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ミュージシャン「w-m」という叫び

こんにちは。かつて音楽をやっていた大枝です。
本日二発目の投稿なので、気分変えて丁寧な言葉で運ばせてもらいまっせ。
(知って欲しいアーティストがいるって贅沢!)

僕は昔、バンドをやったり主にスタジオでドラム引っ叩きながら家ではちまちまとMTRという時代遅れな機械で曲を録音するという自家発電的な活動を行っていました。

2013年頃から今はなき「ok music」というサイトで曲を投稿するようになり、ネット上の一人アーティストとしての道を歩み始めた訳です。

ランキングでちょっと上になると喜んで1位なんて取った日にはオシッコ漏らしそうになるくらい感動したりしていたのですが、そんなある日、僕は「w-m」というアーティストにサイトで出会いました。
音を聴いた瞬間、これは一般のDTMerとはまるで違うとハッキリと分かりました。バンド経験の有無はかなり楽器のアンサンブルに繋がるので、その経験の豊富さをすぐに感じ取ったのです。

w-mは僕と同じくソロプロジェクト。つまり、一人で作者作曲からボーカルまで全てを担当するアーティストだったのでした。

彼のページに書かれていた文字に僕は自然と目を惹かれました。

「希望する方にはCDを差し上げます」

その文字に僕はふと、手売りでデモテープを配っていた自身のバンド時代を重ね見ました。
道行く人に声を掛けても貰ってくれず、ライブハウスで「欲しい」と言われ、渡したテープが閉店後のフロアにポツンと置かれていた事もありました。
昨今ダウンロードが当たり前になったネット世界で、希望者に「CD」を渡す(しかも無料で。しかも発送まで)というその心意気に、僕はすぐに食い付きました。
とにかく聴いて欲しいという熱を感じ、見事に当てられました。

数日後。家に帰り、届いていた封筒を見て僕は思わず嬉しくなって笑ってしまったのです。

「なんだ。本当に届けてくれたんだ」

そんな風に思ったのです。決して上手くはない彼の字をしみじみ眺めながら、僕はちゃんと包装された二枚のアルバムを手にしました。

その片方の「海月の寝室」というアルバムが、僕の心を一瞬で鷲掴みしたのです。

「無憂宮」という曲からアルバムは始まります。鬱屈した精神世界を再現し、自己認識した後にぶっ壊すような音の叫び。気怠さの中でまどろみながら、地面に寝転がって街を見上げているような虚無感。空なんかまだまだ、遠い。
あと、滅茶苦茶に、そしてべらぼうにギターが上手い。
思わず自分のギターを折ってやろうかと思ったほどです。
そんな印象を受けつつ、アルバムの中のある一曲に出会いました。

軽やかなギターが耳に残り、心地良いテンポで曲が始まります。
けれど、タイトルは「しけもく」。
一体どんな曲なのだろうかと思うたび、無意識に耳が声に向かいます。

※※※※※※※※

知ってたよ
これがいわゆる「普通」さ
また今日が始まって
また変われないよ
真っ赤なサイレンや 子供の笑い声
虚勢張った卑しさも許せはしない

※※※※※※※※

自分で許せない自分。そんな自分を変えたいと思いながらも、日々を過ごす内に日々は日常となって加速し、いつしか自身を顧みる心の余裕を失くして行きます。
「大人」という定義に振り回され、右や左に走り回り汗を掻いている内に、走っていない者を見つけては指を差すようになって行く。
走り疲れ、ふと立ち止まった瞬間にこう思うのです。

「あれ、俺って変わりたいって言っていなかったっけ?」

それを笑って流してしまえる者と、そうでない者。
笑って流して許せてしまう人間ならば、きっと叫び声を上げることは無かったでしょう。

これをスケール縮小させたある例えをしてみます。
これは僕が大好きな劇場版パトレイバー2のシーンのやり取りです。

警察内でも特別(お荷物)扱いされているレイバー部隊は基本暇を潰して日々を過ごしています。
ぼんやり釣りをしている第一小隊隊長後藤の下へ、小隊の新人がやって来ます。

「定刻を過ぎましたのでぇ……第一小隊に待機を引き継いで帰宅してもぉ……」
「そりゃいいけど、南雲さん(第二小隊隊長)がまだ戻らんしなぁ……」
「やっぱ……マズイですよね……」
「でも。ま、いいか」
「いいですか!?」
「いいんじゃないの? 俺も残ってることだしさぁ。あはははは」
「ははははは。じゃあ、失礼しまーす」
「はーい、ごくろうさーん。まったねー。…………良いわけないじゃないの」

笑っていた後藤隊長は、隊員が嬉々として去っていくと、突然つまらなそうな顔になってそうボヤきます。

「良いわけないじゃないの」

これです。パトレイバーでは慣れきった環境の中、ズルズルと「警察」という規律が失われて行く様子が良く描かれていますが、これは日常の中においても多かれ少なかれ見受けられる光景なのではないでしょうか。

「大人」という見えない服を着ているうちに、許せなかったはずの自分がいつの間にか許せるようになっている瞬間があったりします。
しかし、人生経験や憶測から自身を誤魔化してしまい(誤魔化すのが上手くなってしまい)、都合良く忘れようとする自分に気付く瞬間もあるはずです。
言い方を変えればこれ等は「変化」ともなり得る訳ですが、見方を変えれば「逃げ」とも言えます。

w-mの歌、その声の持つ叫びにはそんな聴き手のモラトリアムを刺激する力があると僕は感じています。
臭いものに蓋をして、いつか腐って朽ち果てたその存在が蓋の隙間から揮発して無くなってくれている事を願う自分。
そんな自分がその存在を腐らせてしまった事への罪の意識。そして、やがて来る罰から逃げ隠れしようとヤッケになる。罪はしっかりと、そこに置き去りにしたまま。
そんな自分に誰がした? 自分じゃないか。
その瞬間に沸き上がる怒り、悲しみ、絶望、虚無。それらがアイデンティティを叫ぶ声となり、外へと吐き出された瞬間に一つの音楽として世に放たれる。

理解や解釈はあくまでも僕個人のものですが、「激しい」「暗い」といった形容詞では収まらない、人間の奥深い心の目から見えた景色がw-mの音楽には感性として盛り込まれているのだと感じています。

・どんなシーンで彼の音楽を聴くのか?

それは人それぞれだと思いますが、僕は通勤中や、想像の世界へ自身をじっくりゆっくり溶かして行きたい時に聞いてます。
大枝たけちゃんの作品も、彼の音からインスピレーションを受けて作られた物もあります。

彼の音楽は決してメジャーなものではありません。
けれど、グランジロック、オルタナティブロックが好きな方なら聴いた瞬間に「お!」と思うのは間違いないです。
どこまでいってもマイノリティな彼の姿勢に、僕はいつも惚れ惚れしてしまいます。

本来であればライブハウスでの活動も行っていたw-mですが、こんなご時世なのでせめて!!カッコイイ彼の音楽を聴いてみて下さい。

ぐあああああああ!!という絶対的な感情の波に襲われたくなった日に、彼の音は間違いなくあなたを飲み込むでしょう。

深く大きく、壮大な感情の海。あなたは海の中で海月となって、何処へ連れ去られるのかも分からないまま、大きな波間で置いてけぼりにして来たいつかの自身と対話する事が出来るかも。

マイノリティ? 最高じゃないか! こんなにカッコイイ事をしている大人だっているんだぜ!
と、キッズ達に向かって僕は言いたくなります。

ライブハウスを筆頭に、自由な活動が一日も早く出来る事を願って!!

w-m。覚えやすくて良いですよね。
もう覚えたでしょ?
w-mはぶっちぎりの音楽、と覚えておけばOKです。



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