見出し画像

ひと夏の恋。ヨドコウ桜スタジアムの夏、天皇杯の夏。

バサッ。

副審がゴールキックの判定でレフリーフラッグを勢いよく上げた音。

ポン、シュルシュル。

ゴールキーパーが近くにいる味方選手にボールを預けるゴールキックの音。

ボォン、シュッ、シュル、シュルシュルシュル。

強くインサイドキックで蹴った芝生の上を走るボールの音。

「後ろ!後ろ来てるよ!!おい、来てるって言っただろ!!!」

タッチライン際でボールキープを失敗した選手に対して注意する声。

ドン、ドン、ドドドン。ドン、ドン、ドドドン。

「セレッソ頑張れ!」とメッセージを込めた太鼓の音とセレッソサポーターの手拍子がスタジアムの屋根に響いて聴こえてくる。

シュシャーーーーー。ガタンゴトン、ガタンゴトン。

サポーターが発する情熱の音を後押ししているのかどうか全く分からない、スタジアム脇を走るJR阪和線の電車が走る音。

「ウチの子ら、暑い中ほんま頑張って走るわ。」

「ほ~ら、きたで!いけいけ!いけ!!あぁぁぁ。」

マダムなセレッソサポーターの独り解説、歓喜する声と落胆する独り言。

これらの音すべては、2021年8月18日(水)天皇杯4回戦・セレッソ大阪vsサガン鳥栖の試合会場であるヨドコウ桜スタジアムで聴こえた音です。

今のご時世での試合観戦マナーとルールでは声を出す応援が禁止されています。致し方ない、心苦しいところです。禁止されていなかった頃でも、Jリーグに比べて観客動員数が少ないJFLの試合では上記のような音はごく普通に聴こえてきます。同じようにJリーグクラブ同士の試合でも観客席まで聴こえてくる選手や審判のプレーで発せらた音。これは、禁止されたことで良い意味で聴こえる音に新鮮味を感じる貴重な体験だと思います。

心地よいプレーする音が聴こえる。

そして、バックスタンド最前列には湿気を含んだ夏独特の芝生の香りが漂う。

そのようなヨドコウ桜スタジアムに僕はひと夏の恋をしました。


駒川商店街はセレッソ大阪を応援しています

仕事でもプライベートでも長居陸上競技場近辺を車で通ります。通るたびにスタジアムを横目で眺めて「かっこいいな」と思うけど、それ以上に思うことはありません。道ですれ違った美しい女性を見て思う感覚と同じです。なぜなら、そもそもセレッソ大阪のホームゲームを観たことがなく、観たいと思う魅力も感じなかったからです。

しかし、人は不思議ないもので、ちょっとしたきっかけで気持ちは変わります。

7月某日、僕は長居陸上競技場にほど近いところにある駒川商店街でうどんを食べに行きました。その時、この商店街を歩いているとアナウンスがふと流れてきました。

そのアナウンスは、セレッソ大阪の8月以降のホームゲームの告知でした。

それを聞いた瞬間、僕の視界の中に商店街の至る所でセレッソ大阪のポスターが急に入ってきました。「駒川商店街って、セレッソ大阪を全力で応援してたのか!?」と思うぐらいポスターがたくさん貼られていることに今更ながら気が付きます。そして商店街入り口付近には大きい垂れ幕があることにも気が付きました。

画像2

駒川商店街はセレッソ大阪を応援しています。

この商店街に来るお客さまは、世代的にセレッソ大阪よりも阪神タイガースまたはオリックス・バファローズに興味がある人の方が多いと思われます。それでも商店街から地元のセレッソ大阪を応援しようと呼びかける心意気は伝わっているはずです。たとえ「セレッソ大阪は知ってるで。サッカー知らんけど。」みたいな感じで認知されていたとしても。

この垂れ幕に込めた想いが込められていると僕は妄想してしまい、一人感動しました。

知らないことに対して感動すること、感動しただけに終わらせてしまうのは良くない。だから僕はセレッソ大阪のホームゲームを観に行こう。そう決意させたのは駒川商店街がきっかけとなりました。

ヨドコウ桜スタジアムを観察してみよう!

セレッソ大阪のホームゲームへ行こうと決意してから試合当日まで、意識的にセレッソ大阪の情報を避けました。

なぜなら、知り得た情報がいつの間にか期待する情報へと変わってしまうからです。実際に観る景色が情報と違った場合の落胆さは計り知れません。これは長い独身時代に参加した合コンで学んだ教訓です。

駐車場の入り口が見当たらず大きタイムロスをしてしまい、キックオフ10分前にヨドコウ桜スタジアムに到着しました。

ドンドンドンドン。ドンドンドンドン。

ゴール裏席からセレッソサポーターが打ち鳴らす太鼓の音が聴こえます。この音はセレッソ大阪の選手に向けて念を送っているに違いません。しかし僕には「早く席に着いて応援して!」と急かされるようにしか聴こえない。ごめんなさい。早く行きます!

画像3

でも、ちょっと待ってください!!

このゴール裏席の外観、シンプル・イズ・ザ・ベストな様式美に見惚れてしまうじゃないですか!屋根を支える柱が少ないってどんな構造してるの?すごく気になります。

僕が購入したチケットはバックスタンドです。ここからまだぐるっと周らないと辿り着きません。はい、急いで向かいます!!

ここからは、有料公開にさせていただきます。
OWL magazineでは毎月700円(税込)で個性あふれる執筆陣による記事を毎日読むことができます。
執筆陣には、OWL magazine代表の中村慎太郎、ノンフィクションライターの宇都宮徹壱さんの他、川崎フロンターレや鹿島アントラーズ、名古屋グランパス、北海道コンサドーレ札幌、V・ファーレン長崎、東京武蔵野ユナイテッドFCなどなど全国各地のサポーターが勢ぞろいです。旅とサッカーを紡ぐだけでなく、サッカーをより深く好きになる記事を発信中!
ご参考価格
・天皇杯4回戦・バックスタンド指定席・一般前売り 3,700円(税込)
是非、購読をよろしくお願いします!!

ここから先は

1,825字 / 7画像
スポーツと旅を通じて人の繋がりが生まれ、人の繋がりによって、新たな旅が生まれていきます。旅を消費するのではなく旅によって価値を生み出していくことを目指したマガジンです。 毎月15〜20本の記事を更新しています。寄稿も随時受け付けています。

サポーターはあくまでも応援者であり、言ってしまえばサッカー界の脇役といえます。しかしながら、スポーツツーリズムという文脈においては、サポー…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?