需要があれば

手作り部分もちゃんと基板を起こし、途中で見つかったいくつかの問題も解決したものも組み込んで、「半」完成品として売り出すことも可能かなと考えています。完成品といっても基本的には手作業で組み込むのでそうそう一度に同時に製作することは不可能ですが…。

「半」完成品とするのは、ある法律に準拠するためにはかなり厳しい製品検査が必要なのですが、現在それを負担しきれないので、ユーザー様のところで一部「組み込んで」もらうという方法をとるが故、です。もちろん、十分な検査はしますが、なにぶんにも電気を扱うもののため、事故の可能性はゼロにはできないので、その部分のみ自己責任としてもらうと…。

もしご興味があれば、

amano@takumidrive.eu 

までご連絡いただくか、または、Facebookアカウントをお持ちなら、

Facebook - Takumi DRIVE

でメッセンジャーでコンタクトしていただければと思います。

あ、追記

使用したパーツというかコンポーネントというか、その辺が持ってる機能の中で、まだUIを作ってない(苦手)ので実現されてないのがいくつかあるのですが、すでに必要性があるのが

  • チャンネル単位の音量(微)調整

です。0.5dB単位で、チャンネル単位でオフセットをつけることができて、例えばサラウンドバックの左側だけ+2dBして、音量変化させてもそのまま追従する、とか。すでに天井スピーカー4つが少し大きめなのでちょっと下げようかなと。でもUIがめんどくさいなー。決め打ちするかw
ほかにもプリセットをいくつか持ってて切り替える、というのもきっとそのうち必要になりそうな気もします。その辺はファームウェアの書き換えだけでできるので、時間が空いたらやってみよう…。

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