たこやまたこた

猫を愛し、妖怪を友として細々と生きる無名の絵本作家です。 本業の作品サイト:http:…

たこやまたこた

猫を愛し、妖怪を友として細々と生きる無名の絵本作家です。 本業の作品サイト:http://www.ne.jp/asahi/takoyama/takota/

マガジン

  • 魔魅夢メモ(まみむめも~夢日記)

    メモに残した夢を集めてみました。

  • 写句鳥虫(しゃくとりむし)

    遊び半分に写真俳句のコンテストに応募したところ、最優秀賞をいただてしまった。 調子に乗ってその後、 写真俳句 を書き溜め、「写句鳥虫」(しゃくとりむし) と題して一冊にまとめてみた。 その中の作品を中心に、少しずつアップして行こうと思う。

  • 絵本のたまご

    採用にならなかったり、世に出す機会がなかったり、まだ発展途上だったりして、未発表のまま埋もれている作品たち…

  • よい子とよくない大人のための4コマ

    紙切れにいたずら書きした4コマ漫画もどきを拾い集めてみました。

  • はーどぼいるどろまんカサバランカ

    自作の下手くそ8コマ漫画です。

最近の記事

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たこやま たこたくん

今更ですが、「たこやまたこた」というハンドルネームのもとになった「たこやま たこたくん」という作品を転載します。絵本の仕事を始めて間もないころ、月刊絵本として世に出ました。雑誌扱いなので1回限りの発行となります。自分でも最も好きな作品の一つなので、できれば市販本にしてもらえないものかと願ってやまないのですが、いまだ実現していません… 1999年フレーベル館発行ころころえほん9月号

    • 蛇苺

      「ヘビイチゴ、見ませんでした?」 道で突然、女性に声を掛けられた。 髪の長い、白くてスリムな女性だ。 不健康とまではいかないが、低血圧っぽい青白い顔をしている。 なんとなく怖いので、逃げもせず、余計なことも言わず、誠実に対応することにする。 「今年はまだ、見ていません。 この辺では、結構よく見かけるんですけどね」 「では、見つけたら知らせてください」 「はい、承知しました」 とは言ったものの、具体的にどうやって知らせたらよいのだ? 問う前にもう、彼女は遠ざかっていた

      • スペチアーレなピザ

        夕飯はピザで済ませることにした。 ベジタリアンなので、食事は生野菜や温野菜が中心で、大した手間はかけないのだが、材料が揃っていないことは間々ある。 きょうも、そうだった。 帰りがけに、ドレミピザに寄る。 通常は肉を使ってないメニューを選ぶのだが、面倒臭い場合は適当に選んで、食べる時に肉を取り除く。 今回は、マルゲリータにサブメニューでサラダを頼もうかと思ったのだが、店長風のお兄さんがおススメがあると言う。 「きょうだけのスペシャルなんですが、いかがですか? スペチアーレっ

        • カメカメエブリボディ

          三ケ日用水では鯉が増殖していた。 誰かが放したのか、さもなければどこかから逃げ出したに違いない。 放流したという話はしかし、聞いたことが無い。 浅くて食べる餌も無さそうな用水路なのに、鯉は増える一方だった。 …と思っていたのだが、鯉の群れの中に異物が混じっていることもあった。 亀だ。 よそ者という感じではなく、異形なれど仲間なりという風情で、ごくごく自然に鯉の群れに馴染んでいる。 そんな事実に気が付き始めてから、どのくらい経ったろう。 今僕は、三ケ日用水の南月影小学校に沿

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        たこやま たこたくん

        マガジン

        • 魔魅夢メモ(まみむめも~夢日記)
          45本
        • 写句鳥虫(しゃくとりむし)
          44本
        • 絵本のたまご
          71本
        • よい子とよくない大人のための4コマ
          13本
        • はーどぼいるどろまんカサバランカ
          15本

        記事

          海鼠の人

          「ナマコ好き? あたし、大好き」 Sさんは、低体温っぽいクールな美人だ。 彼女と初めて居酒屋に行った折、真っ先にオーダーしたのはナマコだった。 ナマコの酢の物が届くなり、ぱくぱく口に放り込む。 少し酒が回ると、 「あたし、口が大きいの。 ほら」 いきなり握りこぶしを、がばっと口に入れてみせた。 大きな口に恵まれたお陰だろうか、彼女は食べるのが早かった。 それも、いかにも大食らいう感じではない。 一見したところではマイペースで、ゆったり食べているように見えるのだが、気

          耳繰町奇譚(みみくりちょうきたん)

          美谷康煕氏に会いに行く。 耳繰町に足を運ぶのは、初めてだ。 道に迷って、出っ歯のおじさんに道を訊く。 明らかに関西人ではなさそうなのに、関西弁もどきの変なイントネーションで、懇切丁寧に教えてくれた。 「よくわかりました。 ご丁寧にありがとうございます。 助かりました」 「ほんまでっか? そらよかった」 話すうちに、はっと気が付いた。 この人は、明石家さんまさんの真似をしているつもりなのだ。 意図はわからない。 冗談なのかもしれないし、趣味なのかもしれない。 まあ、余計

          耳繰町奇譚(みみくりちょうきたん)

          ペットフード

          「ラブペットランドはどちらですか?」 永野芽郁さんを少しクールにしたような雰囲気の女性だ。 僕は妖怪めいた容貌で、おまけに挙動不審なので、人に道を訊かれたりすることは滅多に無い。 そんな僕に声を掛けるなんて、よほど勇敢か、よほど変人なのに違いない。 「ラブペットランド? 店名に自信は無いのですが、できたばかりのペットショップですよね? すぐそこのショッピングモールにあった気がしますけど…」 「多分、そのお店だと思います」 目と鼻の先だったし、道順を説明すると却って面倒

          そこのけそこのけ地蔵が通る

          今年もこの季節がやって来た。 地蔵親子のお引越しだ。 ひと組の親子を見つけて、町内は気もそぞろだ。 石月山のお地蔵様が、どこかで石の卵を産み落とす。 それが孵るのが、今頃なのだ。 親地蔵が、よちよち歩きの子地蔵を連れて歩く行列が、この季節の風物詩となっていた。 今回は、幸福公園のブッシュで孵ったものと思われる。 子地蔵は8体を数えることができた。 親地蔵の後に付いて、覚束ない足取りで、保育園の遠足みたいに、しばらくは公園のあちこちを歩き回っていた。 生まれた直後は身長5

          そこのけそこのけ地蔵が通る

          家族の肖像

          家族の真相は、外からはわからない。 一見幸せそのものに見える一家が、ある日突然崩壊するという事例に、最近立て続けに遭遇して、改めてそう思った。 幸せそのものに見える一家が実は壊れていることもあれば、その逆もまた珍しくはない。 どう見てもぶっ壊れているとしか思えないのに、実はそれなりにうまく行っていたりもするのだ。 隣室の南部谷さんは、4人家族と聞いている。 ところが、四十代と思しき奥さんのほかは、顔を見たことが無い。 奥さんは気さくそうな人なので、出くわすたびに家族のこと

          ベニコウジ

          「帯状疱疹がね、あっという間に治ってしまったの」 煙山さんが言った。 美人なのに、いつも顰めっ面をしているから、何かと損をしている彼女だった。 そんな彼女が、近頃妙ににこやかなので、探りを入れてみたのだ。 「ベニコウジのおかげなの」 「ベニコウジって、もしかしたら、今サプリで問題になってるやつ?」 「じゃなくて、これよ」 バッグから高さ五センチくらいの小瓶を取り出す。 ラベルも何も付いていなくて、白っぽい粉が入っている。 「薬?」 「薬ではないから…これもやっぱ

          おたから

          床に金の粉が落ちていた。 僕の皮膚から落ちたものだとわかった。 大駱駝艦の金粉ショーを見たせいかもしれない。 路上パフォーマンスをすぐ近くで見ていたから、金粉のおこぼれに与ったのだろう。 次の日に目覚めると、床にまた金粉が落ちていた。 昨日よりも明らかに量が多かった。 手を顔に当てると、粉っぽい。 擦ると、金の粉が舞い落ちた。 顔の皮膚が金粉を吹いていたのだ。 粉の量は日々どんどん増えていく。 捨てるにはもったいない。 数日分を集めてみたら、結構な量になった。 もし

          大吉ばかりの夢十夜

          第一夜毎日IKKOさんばかり見ているような気がする。買取のCMやチラシばかりではなく、ありとあらゆる場所から、おしゃべりの白いモグラみたいに「どんだけ~っ!」と飛び出してくるし、夢にまで出てくる… 第二夜大きな赤い本がある。開くと中も真っ赤なのだが、所々、白いページもある。「4人で作ったんですけど、未完なんです」と天の声が言う。「血で染めています。4人目が途中でやめてしまったんです」僕に完成せよと圧力をかけているような気がする…という夢 第三夜ガワ・スイトロビッチという白

          大吉ばかりの夢十夜

          玉手場所

          スーパーボールが暴走したのだ。 未舗装の坂をぽんぽんとんとん跳ね下り、どこかへ消えてしまった。 温泉町の外れに住んでいた。 ぼくの家の周りには、芸者さんの住んでいるアパートが点在していた。 一緒に遊んでいた友達ふたりとボールを探し回った挙句、どうやらそんなアパートのひとつに闖入したらしいことがわかった。 しかも、玄関の硝子戸をぶち割って。 それがわかると、ふたりは逃げ去ってしまった。 取り残されたぼくは、しばし迷ったが、意を決して謝りに行くことにした。 呼び鈴を鳴らすと

          空の人

          ジョン・スカイヤー君は、若い白人男性だ。 アメリカ出身という噂だが、確認したわけではない。 いつも倫理学科の講義に顔を出して、熱心に聴講している。 背はそんなに高くないが、ごついしっかりした体型。 空手の有段者だという話だ。 実際、黒帯の空手着姿で、キャンパスに現れることもあった。 外国人の留学生は珍しくない大学なので、僕も特に気にしたりはしていなかった。 そんなスカイヤー君が、ある日のゼミをきっかけに、僕の世界に舞い降りたのだ。 日本倫理思想史のS教授のゼミだった。 テ

          ぼくのおじ遺産

          祖父が死んだ。 ぼくに遺産を残した。 サグラダ・ファミリアだ。 だだっ広い庭の一角に築き上げた。 完成しているのか未完成なのかはわからない。 木やら空き缶やらペットボトルやらわけのわからないガラクタやらで作り上げた。 たったひとりで、少なくも70年かかって。 桜田家造。 ぼくの祖父の名だ。 享年90。 祖父については、片手で数えられるほどの思い出があるだけだ。 小学校に上がる前、父が突然大学に戻ってしまった。 何やらやり残した研究を完遂させたいという。 その間の数年、

          ぼくのおじ遺産

          マンホールマン

          監視されている。 姦視かもしれない。 見られていることは確かだ。 この数日に始まったような気もするし、以前からあったような気もする。 いずれにせよ、はっきり意識するようになったのは最近のことだ。 ほら、今も誰かが見ている。 感じるのだ、背中に視線を。 振り返る。 誰もいない。 右も左も近くも遠くも、誰もいない。 ただひとつ、気になる物があった。 歩道の少し離れた所にあるマンホールだ。 浮き上がっているように見えるのだ。 駆け寄ってよく見ると、確かに浮き上がっていた。

          マンホールマン