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オガサワラオオコウモリと小笠原レモン- 自然と農業の共生を考える

あれは3年前の夏のこと。東京は竹芝客船ターミナルからおがさわら丸という船に揺られて24時間。船酔いにドキドキしながら小笠原諸島を訪れました。1度船がついたら約5日間ほど東京には戻れません。船がついた日はスーパーには食料も豊富に並んでいますが、船がついて4日もすれば棚はガラガラ。しかし年間約3万人もの観光客が足を運び、島民のほとんどは農業か観光業を営んでいます。

私は小笠原でしか獲れない「小笠原レモン」を求めて島に渡ったのですが、そこではおもしろい話を聞きます。

小笠原には「オガサワラオオコウモリ」というコウモリがいるそうで。体長は25cm、羽を広げると80cmほどになるそう。(ググったら怖い写真しかでないのでググらないことをおすすめします、と書くとみんなググりたくなりますよね。ほんとはそんな写真よりもかわいいですよ。)小笠原唯一の固有種で絶滅危惧種に指定されています。島内に200~300頭いるらしいですが、夕方になるとカラスのように空を飛んでいます。

そして、彼らの好物の1つが、「レモン」なのです。

小笠原レモンというのは小笠原の特産品で、大きいものだとソフトボールぐらいの大きさの丸いレモンです。小笠原では青い状態のまま収穫・出荷するのが主流なのですが、皮に嫌な苦味がなく、レモンとは言えど果物らしい甘味もあって、とてもおいしい。年間を通じて暖かい小笠原ではレモンをはじめ、マンゴーやパッションフルーツなど南国果物が多く育てられています。

生業としてレモンを育てている生産者はオガサワラオオコウモリからの獣害を受けています。レモンを食べられないように大きなポールを立てて網を張って、なんとかオオコウモリがレモンをかじらないように防止します。

しかし悲しきかな、オオコウモリがそのネットに絡まって死んでしまっている、なんてざらに起きているのです。

オオコウモリだって生きていくのに必死なわけで。「あれは人間が作ったレモンだから食べちゃいけない!」なんて考える余地もないのです。しかし、小笠原唯一の固有種であり絶滅危惧種である彼らは獣害の原因として、島民からは駆除したい対象だったのです。

私が小笠原で経験したオオコウモリとレモンは珍しい例ですが、日本各地で獣害なんて当たり前に起こっています。猪・鹿・アライグマなどなど。私たち人間が農業なんてしていなかったら、彼らは駆除の対象になんてならずに済んだはずなのに。

私はオガサワラオオコオモリに関する一連の体験をしたときから、農業と自然、いや人間と自然の共存ってどのようにしたら成り立つんだろうと考えるようになりました。今課題になっている地球温暖化なんてのもそうです。私たちが地球で生存し、産業を営んできたらから地球を破壊しているのです。

人間がエゴイズムを持ち続ける限り、共存はできないんだろうなと思います。「環境に優しい」「サステイナブルな」なんて綺麗な言葉が並べられるようになった世の中ですが、本当は「エゴイズムを捨てろ」ということなんだと思います。

まずは自分にできることから。
竹下友里絵