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全てはグッドゲームを追求するために〜Honda都田サッカー場が特別である理由

 本題に入る前に少しサッカー旅の移動手段についてお話します。

 読者の皆さまのサッカー旅の移動手段は公共公共機関を利用していますか?それともマイカーでしょうか?

 OWL magazineが2019年2月に創刊してはや4年目。過去の記事を読み直しているとき、ふと僕はあることに気が付いたのです。

 それは何かというと、OWL magazineのサッカー旅は90%の割合で公共交通機関を利用しているのです。その理由を考えると、旅の醍醐味を味わうアイテムである「お酒と食事」を存分に楽しみたいからだと思います。いや、ただ単にお酒好きの著者が多いだけなのかもしれません。

 移動中は睡眠を取って身体を休めたり、読書やSNSを楽しんだりと圧倒的に公共交通機関を利用した旅の方がメリットが多いです。マイカーでのサッカー旅は、どう考えても公共交通機関を利用することよりもデメリットが多い気がするのです。

  • 旅先までの長距離運転や見知らぬ土地での運転は日常の時よりも危険予測が難しく、事故を引き起こしやすい。

  • 旅先では有名な取締りエリアを知らずにスピード違反をする可能性も高くなる。

  • スタジアム周辺の駐車場が満車の可能性がある

こういった大小問わず色々な問題が起きた時点でサッカー旅自体が暗い思い出となります。

 このようなデメリットが多いにもかかわらず、僕のサッカー旅ではマイカーを使って各地へ出かけています。その理由はデメリットを上回る魅力があるからです。

 設定しているラジオやテレビの周波数が途切れた瞬間に湧き出る旅感覚。

 大好きな曲をボリュームを少し上げて聴いたり、「1人紅白歌合戦」と称して歌を歌いながら目的地へ向かう解放感。

 前後左右に走る車のナンバープレートが旅先地のナンバープレートばかりに囲まれた時や独特の運転マナーと遭遇した時に噛み締める「異国情緒」感。

 マイカーでサッカー旅する醍醐味は、車内は日常であっても、マイカーを包み込む非日常の風景を味わいながら運転する時間こそが魅力なのです。この魅力を堪能しながら僕はマイカーを見知らぬ道を走らせながらサッカー旅を続けて行きたいです。

浜松市内にて。
クセが強い看板に遭遇するのも旅の醍醐味

予定変更してでも観たくなったフットサル公式戦

 兵庫県神戸市から東へ約290キロ、片道約4時間ほどマイカーを走らせて静岡県浜松市へサッカー旅をしました。今回の主な目的は2022年度JFL開幕戦・Honda FC対FCティアモ枚方を観戦するためです。

 静岡県浜松市はサッカー旅を食べ尽くし、あちこちで「すたすたぐるぐる」をするのにはもってこいの観光地です。楽器産業や自動車産業などの視点から観光を楽しむのも良し!餃子やうなぎといった浜松グルメを中心に楽しむのも良し!観光ルートを考えるだけでも楽しい街です。

 僕の計画は1993年Jリーグ開幕前のサッカー雑誌を通信販売の広告まで読んでいた世代には共感してもらえるかと思います。このイラストに見覚えはありませんか??

サッカーショップ・浜松イレブン

そう、サッカーショップ『浜松イレブン』でサッカーグッズを買いに行く計画です。卒団式などで贈られる記念品グッズも取り扱う浜松イレブン。特別な思い入れはないけれど、一度は訪れたいお店です。もし静岡市へのサッカー旅であれば、サッカーショップ『GOAL』でミサンガとブラジルのレプリカユニフォームを買いに行きたい。

 しかし、ありきたりな計画です。そこで思いついたのが僕の人生の中であまり縁がなかったものに触れることです。

 僕は小中高校の授業の中で音楽が苦手というか、苦痛でした。まずは楽譜が読めない、音痴で歌いたくない。できる楽器と言えばアルトリコーダーだけ。中学校3年間ずっと好きだった吹奏楽部の女の子にフラれた。まぁ音楽とは縁がない。ここで一発、浜松市で音楽との縁を作り、苦手意識をなくそうと計画を練っていました。

 あれこれと計画している最中、OWL magazine 3月11日記事・五十嵐メイさん「3.11〜岩手県を訪れた私に、キヅールが教えてくれたこと〜【Short Letter】」の有料部で全日本フットサル選手権大会が浜松市で行われていることを知りました。この情報を知った瞬間、なぜか背筋が伸びてしまいました。

 なぜなら、五十嵐メイさんはOWL magazine編集会議の雑談中など、事あるごとに囁いてくるからです。

フットサルの公式戦を観に来てください。一度観るとハマりますよ。

 五十嵐メイさんは昨年フットサルに魅了され、Fリーグやフットサルをめぐるサッカー旅を始め、遂にはリトアニアで開催されたフットサルW杯にまで足を運びました。

 短期間でどっぷりと「フットサル沼」に浸かってしまっている彼女が紡ぐフットサルに関する記事は、回を重ねるにつれてフットサルの魅力をまだ知らない人へ伝えたいという想いがより強くなっていきます。それはただフットサルが楽しい・面白いと伝えていう作品ではありません。自らフットサル沼へ飛び込んで発見した魅力、飛び込んだからこそ見つけられた魅力を余すことなく詰め込んだ作品に仕上げて発信しているのです。

フットサル沼へ飛び込むぞと宣言した記事

 僕のフットサルの観戦歴は友人がプレーする兵庫県フットサルリーグの試合ぐらいです。神戸市に本拠地を置くFリーグクラブ・デウソン神戸の練習風景を傍目から見たことはありますが、試合は観たことがありません。

 せっかく訪れた浜松市で日本のトップレベルの公式戦を観る絶好の機会です。またOWL magazineの仲間が夢中になるフットサルを確かめに行こうと計画を変更し、全日本フットサル選手権大会・2回戦が行われる浜松会場へ行ってきました。

浜松アリーナ 駐車場代は200円

予告通りに突き落されたフットサル沼

 JR浜松駅から北東へ車で約15分、試合会場の浜松アリーナへ到着しました。サッカー天皇杯1・2回戦でも味わう感覚がフットサル界にもありました。

 Jリーグの試合を観戦する際、スタジアムが視界に入るとテンション上がりませんか?ゆっくり歩いているつもりでも無意識に早足になることもあります。しかし、サッカー天皇杯1・2回戦の場合はテンションが上がるというよりも、逆に「今日って天皇杯あるよね」と一瞬不安になった経験があるかと思います。

 この何とも言えない寂しい感じ、第27回全日本フットサル選手権大会の試合会場の外にもありました。なぜなら、浜松アリーナ1階では空手教室から「エイィィ~」と技を決めた大きな声が会場入り口で聴こえてきたからです。

 まるでネタふりのような不安な気持ち。その気持ちが大きければ大きいほど会場内へ入場した瞬間にして消え、目の前に広がるピッチがサッカー観戦する喜びへと変わり、気分が高揚していくことを僕は知っています。フットサルでも同じように味わえるとは思わなかったです。

同時刻に2試合が行われました。
浜松会場は一粒で二度おいしい!

 試合前のアップをぼんやり眺めているとフットサルとサッカーのプレースタイルが全く違うなと分かります。

 フットサルというスポーツは、一般的にサッカーのミニゲーム版というイメージがあります。オフシーズンにJリーガーがテレビ番組でフットサルをして楽しんでいるので、そのイメージが強いのかもしれません。しかし、フットサルとサッカーは似ているけれども全く別のスポーツです。

 まずシュートについて。
 サッカー選手は手数をかけてシュートを撃つのに対して、フットサル選手は手数をかけず隙あればシュートを撃っていくプレーをします。

 空いたスペースへの走り方も違います。
 サッカー選手はボールを受けるスペースを作りながら曲線を描いて走ります。対して、フットサル選手は最短距離を一直線に走ります。

 アップを観るだけでサッカーとの違いがはっきり分かって楽しいです。

初のフットサル撮影。一眼レフ初心者です。
一眼レフカメラって反射神経いるのかも!?

 フットサルの試合は1試合40分ゲーム、すなわち前後半20分間ずつ行われます。ハーフタイムを入れるとだいたい1時間ほどで終わる予定です。

これ、間違いです!間違いです!!間違いです!!!

 フットサル特有のスピーディーな試合展開に僕は無我夢中でフットサルを堪能しました。しかし、ふと「試合時間が何か長い」と思いました。僕の体内時計では20分がすでに経過し、前半はすでに終わっているはずなのです。しかしなかなか前半が終わらないので、それだけ濃密な試合展開なのだろうと思いました。

 前半終了のホイッスルがやっと鳴った瞬間、腕時計を見て唖然としました。

 キックオフから45分を経過しているからです。

 それもそのはず。フットサルはプレーイングタイム方式で行われ、ファールがあった場合やボールがピッチ外へ出た場合はその都度時間が止まります。つまり、インプレーのみ時間を計測されるのです。

一瞬の隙さえあればシュート!
とにかくドッカンドッカンと撃ちます!


 実際の試合時間が20分以上あり、スピーディーでかつ予測困難な試合展開が繰り広げられるフットサルは面白い。そして、脳みそが疲れる心地良さも感じました。この脳みの疲れは高校以来かも。口酸っぱく試合展開を読むように何度も注意されたことを思い出します。

 このフットサルの試合時間を誤っていことが判り、フルタイムまで観ると僕は旅のメインイベントであるJFL開幕戦のキックオフには間に合わないことに気がつきました。後ろ髪を引かれつつ、後半途中で席を立ちました。

 フットサルの試合は本当に面白い。五十嵐メイさんが常々考えているこの「フットサルの魅力」を伝えたい気持ち、十二分に分かります。なんで広まらないんだろうか。不思議で仕方がない。

 あなたの予告通り、僕はフットサル沼に落ちました。機会があればFリーグを観戦しに行きたいです。

リベンジ!Honda都田サッカー場が特別な理由を再び探しにきた

 浜松アリーナからメインイベントであるHonda都田サッカー場は車で約30分。浜松市民の運転は穏やかな印象を受けます。黄色信号の交差点を突き抜けるような無茶な運転と遭遇しなかったからです。交通ルールは日本全国同じなので、本来なら「郷に入れば郷に従え」のことわざがありません。それでも浜松市ルールに身を任せて急ぐ気持ちを抑えながら運転します。

臨時駐車場の案内看板
Honda FCマスコット・パッサーロがお出迎え

 僕は昨年行われた2021JFL開幕戦・Honda FC対ソニー仙台FCの試合で初めてHonda都田サッカー場を訪れました。 

 僕がまだサッカー旅の初心者だったころ、旅先で知り合ったサポーターの方々におすすめのスタジアムを聞いて回ったことが始まりです。Honda都田サッカー場を推す声が多く、各々が推す理由に違いがあっても、最後には「都田サッカー場だけは特別。行けばこの気持ちがわかるよ」と答えるのです。

 何とも言えないアントニオ猪木のような禅問答を解くために訪れたと言っても過言ではなかったのです。

 Jリーグ規格のスタジアムでなくても照明設備やメインスタンドに屋根が設置されていること、集まった歓喜の目が肥えていることなど色々と思い当たる点を見つけました。しかしながら、どれもスタンドに座って観戦するだけで解る表面的なものでした。

 「特別だ」という真意からすると、僕が見つけた特別感は浅いものです。本当に浅すぎる。だからこそ僕はカテゴリーを問わずたくさんサッカー旅に出かけなければと思い、今日この日まで各地へ足を運んできました。この点については昨年公開した記事で詳しく書きました。


 本来ならサッカー観戦は気負わず、心が赴くままサッカーとスタジアムを取り囲む情景も楽しんだほうが良いのはわかります。

 だけどここへ訪れた瞬間、たくさんのサポーターがこのスタジアムを特別に想う理由をやっぱり知りたくなります。

 旅とサッカーをテーマとするOWL magazineは月額700円(税込)で様々な角度からサッカー文化に関する記事をご堪能できることをお約束します!
 以下ではHonda都田サッカー場が特別である理由、グッドゲームの追求について語ります。1年かけてやっと分かりました。
 グッドゲームって何?ぜひご覧ください!!
ご参考価格
・Honda FCチケット代(大人):500円
・2022JFL公式ガイドブック:1,000円
・第27回全日本フットサル選手権大会
 公式プログラム:500円

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サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…

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