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いろいろな街に暮らしてきた。(その3)

今回は写真の道に進むべく、東京に再び出てきた27歳以降の話です。

2002年2月。再び上京しました。約半年振りの東京圏暮らし。勤務する写真スタジオが南青山にあり、最寄り駅は渋谷駅で、候補としては東横線、田園都市線、京王線、井の頭線でした。全線乗ってみましたが、田園都市線の多摩川沿いの部屋に決めました。田園風景が広がる景色の中で育ったので、視界が大きく開けた場所の近くで暮らすのが自然な流れでした。最寄り駅は東急二子新地駅。川崎市高津区。私の部屋から歩いてすぐに多摩川の河川敷があり、夏は花火大会が最高でした。

多摩川を渡ってすぐに二子玉川の街があり、週に何度も行っていました。今のような大きな建物も高島屋以外になく、のんびりした街でした。スタジオアシスタントを退職して以降はロケアシスタントしたり、個展のための作品制作をしながら高島屋のデパ地下でアルバイトもしていました。撮影の仕事が少しずつ入るようになると辞めてしまいましたが、大変お世話になりました。場所柄、多くの著名人が来店され、ミーハーだった私は浮足立ちながら接客していました。

二子新地には8年くらい住みました。エアコンと小さなユニットバスと小さなキッチンがあれば充分でした。小さなロフトがあり、高い位置にある窓は黒い紙(ケント紙)で年中覆い、雨戸を閉めれば昼夜問わずいつでも暗室作業が出来るように設えていました。28歳を迎える年の遅いスタートでしたので修行僧のように暗室をやりました。東京に友人や知り合いが少なく、デパ地下の他店で働く女性に声を掛けモデルになってもらい、河川敷でよく撮影もしました。煮詰まったり気分転換も兼ねて、よく土手沿いをジョギングしていました。

ある時、商社時代の同期が私の部屋に泊まった際、私の暮らしぶりを見て驚き、そして「これでもやっていけるんだ!」と少し元気になって帰って行きました。彼はその後退職し、四国で発足したばかりの独立リーグを観に原付バイクで向かいました。彼も紆余曲折を経て、今では社長業に忙しく、各地の球場を駆け巡っています。

この部屋に住んでいる時期は、色々な目標が形になった時期でもありました。個展の開催。書籍の表紙。著名人の撮影。目標としていた雑誌での撮影。他分野の作家やアーティストとの出会いもありました。少しずつ少しずつ、牛歩の歩みでしたが、希望に満ちた時代でした。そして同時にこの社会でどんな写真を撮っていけばいいのか、深い混迷に陥った時代でもありました。色んな意味で濃密な時代でした。

そんな状況の中、次の場所へ向かうことになりました。ちょうど二子玉川の再開発が急激に進み、自分にはトゥーマッチで楽しみにくくなったと感じていた頃でした。

新しい場所は、調布市でした。私の郷里の大先輩、水木しげるさんが長く暮らした街です。親近感がありました。最寄り駅は仙川駅。来たこともなければ、何の知識もありませんでしたが、この街に15年近く住んでいます。私が越してきた頃はまだのんびりした雰囲気がありましたが、今では人気の街となり、休日には多くの家族連れで賑わっています。小澤征爾さんの母校の桐朋学園大学や白百合女子大学があり、若い人も多く活気があります。私のヒーローでもあった絶好調男・中畑清さんも仙川在住でごくたまにお見かけします。

駅周辺は多種多様なお店があり賑やかですが、少し歩けば果樹園や畑があり、のどかな風景も散見されます。高い建物もほとんどなく、田舎者の私には優しい街です。少し歩けば成城や祖師谷の街も楽しめます。近隣のスーパーの駐車場には高級車が並ぶような富裕層が多い地域ですが、私には関係のない遠い世界で、私は自分と同じ年齢ほどの古いマンションに住んでいます。もちろんビンテージではなく、ただの古い集合住宅です。しかし何の不足も感じることはありません。お風呂もあるし、エアコンもあるし、暗室作業が出来る部屋もあります。仙川に移って2件目の部屋ですが居心地も良く、もうしばらくはここで暮らしてゆくつもりです。最近借りた市民農園も3年契約ですし。

今の場所に移ってから、少しずつ自分の撮るべきもの、やるべきことが絞れてきたように思います。まだまだ模索中ですが、日々試行錯誤を重ね、検証しながら、これまた牛歩の歩みで進んでいます。先日、暗室で仕上げたポートレートを被写体であるお世話になってきたギャラリストに渡した際、「まだ暗室やってるの!」と驚かれましたが、私は一生続けるつもりです。デジタルカメラを手放すことがあっても、フィルムカメラと暗室用品一式は手放すことはないでしょう。どんどん作品を収める印画紙の箱が増えていきますので、将来的にはもう少し広い部屋に越す必要が出てくるでしょう。

以上がここ15年ほどの場所の遍歴となります。
二子新地(川崎市高津区)〜仙川(調布市)ですね。

私の個人的な情報、まさに個人情報を公開している正気の沙汰ではありませんが、何かの参考にして頂けましたらと思います。次に住むなら暖かく、水がきれいで適度に田舎、そして畑ができる場所がいいなと思っています。イメージ的には静岡県三島市。海も近くて魚も美味しいでしょうね。

以上となります。
長々とお付き合い、ありがとうございました!





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