【入門!論理学】細かいところに手を伸ばす論理学
オススメ度(最大☆5つ)
☆☆☆
〜論理学とは何をやっているのか?〜
タイトルの通り、本書は論理学の入門書である。とはいえ、他の論理学の本のように記号を使うような記述は無い。
著者もまえがきに書いているように、論理学の本としてはかなり変わっている類の本で、記号を使わず日常的な言葉と関連付けながら可能な限り記号論理学の世界を言語化することに注力した一冊である。
なので、僕のような数学アタマの人間にしてみれば、数式や記号で書いてもらった方がわかりやすい点は多々あり(ド・モルガンの法則なんて、記号でしか見たことないし(笑))、文章だとうまく頭で整理するのが難しい部分も多いが、「論理学は何をやっているのか?」を体感することは十分できるだろう。
まさに門をくぐる、「入門」の書である。
〜論理学をつくる〜
論理学のエッセンスに触れるにあたり、本書が目的とするのは、ひとつの論理体系を構築する、ということである。
すなわち、ある公理系を定めることで全ての定理を健全かつ完全に証明できるようにする、ということだ。
過去のエッセイで「公理」について書いたことはあるが、要は他の命題を証明するための根本命題である。
本書では、否定・連言(選言)・含意を定めることで、すべての論理を証明できるよう論理体系を構築していく。そして、そのプロセスを追うことで「論理学とは何か?」を感じれるようになっている。
読んでいるうちに「そんな細かいとこまで気を配って定義しなきゃいけないのか?」と思うところが何度も出てくるのだが、その思考プロセスがまさしく論理学の真髄なのだとも感じる。
矛盾のない論理を組み立てるのには、細部に至るまで思考し抜かなければならない。
論理の難しさを感じた。
〜論理的な人っているの?〜
さて、僕は「論理的思考」だとか「論破」だとかの巷の「ロジカルブーム」に飽き飽きしていることはこのnoteでも何度も書いているのだが、これは議論や討論に強くなるための一冊ではなく、論理学という学問の一端に触れる一冊だ。「論破」に憧れて本書を手に取るつもりであれば、それは大きな間違いである。
本書を読めば、日常会話がいかに曖昧な表現の繋ぎ合わせかどうかがよくわかる。論理的に話しているつもりでも、言葉の表現にはどこかに必ず曖昧さが出てくるのだ。
逆に言えば、言葉とはひとつの論理体系で構築できるようなものではなく、非常に自由で豊かなものだ、ということも本書で感じられた。
相手を論理的(であるかのよう)に言いくるめるために言葉を使うのは、非常に言語的に乏しく勿体無い使い方なのである。
記号で表現される論理学を言語で表現することで、副次的に言葉の豊かさや深みも感じられた一冊であった。
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