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胸騒ぎのシチリア(2015)

ルカ・グァダニーノ監督「胸騒ぎのシチリア」を見た。劇場公開時に見逃していた2015年の作品。なんでも、1969年の映画「太陽が知っている」のリメイクらしい。

物語の舞台となるのは、ユネスコの世界遺産に登録されているパンテッレリーア島。この島の風景がとにかく素晴らしい。広大かつ美しい風景の中で、人はちっぽけに見えるが、そんなちっぽけな人間の中にある感情の揺れはとても大きい。

ロック・スターのマリアンは声を失い、恋人のポールと2人、この島で静養している。そこに乗り込んできたのが、やたらと騒々しい快楽主義者の音楽プロデューサー・ハリー。ハリーは元々マリアンと恋人同士で、別れた後に知人のポールをマリアンに紹介した人物でもある。

ハリーは、母子家庭で育ち1年前にハリーが父親だと突き止めたという若い女性・ペンを連れていて、さらに女友達2人も許可なく呼びつけて大はしゃぎ。マリアンとポールの静かな暮らしは完全に引っ掻き回されてしまう。

ハリーとマリアンには濃密な過去があり、ハリーはよりを戻そうと積極的にアピール。その姿を苦々しく見ているポールにも複雑な過去がある。そんなポールの気を引こうとするペン。

この居心地の悪い一触即発な人間関係が、一体どのようにもつれていくのか… というお話です。

マリアンを演じるのはティルダ・スウィントン。あまり見ない女性らしい女性の役。ハリーはレイフ・ファインズ。いつもの渋くて陰のある格好良さから大きく離れた、自己中で破滅的な、すぐに素っ裸になってプールに飛び込んだり、浴びるように酒を飲んで踊りまくる珍しい演技です。

【以下、ネタバレ】
125分の映画は、お互いがお互いの出方を探るような、嫌な感じの人間関係をじわじわと描き、何か起こりそうでなかなか起こらないまま終盤に至ります。

最後に事件が起きるのですが、そこからもあまりサスペンスな展開に振り切れず、なんだか中途半端なまんまで終わってしまう。

マリアンやペンが複雑な心情を抱きながら、飲み込んで前に進もうとするのはわかるけど、なんかいまひとつしっくりこないなぁ… というのが正直な感想です。

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