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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.46

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯には「あなたのこころの奥にある勇気と覚悟に出会える。『本物の大人』になりたいあなたへ、」(『続・大人の流儀』)と書かれています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「カラオケが下手で何が悪い?」から

伊集院 静の言葉 1 (136)

 先日、沖縄に行った。沖縄の本島に滞在するのは初めてだった。
 これまで宮古島には長く滞在したことがある。
 それは重度のアルコール依存症になって、久里浜の病院に入らなくてはならない状況になり、或る先輩が、それでは可哀相だと、宮古島に連れて行ってくれて、毎日、海に入り、少しずつ酒の量を減らし、治療をしてくれた。  

大人の流儀 2 伊集院 静                               




「カラオケが下手で何が悪い?」から

伊集院 静の言葉 2 (137)

 私は生まれて初めてカラオケというものを歌った。
 たしか ”カスパの女” という曲を歌い、私が三番の歌詞まで歌い終わってマイクを置くと、カラオケの方は丁度二番の歌が終って間奏に入ったところで、三番は皆がハミングすることになった。
-----そうか、カラオケというのは勝手に歌っちゃマズイのか。
 私に恥をかかせてはと思う、皆の気持ちが三番の歌に入った時にハミングになったのだと思う。以来、カラオケは歌うまいと決めた。それでも時々つきあいで歌った頃があった。いずれもよい結果は生まれなかった。  

大人の流儀 2 伊集院 静                               



「カラオケが下手で何が悪い?」から

伊集院 静の言葉 3 (138)

 私もつき合いで少し歌ったが、自分で歌っていて、下手だなと思うし、レコード大賞の作詞家だから、下手に歌って仕事が来なくなるのも困るし、大賞をもらった歌手の方(マッチなんだけど、近藤真彦のことです)にも失礼にあたる。
 一度、マッチと二人で、”ギンギラギンにさりげなく” という曲(実は私が詞を書いた)を歌った時、マッチが私の音程の取り方の下手さに驚愕していた。
 家人などはレコードを何枚も出していた歌手だったらしく、歌うとビックリするくらい上手くて、感心して聞いたことがある。
 それでも私に言わせると、カラオケの上手い人はどうも信用がおけない。特に熱唱する人などを見ていると、危ない人じゃないかと思ってしまう。
 それに周りの人が歌う人の歌を聞かないで、次に自分が歌う曲を本を開いて調べていたりする光景はやはりおかしいのではと思う。  

大人の流儀 2 伊集院 静                               


出典元

『大人の流儀 2』(書籍の表紙は「続・大人の流儀」)
2011年12月12日第1刷発行
講談社




✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 「家人などはレコードを何枚も出していた歌手だったらしく、歌うとビックリするくらい上手くて、感心して聞いたことがある」

伊集院氏は夏目雅子さんと死別した後、女優の篠ひろ子さんと再婚しています。
家人というのは篠ひろ子さんのことです。

Wikipedia を見て、篠ひろ子さんが歌手でもあったことを知りました。


篠さんが出演したドラマのタイトルが並び、懐かしく感じました。
『時間ですよ』『寺内貫太郎一家』など。





🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。




<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。







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