おたから
床に金の粉が落ちていた。
僕の皮膚から落ちたものだとわかった。
大駱駝艦の金粉ショーを見たせいかもしれない。
路上パフォーマンスをすぐ近くで見ていたから、金粉のおこぼれに与ったのだろう。
次の日に目覚めると、床にまた金粉が落ちていた。
昨日よりも明らかに量が多かった。
手を顔に当てると、粉っぽい。
擦ると、金の粉が舞い落ちた。
顔の皮膚が金粉を吹いていたのだ。
粉の量は日々どんどん増えていく。
捨てるにはもったいない。
数日分を集めてみたら、結構な量になった。
もしかしたら売れるかもしれない。
整腸剤の空き瓶に入れて、買取屋に持ち込んだ。
鑑定してもらったら、本物のゴールドだとわかった。
売ろうかと思ったが、自分の身から出たものだと思うと、急にもったいなくなった。
とりあえず持ち帰ることにした。
明日になったら、もっといっぱい金が取れるだろうと期待したのだが、明日になってみると、皮膚は全く粉を吹かなくなっていた。
枯渇してしまったのだろうか。
鏡を見ると、顔面の所々が金色の痣になっていた。
体にも同じような痣があった。
皮膚が金化しているのだ。
金化は日を追うごとに進行していった。
そしていつしか、全身が金色になっていた。
売り時だと思った。
買取屋に行くと、50万円という査定額だった。
「表面だけなので、こんなもんでしょうな。
もう少し待ってみてはいかがですか?」
言われた通り、しばらく待つことにした。
言われた通り、しばらく待った。
言われた通り、僕の価値は高まった気がする。
けれども、売ろうにも売りに行けないし、電話で業者を呼びつけることもできないのだ。
全身が固まってしまって、身動きすらできないのだから。
今自分はどのくらいの純度なのだろう。
18金?
それとも20金くらい?
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