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拝啓 デニー知事 殿

一筆啓上つかまつります

 突然のお手紙お許しください。

    先日普天間基地移設に関する裁判で、最高裁判所が沖縄県側の上告を退けて裁判が確定し、県側の敗訴が確定しましたね。
 このため県側としては、あとは移設先である名護市辺野古の埋め立て工事を承認せざるを得ない状況になりました。
 そしてもしこの確定判決に従わなければ、国としては県の承認なく代執行せざるをえないという異例の事態にまで踏み込むこととなりました。

 ところがあなたは、なぜかその裁判のあとしばらく病気(?)と称して入院しましたが、すぐに退院して記者会見を開くや
  県としては工事を承認しないこと
  裁判には従わず徹底して争うこと
  裁判結果については特別抗告すること
等を述べ、一連の争訟について国側の対応を、沖縄県民の民意を踏みにじるものだと改めて非難されました。
    入院先で誰かと密談した結果だったのでしょうか。

     ある程度予想されていた対応とは言え、まさかあなたがここまでこの問題に執着されるとは思っていませんでした。
 このため国は代執行をせざるを得ない事態となって、事実その通りの結末となりました。

    まあ基地反対の姿勢で前回の知事選挙を制したわけですから、その民意を汲まなければならないというお立場も理解できます。
 ただ私ごとき市井の一国民が今さら申し述べることでもないかもしれませんが、日本は民主主義を前提とした法治国家です。
 そしてそれを最終的に法制面で支えるのが司法制度であり、日本では最高裁判所で確定判決となったものはそれ以上争いようがなくて、当事者はそれに従わざるをえません。
 それでもあなたがおっしゃったとおり、特別抗告という制度で争う方法もあります。
 ただしそれはが憲法解釈の誤りがあることをもってしてのみ許されるものですが、今回の判決のどこに憲法解釈の誤りがあるのでしょうか。 

 また特別抗告の結果を待たずとも、最高裁の確定判決で一応争訟は終わったものとみなされ、沖縄県がこの判決に従わず工事を承認しなくても国は代執行に移れるという状況は変わらなかったのです。
 つまり法的にはこの問題は事実上終了したわけです。
 それを
   裁判には従わず徹底して争う
とは、どういった争い方を考えているのでしょうか。
 まさか武力闘争とか考えているのではないでしょうね。
 それではまさに極左暴力集団と同じですよね。

 ただ沖縄県も日本国憲法で保障された地方自治を司る自治体のひとつであり、そのもとで県民から選ばれた知事や県議会など県民の代表の声も十分尊重に値すると思います。
 しかし憲法はその第99条で、この国に所属する全ての公務員に憲法尊重擁護義務を掲げております。
 つまり沖縄県知事といえども、この憲法の全ての規定を尊重して擁護する義務を負っているのです。
    一般の国民にはこのような義務は課せられていませんが、あなたは公選法上選出された特別職の公務員です。

 そのような立場にある方が、この沖縄の基地問題を通じて裁判所が出した最終判決を無視して工事を承認しないばかりか、特別抗告をするという行動はいかがなものでしょうか。
 最高裁の確定判決に従わないということは、憲法が定めた日本の司法制度を否定することにならないでしょうか。
     それって憲法が定めた憲法尊重擁護義務に反することにはならないのでしょうか。
 またそれもかかわらず、その司法制度にしがみつき特別抗告までするというのは矛盾していないでしょうか。

 あなたは、もう日本政府ばかりでらちがあかないとお考えになったのか、国連に出向いて沖縄の過剰な基地負担の問題を訴えたり、アメリカ国防省にまで出向き沖縄基地の再考を促すよう陳情したりしましたが、基地問題は外交問題のひとつでもあり、外交は国の専権事項であることをご存知だったでしょうか。
    当然国連やアメリカからもまともに相手にされなかったですよね。
 もうなりふりかまわず、この問題については何が何でも反対というお考えなのですか?

 そしてもうひとつ気がかりなのは、あなたは現在沖縄県の一部である尖閣諸島に対する中国の度重なる領海侵入等の事案については、一言も発しておりませんね。
    なぜですか?
 おまけに中国に出向いたかと思えば、沖縄の知事でありながらこの尖閣諸島の問題には一言も触れずに、何やら怪しげな笑みを浮かべてあちらの政府要人と会っている姿がメディアに流れましたが、何を話されていたのでしょうか?

 さらにあなたは先の知事選挙の時に、次のような驚くべき発言もしていますよね。

  沖縄のみなさん
  沖縄を日本政府から取り戻しましょう
  米軍から取り戻しましょう

 米軍から云々というフレーズは、過剰な基地負担にあえぐ県民に響く選挙広報文として考えたものだろうと理解できなくもありません。

 ただ
  沖縄を日本政府から取り戻しましょう
とはどういう意味でしょうか?
 まさか日本からの独立を考えているのですか?
 
 これまでのあなたの言動や行動を見ていると、私にはどうみても中国寄りの姿勢をとっているものとしか思えません。
 もしそれが本当で、仮に将来沖縄が独立して米軍が出ていった場合、すかさず中国が手を伸ばしてくることは明らかで、その場合中国との武力衝突が懸念されます。
 そしてそのような事態を招いた最初の要因を作った者には
   外患誘致罪
という恐ろしい刑罰が適用されることになることをご存知でしょうか。
 外患誘致罪とは
   外国と共謀して、日本に対して
   武力行使を誘発する行為
と規定されており、法定刑は死刑しかありません。

 つまりあなたは、外患誘致罪の犯人となる可能性があるのです。
 法定刑は死刑しかないのですよ。
 もし命がけで日本からの独立を考えているのであれば見上げた根性なので、そのことには一応敬意を表しておきましょうか。
     でももしそれが本当であれば、あなたはもはや知事などではなく、日本を危機に陥れようと画策している革命家でしかありません。
     お願いですからそのような自身の思想に沖縄県民、そして日本を巻き込むことはお止めください。

 そのようなことにならないよう、現在日本はあなたが何もされない尖閣諸島を必死に守っているほか、南西諸島方面にも逐次自衛隊基地を配備・増強して、在日米軍とともに中国の海洋進出に備えて、不測の事態に至らないよう準備しています。

 あなたの行動は、日本の国益に真っ向から反対するものであり、まさに中国に利する行動にしか思えません。
 まさか琉球王朝の復活と当時の朝貢国であった明(当時の中国王朝)との関係復活のようなことを夢見ているのでしょうか。
 それは甘いと思います。
 
 もし沖縄が日本から独立するとなれば、当然沖縄に軍事力の空白が生じますが、南シナ海の実情を見れば分かるとおり、必ず中国が進出してきて沖縄は中国領となり共産主義国となるのは火をみるより明らかです。
     沖縄県民はそのことを理解しているのでしょうか?
 私は沖縄県民ではありませんが、そのような人に県政のかじ取りを任せていいのだろうかとはなはだ不安でなりません。

 確かに沖縄は、先の大戦時に初の国内戦の戦場となって多くの県民がその犠牲となったという悲劇の歴史があることはよく知っています。
 だから沖縄県民には、その原因となった米軍が日本で最も多く駐留しているという現実は受け入れがたいし、それを容認している日本政府に対する不信感というものが根底にあるだろうということは想像に難くありません。

 しかし当時、その沖縄を守るためにどれだけ多くの軍人が、沖縄まで向かい犠牲となったかという事実も忘れないで欲しいと思います。
 沖縄戦では最も多くの特攻機が犠牲になっていることをご存知でしたか。
 戦艦大和が、その戦艦としての戦法を犠牲にしてまで沖縄に向かい、その途上敵飛行機大編隊の攻撃を受けて沈没したことをご存知でしたか。
 上陸した米軍基地に舞い降りて、その駐機した飛行機を破壊した捨て身の攻撃部隊がいたことをご存知でしたか。
 陸上部隊は徹底抗戦で米軍にかなりの損害を与えたことをご存知でしたか。
    沖縄県民のなかにも、鉄血勤王隊やひめゆり部隊のように、日本軍とともに命を落とした多くの若者がいたことをよもや忘れてはいないでしょうね。
    
 枚挙をあげればきりがないほど多くの日本人が沖縄のために命を捧げています。

 沖縄を単なる本土防衛のための時間稼ぎと捉えているのならば、あれだけ多くの犠牲を現場に強いらずによかったのではないでしょうか。
 沖縄を日本の一部だと思っていたからこそ、皆必死になって戦ったのではないでしょうか。

 そして日本はそのような悲惨な歴史と尊い犠牲のうえに、戦後アメリカと手を結ぶことを決断し、日米同盟という世界一強い安全保障環境を手に入れて平和を享受しているのではないでしょうか。
 過去の歴史と尊い犠牲のうえに今の平和があることを思えば、まず先人たちに感謝すべきことをお忘れではないですか。

 確かに日本は先に述べたとおり法治国家で、憲法によって
   思想・良心の自由
が認められています。
 だから、基地に反対する意見やその行動の自由も認められています。
 沖縄の過去の歴史を垣間見る時、現状に反対する人がいても不思議ではなく、当然それも個人の自由として尊重に値すべきかもしれません。
 ただ公的立場、つまり知事という職にある人がそのような立場を利用して個人の思想をメディアを通して垂れ流していいのでしょうか。
 憲法を無視していいのでしょうか。
 もしどうしてもそのような主張を続けたいのであれば、知事をお辞めになって個人の立場で活動したらいいのではないでしょうか。
    私はそのような活動であれば何もあなたに手紙など出しません。
    どうぞご自由に活動されてください。

 しかし今や、台湾をはじめ沖縄から南西諸島に至るまで、日本の安全保障環境は中国により脅かされています。
 敵はアメリカではなく中国になっているのです。
    アメリカの国益もあるかもしれませんが、この問題に日本とともに中国と対峙してくれているのはアメリカです。
 そのような現実を無視して、ただ米軍基地の反対だけを声高に主張するのであれぱ、先日たちの犠牲を無駄にしているばかりか、日本の国益を阻害しているだけです。 

 先の大戦時に沖縄戦の指揮官であった
   牛島 満 中将(戦死後大将に昇進)
という方をご存知ですか?

    その方は、その敗因の責任をとって沖縄の地で自決されました。
 そしてその辞世の句が、彼の出身地である鹿児島県鹿児島市の公園近くに建立されています。
 それは
   矢弾尽き 天地染めて散るとても
   魂(たま)還り 魂還りつつ皇国 
          (みくに)守らん

   秋待たで 枯れ行く島の青草は
   皇国の春に 甦えらなむ
というものです。

 昔の日本人はそのような思いで、沖縄を、そして日本を守ろうとしたのだということだけはどうか忘れないでください。

 以上これらのことをただただあなたに申し上げたくて、ぶしつけかとは思いましたが一筆したためさせていただきました。
 何度も申し上げますが、私はあなた個人の思想・良心がどのようなものであろうと、それは憲法で保障された不可侵の自由ですから何も言うことはありません。
 ただ公人、つまり知事の立場で
           裁判には従わない
と日本国憲法を無視するような発言をメディアの前でしたり、選挙で
           日本政府から取り戻しましょう
と、まるで日本からの独立を想起させるようなあなた個人の思想を披露することだけはお辞めください。
 著しく日本の国益を損ねます。
 もしどうしても今の主張を続けたいのであれば、知事をお辞めになってからにしていただきたい。

    以上、乱筆乱文にて失礼しました。
                                                               敬具

鹿児島市加治屋町甲突川沿いに建立された牛島満大将の生誕碑
碑の裏面に刻まれた辞世の句等


 



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