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雨粒羊羹(ショートショート)

 名前から勘違いされることも多いですが、雨をそのまま羊羹にしているわけではないので、安心してくださいね。
 この羊羹は、雨が降る時の気候を人工的に再現した施設で作られているんです。
 まず初めに、羊羹原料の液があって、それが雲になり、やがて雨粒のように降り注ぎます。
 そして地面。ここでは羊羹を受け止めるパッドですが、そこにその液が落ちることで、羊羹になるんです。
 ちょうど、雨粒と同じくらいの高さから落として衝撃を与えると、固形になる、特殊な羊羹の原料を使っているんですよ。落とす高さはだいたい二千メートルくらいですかね。
 ……え? そんなに大きな施設、見たことないって? それがですね、あるんですよ。
 様々な地域や場所の空間を、“もともとそれが存在しているところに置いたままで、繋ぎ合わせている”んです。
 別々の場所にある空間を継ぎはぎして、一本の、長い塔のような施設を作っているんです。そして、つなげた空間は元々あった場所から消えることはない。つまり、側から見ると、一瞬だけその空間に何かが現れてすぐに消える、みたいな現象が起きるわけです。面白いでしょう。
 そうして作った羊羹は、ころっとした丸い粒のような形になります。タピオカみたいに、抹茶オレの中に入れるのもいいですよ。
 もちっとした食感の中から溶け出す、ひんやりと甘い餡子の味を、ぜひ楽しんでください。


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