見出し画像

【お仕事回顧】成長した姫が故郷に帰還する物語

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

王道ファンタジーの世界観で和の国を舞台に、幼く甘えん坊だった姫様が成長して帰還するストーリーのシナリオ作成


期間

2017年4月~2017年5月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ストーリーシナリオ、キャラクター設定、ストーリープロット制作、ストーリーシナリオ制作、その他テキスト各種制作

資料

特になし

納品物

企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

概要

 剣と魔法のファンタジー世界を舞台に描くストーリーです。
 ひとことプロットは
「故郷を追われた世間知らずだった姫が、外の世界で成長し、国に帰って国難を払う物語」でした。

 ストーリーの軸は「内乱」型です。とある国を舞台に、国内で発生したクーデターや王位継承問題、政争などを展開する物語形式をイメージしていました。決まっていた事項は「帰る」物語であること。支配された国を救うカタルシスがあること。主人公の成長を描くこと、などでした。
 舞台となる国は初期の江戸時代の日本をモチーフにした、ファンタジー世界に存在する和風の国です。国の設定は昔から考えていましたが、実際に舞台とするのは初めてだったので個人的にもワクワクしながら書かせていただきました。

 キャッチワードは「神器」「東の国」「忠義」「和」「鬼」などを設定しました。和風ファンタジー、妖怪ものが大好きな自分としてはキャッチワードをイメージしただけで非常にシナリオを作るのが楽しみでした。

 描きたかった感情は「矜持」「忠誠心」。忠誠心を描くためには上下関係が必要です。国の時代設定は上述の通り、江戸時代初期のイメージだったので、国のトップである将軍家と、その将軍家に仕える武芸指南役の家の設定を深堀りしました(徳川家と柳生一族の関係性をモチーフにしました)。  描きたかったクライマックスシーンは、数々の試練を乗り越えてきた姫が成長を見せて国を率いるために、城の天守閣で啖呵を切るシーン。そこに至るための組み立てを工夫しました。

 キャラクターについて。
 主人公は舞台となる国を追われた姫です。姫がどうして国を追われることになったのか、は別のストーリーで描かれています。よければ合わせてそちらも見ていただければ嬉しいです。

 姫については、見た目ではなく境遇や設定などのモデルがいます。「覇王伝説 驍(タケル)」のタケルや、「アルスラーン戦記」のアルスラーン、あとは「三国志演義」の劉備です。「覇王伝説 驍(タケル)」は覚えている人いるんかな……?
 いずれも、国や居場所を追われた主人公が成長して故郷に錦を飾る展開を描いた物語になっています。FEのマルスなんかもそうですが、祖国や居場所を失うという強制イベントは、主人公を否が応でも成長させる要素になりえます。最終的な成長を描くために乗り越えるべき困難として設定されやすいシチュエーションかと思います。
 脇を固めるキャラクター達について明確なモデルはいませんが、「忠義」を描くために徳川家に仕えた剣術指南役の柳生家や服部家をモチーフとした武士の一家を設定しました。剣術や忍術など武芸百般を修めて、公私ともに将軍を補佐する懐刀、上下の関係性はありながら対等の相棒のような存在、といった関係性は個人的に好みです。

あらすじ

 内乱によって舞台となる国を追われてしまった主人公。将軍家の血を引く主人公が不在の間、国では内乱を引き起こした張本人である主人公の義姉が専横を振るっていました。将軍家に仕える武芸指南役の家は取り潰しになり、侍は野に下り、主を無くした忍びは不遇な扱いを受けながら義姉に仕えています。
 舞台となる国には国の興りから伝えられている4種の神器と呼ばれる宝が受け継がれていて、それらを全て集めれば侍や忍びは従わざるを得ず、国の全てを手に入れることができます。
 4種の神器を集めようとしている義姉。その暴挙を止めて、国を奪い返すのが主人公の目的となります。
 国では義姉の専横に怒る武士たちが大規模な反乱を企てていましたが、義姉によってその目論見は打ち砕かれ、武士たちは全滅の憂き目に遭います。  そこへ、主人公が帰還します。かつて泣き虫で頼りなかった主人公は、国外で力をつけ、仲間に助けられ、矜持を示し国の窮地を救い、真の意味で国へと帰ることに成功します。

感想

 和風の世界観が好きな自分としてはとても気に入っている一作です。
 日本に生まれた人間として和風の世界観はやはり血が騒ぐのか、武士言葉や外連味のある言い回しのセリフを考えるのがなにげに一番楽しかったです。都々逸の777や俳句・短歌の575のリズムは、文化の中でそれらを親しんできた我々のDNAに刻まれたリズムなのかもしれません。

 主人公自体が強くなくても、その魅力に惹かれた仲間が助けてくれるシーンは描いていて非常に力が入ります。これまで別のストーリーで登場してきたキャラクターが集合して主人公を助けるシーンは、古今どこでも使われていますが、色褪せないクライマックスシーンだと思います。

まとめ

 気に入っている一作、といいましたが、一方で反省点が多い作品となっています……。以下反省点。
 今後の展開の仕込みや最後のヒキ。ストーリーを転がす要素として4種の神器を奪ったり奪われたり……といった宝物の奪還要素を入れましたが、あまりわかりやすく構成できず、機能しなかった印象です。設定の作成やストーリーの構成に苦労した割りに効果が出なかったのは悔しいです。
 内乱について、なるべくシンプルにしたかったのですが、どこでどういう規模の戦いが起こっているのか、説明が難しかったです。漫画とかでよくある地図を表示してどこで何が起きているか表示する、といった手法が必要だな、とリリース後のチェックをしていて思いました。(後にこの反省は別のストーリーで改善されることになります)
 サブキャラクターの3人組の性格や関係性が非常に好きで、会話シーンや活躍シーンを楽しんで書いたのですが、そっちを楽しみすぎてメインの登場人物たちを食ってしまった感がありました。楽しむ自分を制御できなかった……!
 鬼と人の戦い、妖魔と人間の違い、といったテーマも描く予定だったのですが、入れたはいいけど消化不良になってしまった感がありました。要素を入れすぎて消化できなかったのは実力不足でした……。

印象に残っているシーン&セリフ

武士言葉や外連味のある言い回しを使ったセリフ


辞書とかちゃんと引いたら使い方間違ってるんだろうなと思いつつ、やっぱりこういうセリフ作るの楽しかった……。

主人公のために敵地に残る覚悟を語る
「此度は祖国の危急なり。
 姫におかれては、使命果たすを第一義とすべし。」
「……義を見てせざるは勇なきなり。
 勇ありて刀振るわざるは武士にあらず!
 シノノメの家に伝わる口伝だ。我らは常に将軍家と共にある。』
「さあ……かかってこい、骨共よ!
 死地にありて狂い咲く、乱れ桜を御覧じろ!!」

忠誠を揺らす忍びに対して脅しをかける義姉
「甘露のような情にほだされ覚悟の出来ぬ忍を飼っておくほど、
 わらわは寛大ではないぞ?」

侍キャラの言い回し
「背にある者を守るが侍。父を守れること、至上の誉なり。」
「先の戦いでは失礼した。此度は拙者、武士として貴殿と相対す。」

若かりし日を思い出すジジババ
「アンタもですよ、ジィさん。」
「あ……やっぱりワシも?」
「鬼が出ようが蛇が出ようが関係ないだろう?」
「この程度の敵、トウドの戦乱に比べたら可愛いもんじゃないか。
 ……ねぇ、ダンジュウロウ?」
「東の地を照らすがシノノメ。さあ、一仕事するよ、あんた達!」


天守閣で義姉に対して啖呵を切る主人公


二人称が「貴方、貴女」のキャラって気品があっていいですよね。

「……それは違います、クガイ。」

「……ほう?」

「貴女は言いましたね。私の旅は無駄だったと。」

「いいえ……無駄などではありません。
 今ならわかります。この光を得るために、私の旅はあったのだと。」
「私をトウドから逃した母上の願い、
 旅で出会った数々の人々。私をここまで連れて来てくれた仲間。」
「その全ての想いが、この光となって輝きを放っているのです!」
「ここまでです、クガイ。
 トウドを守りしこの力で、貴女の野望を打ち砕きます。」

「クッフフフフフ……。
 人と妖魔の戦いか。まさに神世の再現というわけじゃな。」

「繰り返し、繰り返し……。争いの輪廻は途切れぬ。
 これだから、現し世は楽しいの♪」

「今、参ります。母上……!!」


最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白ければぜひハートマークをポチり、お願いします。
ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?