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短編シナリオ 「良い事」

【登場人物】
カスミ…広告代理店で働く女性
アカリ…カスミと同じ広告代理店で働く女性、カスミとは同期だか部署は違う。
居酒屋の店員さん(女性)
植木流星…新進気鋭の若手人気俳優

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場所:とある都内の居酒屋

仕事帰りの女性2人がお酒を飲んでいる。

アカリ「今日は良い事あったんだよ!」

カスミ「はいはい、良かった良かった」

アカリ「なんでーそんなにーしおたいおーなの?」

カスミ「塩対応?」

アカリ「そー!塩!対!おう!」

カスミ「あいあい。あ、すみませんー」

店員が席に来る。

店員「はい。お伺いしますー」

カスミ「追加でウーロンハイ」

アカリ「私もー!!」

店員「ウーロン杯2つですね」

カスミ「あ、こいつのはいいです。」

店員「あ、えっと、」

カスミ「ごめんなさい店員さん、ウーロンハイ1つで」

アカリ「えー!なんで!ーー!!!」

カスミ「これ以上呑むな!誰が世話すると思ってんだ!あ、すみません、店員さん」

店員「はい笑」

アカリ「何で笑うのー!」

店員「あ、ごめんなさい、大変失礼致しました」

カスミ「本当に申し訳ございません!!あなた悪くないから!!本当に」

店員「いえ、申し訳ございませんでした!あ、ご注文繰り返させて頂きます、ウーロンハイ1杯ですね!かしこまりましたー」

店員、席を離れる。

アカリ「2杯だよー!!」

カスミ、アカリを殴る

アカリ「いてっ!」

カスミ「いい加減にせんか!」

アカリ「けち!」

カスミ「あーだめだ。もう私、すでにお世話してるわ。」

アカリ「私、生まれてこの方、誰のものでもありません!」

カスミ「会話しよーねー」

アカリ「うぃー!!!!」

カスミ、ため息をつく。

アカリ「あ!そうだ!本当に良い事があったんだよ!」

カスミ「んだよ、こっちは大事なコンペの選考落ちてんだぞ、ちょっとは励ませや」

アカリ「だーかーらー、こうやって同期が呑みに誘ってるじゃん」

カスミ「そうだけどさぁ。結局こっちに負担かかんだよ!」

店員、ウーロンハイを持ってくる。

店員「お待たせしました、ウーロンハイですー」

アカリ「ありがとう!!!おねいさん!!!さっきは!ごめんね!」

店員「あ、はい、、、」

カスミ「ほんとすみません!ほんとすみません!」

店員「いえいえ、明るい方ですね」

アカリ「そう!私明るいの!だからアカリっていうの!」

店員「へぇ、そうなんですね」

カスミ「おねいさん、ほんとすみません!これ飲んだら出ますんで!」

アカリ「えー!もっと呑もうよー!」

店員「ごゆっくりお過ごし下さいませ、、失礼致しますー」

店員、席を離れる。

アカリ「ほら!おねいさんも!ごゆっくりって言ってる!なのに!カスミは!帰ろうと!してる!」

カスミ「はいはい」

アカリ「失礼だ!」

カスミ「んだと、おら!」

カスミ、アカリを睨む。

アカリ「怖い。。。」

カスミ「あ、ごめん。」

カスミ、ウーロンハイを一気飲みする。

アカリ「すごい。全部飲んだ。」

カスミ「帰るよ。」

アカリ「う、うん。」

アカリとカスミ、店を後にする。

場所:店の近くの公園
2人はベンチに腰掛けている。

アカリ「すごい呑みっぷりだった。目が覚めたよ」

カスミ「それは良かったよ。」

アカリ「なんか、ごめんね。」

カスミ「あ、いやいやこちらこそごめんね、変な感じになっちゃって。まぁ、でも、謝るならもうちょい早めがよかったかなー」

アカリ「ごめん。」

カスミ「いやぁね。『失礼だー!』って言われたんだ。」

アカリ「誰に?」

カスミ「クライアント。良い提案だと思ったんだよ。植木流星にね、こう言わせるの」

カスミ、ベンチから立ち上がる。

カスミ『あなたのスマホはどのスマホ?僕はコレ!あなたはコレ?』

アカリ「さすが元演劇部!フリも完璧!」

カスミ「でしょ?」

カスミ、ベンチに戻る。

アカリ「で、それを植木流星がやるの?」

カスミ「のはずだった。」

アカリ「カスミ好きだねぇ、植木流星!」

カスミ「植木流星は絶対来るから!ガチ恋なんだから私!でもなぁ。湖から泥だらけで出てくる演出にダメだし食らうなんて思わなかったなー。面白くないって言われたほうが、まだ良かったよー。」

アカリ「まぁまぁ。」

カスミ「失礼ってなによ。まさかあのオバサンも流星ガチ勢だったんじゃないかな?もしかしてガチ恋?」

アカリ「ライバルじゃん」

カスミ「絶対違う!流星はあのオバサンより私を選ぶ!」

アカリ「まぁ、カスミは運がなかったよ今回は。あと、オバサンは失礼だよ。」

カスミ「それはどうも。でもなぁ、今後やりづらくなったわ、そこと。担当変わんないかなぁ。」

アカリ「変わんないんだよなぁ、そういうのに限って」

カスミ「ねぇ、どこが失礼何だと思う?流星にそんなに泥被らせたくないのかな?」

アカリ「さぁ。オバサンって言ったからじゃない?」

カスミ「それはさっきの私!もー」

アカリ「そういやさ」

カスミ「なに?」

アカリ「さっきの居酒屋で植木流星居たよ」

カスミ「は?」

アカリ「いや、違ったかな。でもあれは絶対流星だったな。メガネかけて変装?してたかな。」

カスミ「え、あの向かいの席の?」

アカリ「そうそう」

カスミ「うわうわうわうわ!確かにそう言われればそうじゃん!えーっ!言ってよ!!誰といた?誰かといた?」

アカリ「1人だったよ!てかあの場で言えないじゃん!!違ってたらどうすんの!」

カスミ「確かに。そりゃそうだ。アカリにしては冷静な判断だ。もしかして酔ったフリしてた?」

アカリ「しっかり酔ってたよー!でも、アカリちゃんはスーパーアカリちゃんだからいついかなる時も冷静に判断出来るのだ!」

カスミ「ごめん、まだ酒残ってたね。でも、あの顔はやっぱり、、。アカリちょっと待ってね、本当に流星だったか宣材写真みて確かめる!えっ、あれ?えっ!?!」

アカリ「どした?」

カスミ「スマホない!」

アカリ「やば」

カスミ「居酒屋かな」

アカリ「流星いるよ」

カスミ「いるかもね、戻るの?なんか戻りづら!」

アカリ「大丈夫!流星はカスミの提案のこと知らないから!」

カスミ「そっか笑」

アカリ「え、でもちゃんとあるかなぁ。」

??『あなたのスマホはどのスマホ?僕のはコレ!』

カスミ「え」

??『あなたはコレ?』

アカリ「まじ?」

カスミのスマホを持った植木流星が2人の前に立っている。

流星「すみません、話し声が聞こえてきてつい。。」

カスミ「あ、ありがとうございます。」

アカリ「えっと本人ですか?本人ですよね?」

流星「本人って」

カスミ「あーーーえっと多分人違いですよね、多分そっくりさん」

流星「それ、失礼ですよ」

カスミ「え?」

アカリ「やば」

カスミ「てことは」

流星「植木流星です。」

カスミ「申し訳ございませんでした!!!!!」

流星「いえいえ!えっと確認ですが、ご本人さんので」

カスミ「間違いないです!はい!確かにこれは私のです!」

流星「あぁ良かった」

アカリ「かっこいい」

カスミ「余計なこと言うな」

流星「あはは、ありがとうございます」

カスミ「ホンットにごめんなさい!なにか、お礼を!いつか!」

流星「お礼ですかー。そうですねー。僕をCMに起用していただければ」

カスミ「あーーーっ!ホントにホントにすみません!」

流星「何もそんなに謝らなくても」

カスミ「えっと、どこから聞いてらっしゃいましたか?」

流星「どこから?どこからかは良く覚えてないですが、、なんか、僕の名前が聞こえたなーって思ったら急にあの」

カスミ「えっ、めちゃくちゃ恥ずかしい。」

アカリ「えーじゃーさ、私の名前分かる?」

カスミ「こら!もう!すみません、こいつ酔ってて」

流星「スーパーアカリさん」

アカリ「そう!!」

流星「アカリさん、今酔ったフリしてません?」

アカリ「えっ。まぁ〜。ね!やるじゃん流星!」

カスミ「コイツ、、あのホントにすみません!」

流星「いやいや、もう大丈夫ですよ!カスミさん」

カスミ「流星が、私の名前呼んでくれた」

アカリ「あの居酒屋良く来るんですか?」

流星「ま、まぁたまには。」

アカリ「えー!私達良く来るんですよー!でこの子、流星さんのガチ恋でー!」

カスミ「ちょっと!!!」

流星「あ、聞こえてました(笑)嬉しいですけど、ちょっと戸惑いますね。」

カスミ「ちょっと!!??」

アカリ「じゃあ、オバサンの件もー?」

流星「オバサンは少し言い過ぎですね笑」

カスミ「あー死にたい。終わったわ終わった。もう無理。私の片想いは終わりました!!」

流星「ま、まぁ、人ってそういう感情になる時もありますし」

カスミ「でも私は流星の前では1番カワイイ子で居たかったのに!可愛くておしとやかで性格もいい子でいたかっのに!!」

アカリ「ドンマイ」

カスミ「ふざけんな!!!!」

アカリ「いま、めっちゃオバサンだよ」

カスミ「なにー!!!!!!」

カスミ、アカリを殴ろうとする。アカリは華麗に避ける。それを見て笑う植木流星。

カスミ「何がおかしいんですか!いや、もう私がもともと、おかしいんですよね!そうですよね!」

流星「あー、いやいや!でも、なんか、お2人楽しそうだなって」

カスミ「本当にそう思ってます?」

流星「本当ですって。役者やってると、色々思い悩むことあるんですけど、感情豊かな人って言うのかな。そういう人見てると何だか惹かれるというか。」

アカリ「よ!感情豊かな人!」

カスミ「アカリは黙って!」

流星「あの一気飲み、実はちょっと惚れちゃいました」

カスミ「え?」

アカリ「良かったじゃんカスミ!アカリはめちゃくちゃ怖かったけどね!」

カスミ「流星さん、バカにしてます?」

流星「とんでもない!隣で呑んでる姿ずっと気になってたんです」

アカリ「ホントに?言わされてない?笑」

流星「クールに、だけど時に熱くお酒呑む人って憧れるっていうか。」

カスミ「絶対嘘!絶対嘘!私の知ってる流星はそんな人じゃない!流星はおしとやかで大人しい子が好きなんだよ!真逆じゃん今の私!」

流星「そんな『今の私』に僕は惹かれたんです。本当は違うんです。みんなが知ってる僕なんて、僕じゃないんですよ。」

アカリ「え、何そのセリフ、カッコイイー」

流星「セリフって別に。本心で言っただけなのに。」

カスミ「本当に?本当に、ほんしん?」

流星「もぅ、何度も言ってるじゃないですかー。じゃないと僕はここには居ないですって」

カスミ「どういうこと?」

流星「別にスマホ届けるなら居酒屋の店員さんでも良かったんですよ。だけど、僕が勝手出たんです。スマホ届けるの。」

カスミ「え?なんでですか?」

流星「もう少しだけ、カスミさん、あなたを見たかったからです。」

アカリ「告白!?」

流星「あ、いや、あー!なんていうか!あっ!」

カスミ、一瞬卒倒する。

アカリ「カスミ起きて!あ、起きた。」

流星「あぁよかった。そうだ!一緒に2軒目行きませんか?もし良かったらご馳走しますので」

アカリ「いいんですかー!」

流星「ぜひ笑」

カスミ「夢だ。。絶対夢だ。。。」

流星「夢じゃないですよ」

アカリ「やったね!カスミ!!!」

流星「じゃあ行きますか。どこがいいですか?」

アカリ「近くにいい感じの店実はあるんですよー!」

流星「本当ですか!?じゃあそこ行きまょう!」

カスミ「あの!」

流星「は、はい。」

カスミ「今回は上手くいかなかったですけど、次は必ず上手くいくんで、あの!必ず今回のお礼をしますので!」

流星「はい。その時は是非」

カスミ「よろしくお願いします!!」

アカリ「よろしくお願いしますー!」

流星「そういえばアカリさん、何か良い事あったって」

アカリ「そう!めっちゃ良い事あったんだよ!はい!これ、カスミ!今日道歩いてたら見つけたからあげる!」

カスミ「なにこれ」

アカリ「四葉のクローバー!!!」

カスミ「ありがとう。」

アカリ「良い事あるといいね。」

カスミ「そうだね。」

四葉のクローバーを見つめるカスミ

カスミ「でも、もう十分良い事あったけどね。」

流星「これからですよ。」

カスミ「え」

カスミ顔をあげて植木流星を見る。

流星「これからもっと、良い事たくさんありますよ」

カスミ「ですね!」

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