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盛田昭夫 『21世紀へ』(006)

盛田昭夫 『21世紀へ』(006)

盛田氏は、「なんといっても社員は、一度しかない人生のいちばん輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい」と、述べています。

今、このようなことを公言する経営者はほとんどいません。

それどころか、最近では「ブラック企業」が増え、長時間労働を課したり、休日が取れない状況を作り出している経営者も少なくありません。

もちろん、経営者は社員を甘やかすことはできません。
会社も、そこで働く社員も「毎日が競争」だからです。

他社や他人に負けるわけにはいかないのです。

ただ、社員は「社畜」でも「社奴」でもありません。
その点を、労使ともにしっかり認識しておく必要があります。

『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次
はじめに
第1章 経営の原則
第2章 人材の条件
第3章 マーケットの創造
第4章 国際化への試練
第5章 経済活性化の原理
第6章 日米関係への提言
第7章 変革への勇気
第8章 日本国家への期待
第9章 新世界経済秩序の構築
あとがき


第1章 経営の原則

「競争に勝つことがすべて」(1967年)から


毎日が競争

会社へ出てきた以上は、毎日が競争なのである。これをよく頭のなかに叩き込むことが大切であろう。

21世紀へ 盛田昭夫 016 p.40



「繁栄のための経営理念」(1982年)から


理念を実践するための戦術の必要性

私の経営理念は「ソニーと関係のあるすべての人を幸福にすること」である。

これは理念というよりも、経営者としての私の使命というべきかもしれない。

そして、その使命を果たすためには、さまざまな経営技術を駆使して利益をあげていかなければならない。

つまり、理念を実践するために、いろいろな戦術が必要になる。

21世紀へ 盛田昭夫 017 pp.41-2




社員の幸福が最大関心事

ソニーに関係のあるすべての人に幸福になってもらうことが私の念願であるが、とりわけ、社員の幸福は、私の最大関心事である。

なんといっても社員は、一度しかない人生のいちばん輝かしい時期をソニーに委ねる人たちであるから、絶対に幸福になってもらいたい。

21世紀へ 盛田昭夫 018 p.42




盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田氏が、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという気持ちがビンビンと伝わってくる本です。

盛田氏の「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることは多くが当たっています。
盛田氏の慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

アマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられるでしょう。


🔴「使命を果たすためには、さまざまな経営技術を駆使して利益をあげていかなければならない」

企業は利益を上げていかなくてはならないことは誰でも納得できることでしょう。

ビジネスは慈善事業ではありません。

利益をあげなければ、設備投資も借入もできず、社員の給料を支払うことさえできません。

この意味での利益(見かけ上の利益ではなく、実質的な利益)は、キャッシュが伴うものですから、キャッシュフロー経営を推進していくことは必須です。

営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローの3つのキャッシュフローのコントロールがポイントになります。

黒字倒産という言い古された言葉があります。
決算書上は黒字であっても、キャッシュが足りないために借入金の返済や手形が落ちないという事態に陥ると、倒産という二文字が目の前にちらついてきます。

一度不渡りを出すと金融機関等からの信用が失われ、半年以内に二度目の不渡りを出すと銀行取引停止処分となり、事実上の倒産となります。

極論を言えば、現状は赤字(決算書上の赤字)であってもキャッシュさえあれば倒産しません。

増収増益(売上も利益も増える)が望ましいですが、減収増益(売上が減少するが利益は増える)となるケースもあります。

実店舗経営をしている場合、不採算店を閉鎖することで売上は減少しますが、損失も止まるため減収増益となることがあります。




盛田氏は、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンです。表現がダサい? 古い?




⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。
さらに、ここ数十年で業態を変えてきましたね。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで8年前(2014-06-21 21:50:26)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1


今やソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元




⭐回想録


⭐プロフィール


⭐私のマガジン (2022.12.23現在)

























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