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短編小説「じゅたろう」

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とある球児の人生を描きます
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⑧ 無謀なリリーフ オレに回せ!

⑧ 無謀なリリーフ オレに回せ!

オレと名セカンド北川はエース安藤の入院した病院にお見舞いに行った。

入院を教えてくれた奥さんとなった幸子も当然、居るし、横には4歳になる息子も居た。
幸子はお惣菜会社を辞めて安藤の印刷会社を少し手伝っていたが、昔みたいに綺麗で品が良かったが流石に疲れていた。

「おぉ!久富、北川!久しぶり!」と安藤はベッドの中から割と大きな声を出した。そんな大声キャラじゃないだろ。
「これで大友商業野球部の伝説

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② 定食屋「イカ天」

② 定食屋「イカ天」

引き戸をガラガラっと開けると、おばちゃんが一人でやっている定食屋「イカ天」が大友商業野球部の溜まり場だった。

安い、旨い、早い、んだが、とにかく安い。
毎日、変わってない「日替わり定食」が、イカ天、ハンバーグ、小さなコロッケ、キャベツ、ご飯、アオサの味噌汁で480円。ご飯大盛り無料だ。

おばちゃんは大友商業出身で、一昨年、亡くなったダンナさんもおばちゃんの同級生だった。ダンナさんの口癖は「オレ

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① 9回裏 1-3 ワンアウト一、二、塁

① 9回裏 1-3 ワンアウト一、二、塁

地区予選大会決勝。相手チーム南園学園は140kmの速球と125kmのスライダーを誇るサウスポーのエースピッチャー野村。

俺たち大友商業の3番セカンド北川は手堅くまずは得点圏に同点ランナーを進めて4番安藤、5番のオレ久富に回そうと送りバントの構え、そこに野村の高速スライダーが右バッター内角に食い込む。ガッと鈍い音がして、バントの打球は転がらず三塁側に変な回転の飛球が少しだけ上がる。野村がノーバンで

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⑨ 割烹「じゅたろう」

⑨ 割烹「じゅたろう」

オレはセカンド北川に色々とアドバイスを貰って、郊外の安い安い狭い狭いお店で一人でやれる物件を探しまくった。

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⑦ エース安藤

⑦ エース安藤

北川とその彼女は今夜デートの約束だったのにオレが急に久しぶりに電話をかけて会いたいとか言うもんだから「面白い奴だし、親友だから紹介がてら、一緒に飲もうよ」となったらしい。

このカフェは北川が店長だから、勿論、元々はここでデートする筈は無かったが、気軽に(安く)飲むにはここが良いとセカンド 名セカンド北川の素早い良い判断だった。

「それで?サード久富、どうして東京に?」
「セカンド北川、あ、名セ

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⑥ 東京にセカンド北川が居る

⑥ 東京にセカンド北川が居る

自暴自棄で会社を辞め、勢いで美貴と離婚したオレは逃げ出すように東京に出た。美貴が心底嫌いになった訳ではなかったが、もう何もかもが嫌になった。

大樹と祐太郎も美貴に渡してきた。無職の男が子ども二人を育てられる筈がない。

とりあえずは、飲食店のバイトで食いつないだ。昔たまに地元の「イカ天」のおばちゃんを手伝って、その分で毎日変わらない「日替わり定食」をご馳走になっていたからか、飲食の勘は悪くないと

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⑤ ガールズバー「グッチ」

⑤ ガールズバー「グッチ」

支店に異動させられてから三年が経った。

物流の効率化検証の為に支店に異動しろというは部長の言い訳だったとしか思えない。
何故なら、カルガモ運送のコストも正確性も配送時間も、中田運輸のパーフォマンスを凌駕していたが、「半年間では検証期間が短い。」と検証期間を一年に延ばし、二年に延ばし、三年に延ばして、今に至るからだ。
そして支店の連中も真剣に物流合理化の検証を進めたいようにも思えない。
オレは何の

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④ スナック「たまにグチ」

④ スナック「たまにグチ」

長男が生まれた。
大樹と書いて「たいじゅ」と読む。
久富大樹、ひさとみ たいじゅ、いい名前だ。

久富美貴となった美貴は「ひさとみみき、って言いにくいんだよねw。普段は田口美貴で良いよね?」とグチっていた。

長男の誕生はサイコーだつたが、部品メーカーの仕事はドンドン忙しくなるし、美貴は大樹の世話で大変だった。美貴は自分の母親のやってるスナック「たまにグチ」に昼間、大樹を連れて行き、母親と一緒に面

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③ デキ婚

③ デキ婚

高校卒業後に地元の部品メーカーに就職したオレは良く田口美貴とデートをしていた。

大人びて明るくて元気で面白い田口美貴はチョーシ者のオレにはピッタリだった。公園行ったりショッピングモール行ったり、親の車でドライブしたり、高校時代には野球漬けで出来なかったフツーの日常がたまらなく楽しかった。
田口美貴は「久富クン、好きだよ!」と繰り返し言ってくれた。
あの祝勝会の夜、キスしてしまった二人が先に進むの

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