【第27話】ついに、この日が!

抗がん剤治療と聞いて、真っ先に浮かぶ副作用は何でしょうか?

嘔吐、吐き気、悪心、ムカムカ、食欲不振。いろいろとありますが、僕が、1番に思い浮かんだのは、「髪の毛が抜ける」ということでした。

テレビなどで、がん患者の皆さんがニット帽をかぶっているシーンをよく観ると思います。僕のイメージは、完全にそれです。

ついに、僕にもその日がやってきました。

シャワーを浴び終え、頭を拭いていると、タオルに髪の毛がたくさんついています。いつかは、そうなると知っていたし、僕の場合、ずっと坊主頭だったので、髪の毛が抜けることに対しては、なんの抵抗もありません。

むしろ、「うぉーーっ!!ついにキターー」と、お風呂でひとり、テンションが上がってしまいました笑。

最新の脱毛は指先で


しかし、1つ、僕のイメージとは違うことがありました。それは、「一気にすべてが抜けるわけではない」ということ。看護師さん曰く、「部分ごとに、まばらに抜けていくけど、残る部分がある人もいる」とのこと。それは、完全に予想外でした。

全体的に、一気に抜けていくとしか思ってなかったので、見た目のことは何も考えていなかったのです。

僕は、なぜか横からいくスタイル


僕としては、「毛がまばらに抜けていく過程を、少しずつ楽しもうかな」と考えていましたが、1つだけ、大きな心配がありました。

それは、「4歳の娘には、その姿を見るショックが大きくないか」ということです。僕が、病院にいるのは理解していますが、「お熱」でということになっています。

副作用で髪の毛が抜けていくことを理解できるのか、その過程を見せるべきか、見せないべきか。数日間、妻や看護師さんに相談した結果……。



僕の判断は、見せない。


「パパね、これから髪の毛ををぜーんぶ切っちゃおうかと思ってるんだけど、どう思う?」
「いいんじゃない?来週には生えてくるはず」
「あはー、生えるかな笑。パパの髪の毛が、明日なくなってもビックリしない?」
「びっくりしないよー」
「そか、よかった!じゃ今日で切っちゃお」

さっそく、お風呂のタイミングで、看護師さんに頭を丸めてもらいましたが、僕的にはしっくりきました笑。でも、よーく見ると、0mmと1mmの部分があって、やっぱりまばらな感じ。

0mmに揃えようかとも思いましたが、血小板の数値が低い今の僕にとって出血は致命的。剃り上げることは諦めました。

(このまばらな感じは、ニット帽をかぶりたくなる気持ちはマジで分かる。とくに女性はとても気になると思う)

その日の夜。

息子が「ぱぁぱ」と言って、なかなか離さなかったテレビ電話で、髪の毛のなくなった僕の頭を初めて娘に見せました。

「どう?」
「びっくりしたけど、かっこいいー」
「おーそうか、よかった」

(ふぅー、これでひと安心…)

彼女が理解できる歳になった時、すべてを話してやります。実は、薬の副作用で、少しずつ毛が抜けていったこと。その過程を、キミに見せるかどうか悩んだこと。

そして、キミたちの存在が、どれだけ大きな僕のチカラになっていたかということ。

2023.12.1

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