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【鉄道員から見たダイヤ改正】

毎年3月に実施されるダイヤ改正、利用者・鉄道好き目線から見ても、今年はどんな改正があるのか?と気になるところですが、それは働いている側から見ても一大イベントです。
現役時代、どんなことがあったか?記憶と共に掘り出してみました。

「ダイヤ改正が近づくと、上司も大忙し!」
ダイヤ改正の準備は半年以上も前から始まっているようですが、現場レベルでダイヤ改正が近づいてきたな…と感じるのは、2~3か月前ぐらいのことでしょうか。
概ね12月に世間に大きな変更は発表されますが、乗務員の場合はそれと時を同じくして、大まかな作業ダイヤの変更案がやってきて、掲示されていたように思います。
まあ、ふんふん…と眺めるわけですが、いくらなんでもこれはキツい仕事じゃないか!?というものは、この時に意見を吸い上げて、多少の調整をしてくれることもあります。
(とはいえ、全てが反映されるわけではないのが辛いところ)

そしてダイヤ改正2カ月ぐらい?でしょうか、そのころから内勤の上司がまあ忙しそうにし始めます。
さまざまなチェック事項があり、漏れがないか?手作業で一つ一つ確認していくので、なかなか尋常ではない作業。
ダイヤは決まっているものの、受け持ちの列車にしっかりと運転士・車掌は手配されているか?また、定められている作業内容に不備はないか?
新しい作業が発生する場合、訓練もしなければいけません。

この時期の上司は、まあ基本的に残業だらけ。当直勤務をこなしたあとも、夕方まで残るのはザラということもあり、負担は相当なモノでしょう。
(こんなのを見ていたら、出世はしたくないな~と、個人的に思っていました)
心なしか、ピリピリした雰囲気があったようにも思います。

「悲喜こもごも?ダイヤ改正またぎの勤務」
その時によって異なりますが、ダイヤ改正前後で、それぞれが受け持っている行路の内容が大幅に変更になることもしばしばです。
そんな時はどうするか?というと、いわゆる「変」行路というものになります。
通常は9時始業⇒翌10時終業、という行路であっても、そのダイヤ改正時は終了時間がお昼過ぎになってしまったり、逆に13時終了なのが、9時頃に終了という行路に変化してラッキーな行路に変化したりと、まあ行路によってバラツキが出てしまいます。

「ピリピリはダイヤ改正当日だけならず」
ダイヤ改正当日は、現場は(おそらく本社も)やはり独特の緊張感を持って迎えることになります。というのも、いくら事前にチェックを行ったからと言って、実際にその通りに上手くいくかどうかは蓋を開けてみないとわからないものです。
僕は幸いにして当たったことはありませんが、作業指示がスッポリと抜けていて…なんてこともごく稀にあったとか。

ではダイヤ改正当日を終えれば、それで平穏が訪れるのか?というとそうではありません。
乗務員に貸与される作業ダイヤには、実は4種類あり、乗務員の泊まり勤務の場合は「平日⇒平日(W行路)」「平日⇒休日(F行路)」「休日⇒休日(S行路)」「休日⇒平日(H行路)」という分類に分かれます。

それぞれに作業内容を明記されているため、まず改正当日のS行路、そして翌日曜日のH
行路、月曜はW行路、そしてしばらく間を置いての翌週金曜(祝日があればまた異なるが)のF行路…と作業内容の相違や抜けがないかのチェックは続くのです。

「運転士さんもびっくり??なダイヤ改正」
ダイヤ改正でやはり、様々なダイヤの変更があります。
中には優等列車の停車駅変更などもあったりします。

とあるダイヤ改正…こんなことがありました。
その改正をキッカケに、乗務担当していたとある特急列車の運転区間が延長となり、それと同時に停車駅が大幅に整理されました。
車掌からすると、停車駅が少なくなるのは車内改札に余裕を持てることもあり歓迎できること。おお!ちょっと嬉しいな~と思いつつ、ダイヤを見て気づきました。
あれ?所要時間は変わっていないぞ!

途中の乗降の多い駅での停車時間が多少増やされてはいるものの、それにしても、3駅も通過しているのに所要時間が変わらないというのは摩訶不思議です。

さて、その列車に乗務する日がやってきました。
途中まで快調に飛ばし、問題の区間。その日は遅れもなく、運転士さんはノッチを入れてかっ飛ばしていきます。
元々は停車していた次の駅手前、このままいくと2分近くの早通か…というところで運転士さんもそれに気づいたか?
思いっきり減速して駅を通過。
そこからは暫く、ノロノロ運転が続きます。(別に信号で落としているわけではない)
まるで観光徐行しているか?のような速度だが、残念ながら名所があるような区間でもなし。そのままユックリと走って、それでも次の停車駅には1分ほど早着で到着したのだった。
あとで訊いてみると、いや…あれはビックリしたよ~とのこと。
ダイヤに余裕が無さすぎるのも考え物ですが、いきなり余裕のありすぎるダイヤに変えられると面食らうでしょうね。
とはいえ、そういった要注意個所は口伝で乗務員間で伝えられるもの。
暫くたてば、何事もなかったかのように、スムーズな運転になるわけです。
因みにこの列車・区間では、途中通過駅のポイント制限を通過したあと、ほぼ力行せずに、下り坂の加速を利用してジワジワ速度を上げる…という運転方法で調整されていましたね。
重力エネルギーを使って運転できるようになり、ある意味エコになったわけです。


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