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小説・自己中恋愛ラプソディ①

次▷   14話

ある休日、彼と彼女は再会した。

地元大学を卒業後、就職のため上京した雅史は、年に数回だけ地元に帰るのが習慣になっていた。この日の夜は古い友人と会う約束をしていたので、繁華街へと足を向けたのだった。

せっかく久しぶりの地元だから、かつてよく行っていたお気に入りの店にでも顔を出そうかと昼間から出かけることにした。


駅に到着して歩いていると、どこかで見たことがある後ろ姿があった。こんなにも雑多な人混みの中、しかも久しぶりの地元繁華街で一瞬で分かる人物などそういない。


茶髪のボブに細身の長身でボーイッシュなファッションというのは珍しくもないが、迷いのない颯爽とした歩き方は特徴があった。変に目立つほどでもなく、言われてみてようやく気がつくという程度だ。


どこにでもいそうでいて、付き合いの長い人間だけが分かる特徴。


それでも少し迷った雅史が確信に至ったのは、両耳に揺れる大ぶりのフープピアス。小粒のジュエリーたちがアシンメトリーの色合いでキラキラと光る。


4年間見続けたこれだけは間違いない。すると何年たっても、全て忘れていたつもりでも、その瞬間に過去の記憶が戻ってきた。


彼女に違いない──



雅史は当時のことなど忘れて思わず駆け寄った。


「エリ?」

驚いた頭がびくっと揺れ、ゆっくりと振り返った。星屑のようなジュエリーの光がエリの顔を彩りながら照らす。

「雅史くん」

心の底から驚いたように大きくまたたいたふたつの目は、雅史のよく知っているそれだった。


次▷   14話


【この話について】
かつて付き合っていた雅史とエリが7年ぶりに再会。純粋に過去をなつかしむはずが、話はどんどん違う方向に。自己中な恋愛事情を語るふたりの会話劇。全15話でラストは2種類。2022.6.21完結


ほかにも色々書いてますので、よろしければ読んでみてください。




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