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世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール2014.03.17 Vol.60 2/2 2014-05-11 21:45:09

日経ビジネスの特集記事 Vol.60

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール2014.03.17 Vol.60  2/2 2014-05-11 21:45:09

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

今や家電メーカーとして、洗濯機や冷蔵庫で、トップを走り続ける、ハイアールとはどんな企業なのか?
が主要テーマです。

ハイアールが、旧三洋電機の白物家電事業を買収したのは、約2年半前のことです。

豊富な資金力を背景に、外国企業のM&A(合併・買収)に乗り出しています。日本企業もそのターゲットとなっています。


PART3 中×日で世界目指す

2014年に入って、日本の家電量販店に衝撃が走りました。

ハイアールが、旧三洋電機の白物家電「AQUA(アクア)」ブランドの販売で、家電量販店の最大手のヤマダ電機との取引縮小に動いている、という内容です。

それは単なる噂ではなく、事実でした。

アクアの販売を担うハイアールアクアセールスの中川喜之社長は、取引の縮小を認める。「決してヤマダを切る意図ではない」と言うものの、「従来よりも利益を重視し、当社の考える条件に合わない取引についてはどの量販店にも毅然とした対応を取る」と明言した。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
p.038


ハイアールが新規開拓先として推進していこうとしているのは、ホームセンターやイオンなどの総合スーパーです。

その理由は、「1店舗当たりの販売台数はそれほど見込めなくても、家電量販店に比べれば厳しい値引き要請はしてこない」(p.039)からです。

ハイアールは、徹底した競争原理を導入し、家電製品のデザインにも、社内の部署だけでなく、社外の企業も含め、「コンペ形式」を採用しています。

ハイアールと日本企業との力関係が逆転したのです。

多い時は5社とコンペになり「採択率は50%」(高嶋公恵担当課長)だ。一度決まっても、消費者の反応が悪いと採用を取り消されてしまうことがある。

「今後、コンペで連敗が続くことがあれば、我々に声が掛からなくなるかもしれない。職場の存続すら危うくなる」(高嶋担当課長)。

職場はこれまで味わったことがないような緊張感に包まれている。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
p.040

*高嶋公恵・担当課長 旧三洋電機の冷蔵庫デザイナー


世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17


前回、2013年の「売上高税引き利益率は6%で3%のパナソニックなど日本勢を引き離す」という好業績を出していることをお伝えしました。

その理由の一端が分かりました。

ハイアールはメーカー主導の販売をしていることもあり、定価販売が基本で、値崩れが少ない。

細かい仕様変更ではなく長期的な視線で開発に取り組める。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
p.041


このように、「国内では敵なし」の圧倒的な強さを誇っています。

裏返せば、海外での売り上げはまだ十分な成果を上げていないことが伺えます。

ハイアールは冷蔵庫(20.1%、英調査会社ユーロモニター調べ)や洗濯機(16.4%、同)などで世界シェア首位に立ち、150カ国以上で販売している。とはいえ、販売先の多くは中国。

本格的な国際展開はこれからの課題だ。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
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企業が急成長し、世界に存在感を示すための手法として用いられるのは、M&A(合併・買収)です。

「時間をカネで買う」のです。1からスタートしなくて良いのです。

技術力の高い企業を買収することで、一気にトップに立つことが可能になります。

つまり、中国企業は企業買収に積極的に取り組んでいるということです。

2014年も中国のレノボ・グループが米グーグルから子会社の米モトローラ・モビリティーを買収するなど、大型案件が相次いでいる。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
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世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17



再生へ、自ら死せよ

ここからは、ハイアール集団CEOの張瑞敏(チャン・ルミエン)氏へのインタビューの一部をご紹介します。

ハイアール集団CEOの張瑞敏(チャン・ルミエン)氏
世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17

PROFILE

1949年、中国山東省生まれ。中国科学技術大学修士課程修了。84年に、ハイアールの前身となる赤字経営の国営家電工場に工場長として派遣され、再建を指揮。徹底した品質管理と顧客目線のサービスを強みに、1代で現在の巨大企業を築き上げた。99年、英フィナンシャル・タイムズの「世界で最も尊敬されるビジネスリーダー30人」に選出。65歳
(世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17)



気迫溢れた回答に、ハイアールの勢いを感じます。
強い危機意識を持ち続けているからです。

何よりお伝えしたいのは、私たちは「学び続け、変わり続ける企業」だということです。

1984年の創業当初、私は日本企業の経営者の精神を徹底して学びました。松下幸之助の本はほとんど読みましたし、稲盛和夫、豊田喜一郎などに関する
著作にも一通り目を通しています。

ハイアールの組織作りや経営理念は、そこから学んだものです。

ニーズは多様化し、また変化が速くなり、ある1社がどれだけ優れた技術を持っていても、それだけでは利益を得続けることが難しい。

めまぐるしく変わる環境に対していかに適応するかが、当社だけでなくあらゆる企業に共通した課題と言えます。

IT(情報技術)を活用すれば、店舗を介さなくても直接的に顧客と接点が持てます。

直近では、どれだけ利益や顧客創造に貢献したかに応じて、社員の給与を算定する仕組みを導入しました。

もし、開発した製品の売れ行きにかかわらず同じ給与が得られるとすればどうですか。技術者は設計図を描くことだけに集中し、売れないのはマーケティングや販売部門が悪いからだ、となりがちです。それではニーズに合った製品など生み出しようがない。

自発的な意欲をかき立てる仕組みさえあれば、従業員一人ひとりが最大限の能力を発揮してくれます。

ネット時代においては「顧客をどれだけ持っているか」あるいは「新たに獲得できるか」ということが、より優先する価値になります。

今、私が注視する企業は米グーグルと米アマゾン・ドット・コムです。

日本にR&D拠点を持つのも、様々な顧客の悩みやニーズに応えられる体制を作るためです。

事業継承の本質とは、「最も優秀な人材を指名すること」でもなければ、「いつトップのいすを譲るか」という問題でもありません。内部の自発的な力によって、その時に最適なトップを選ぶメカニズムがあるかどうかです。

企業経営手法には寿命があり、いずれ死は避けられないと思います。遅いか早いかだけのことなんです。だとすれば敵に討ち滅ぼされるより前に、活力があるうちに自ら死を選び、その後の新たな再生へ向かうことを繰り返すしか競争力を保つ手段はありません。

世界に挑む「紅い旋風」 ハイアール 2014.03.17
p.045


張瑞敏(チャン・ルミエン)氏の言葉を、今(2023.05.06)読み返してみても危機感がひしひしと伝わってきますし、同時に自信に溢れていることも感じられます。


最後に、次の言葉をお伝えしたいと思います。

Adaptation precludes adaptability.
<(環境に)適応し過ぎると、適応能力を失ってしまう>
(『知識創造企業』 野中郁次郎+竹内弘高 東洋経済新報社)

変化への対応は、固定した組織形態ではできない、という意味です。



🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-05-11 21:45:09)のものです。加筆修正してあります。

過去10年間、中国は目覚ましい成長をしてきましたが、新型コロナウイルス禍の影響で、成長が鈍化してきました。日本と同様に、人口減と高齢化が急速に進んでいます。

そのような中で、ハイアールの現状はどうなっているでしょうか?

ハイアールジャパンセールス 売上/利益/業績推移の決算グラフで経営分析 2021 グラフで決算|投資、分析、金融、就職転職に役立つから2023/1/20

上記ウェブサイトを見る限り、ハイアールジャパンの業績は堅調に推移していることが分かります。

別のウェブサイトも見てみましょう。

ハイアールの事業構成と市場シェアの分析


ハイアールグループ全体の業績も堅調に推移していることが見て取れます。

中国企業による日本企業のM&A -ハイアール、三洋電機の白物家電事業を買収- M&A Online

このウェブサイトにハイアールが旧三洋電機の白物家電事業を買収した経緯が詳細に書かれています。



【『日経ビジネス』の特集記事 】 Vol.60 バックナンバー

⭐『日経ビジネス』とは、「日経BPから発行されている経済・経営分野の話題を扱う週刊誌である。1969年9月創刊。当初は月刊だったが、翌1970年9月より隔週刊となり、1991年4月より週刊となった」(出所:「日経ビジネス」 Wikipedia

⭐『日経ビジネス』の特集記事
から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。

⭐当面は、Ameba(アメブロ)に投稿していた記事を再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、「バックナンバー」と表示し投稿します。

⭐1つのテーマについて複数回投稿している場合(ほとんどが該当しますには、1つにまとめて投稿します。タイトルの後の日付は雑誌の発行日で、最後の日付は投稿日を表わしています。

🔴2022.11.26以降、1つのテーマについて複数回に分けて投稿します。

⭐一方、新規で投稿した記事については、異なる壁紙を用意し、本文内に「タイトル」「雑誌発行年月日」を表示します。


再投稿することにした経緯

再編集して再投稿することにした理由は、次のとおりです。

自分が当時どんな記事に興味があり、どのような考え方をしていたのかを知りたいと思ったからです。

当時の自分を振り返ることで、当時と現在で考え方は変わったか否か、あるいは成長しているかを確認したいと思いました。

記事データは当然古くなっていますが、本質的な部分は必ずあるはずで、しかも普遍性があります。その個所を再度学んでみたかったのです。

さらに言えば、『日経ビジネス』のバックナンバーをご紹介することで、この記事に目を通していただいたあなたに何らかの有益なヒントを提供することができるかもしれない、と考えたからです

「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」だからでもあります。
プロフィールから)


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