見出し画像

【お仕事回顧】草原の国を舞台にした少年の成長譚

【お仕事回顧】この記事はなにか?
・ポートフォリオ的に見せるものです
・自分がスランプに陥ったときに振り返るお話の作り方の備忘録
です

公開許可を取っていないものもあるのでタイトルはボカしてあります
お話の作り方などを記載してあるのでネタバレがあります
(タイトル非公開なのでネタバレも何もないですが)


概要

草原の国を舞台にした少年の成長譚。全6作のシリーズ物のうちの1作目


期間

2019年4月~2019年6月

依頼元、依頼経緯

ゲーム制作会社、リピート依頼

関係者

企画窓口担当の方、打ち合わせ無し

仕事内容

ゲーム内で展開するストーリーのシナリオと、その他必要な資料の作成を行いました

資料

特になし

納品物

企画大枠、キャラ設定、ストーリープロット、シナリオ、キャラボイス台本

ボリューム

60分尺のアニメくらいのボリュームをイメージ

時系列

各ストーリー依頼→作業→納品

概要

 ひとことプロットは
「草原の民である男の子と女の子が、英雄の死を乗り越え草原の国の自由と
 誇りを守る物語」でした
 全6編のシリーズ物の第1作目に位置する作品です。シリーズ全体の構成が大まかにしか決まっていない状態だったため、フォーマット作り含め、かなり手さぐり状態で進行しました

 決まっていた事項は「歴史上、活躍した英雄がいた」「英雄が死んだ後に異形となって襲ってくる」の2点くらいでした

 ストーリーの軸は「ボーイミーツガール」。主人公が好きな女の子のために頑張る王道のストーリーラインを目指しました

 設定したキャッチワードは「草原」。キャッチワードから発想する形で様々なキーワードが生まれていきました。草原の民、ゲル、ゲルに飾る表札のようなアイテム、馬乳酒、多くの部族、精霊と巫女、などなどなど。草原の国、草原の民の設定はゲーム内に元からあり、愛着がありました。この国を舞台にしたストーリーをいつか書いてみたいと思っていたので、設定を深掘るのはかなり楽しい作業でした。サェンバ

 主人公の男の子はとある草原の部族の生き残りです。英雄に憧れるけど臆病者でうだつが上がらない。でも、いざという時は好きな女の子のために頑張る秘めた胆力があります。女の子は精霊とコミュニケーションができる不思議な力を持った少女。現代だと電波と呼ばれて敬遠されるタイプなのかなと思います
 男の子は好きな女の子のために、臆病な自分に向き合ってそれを克服していきます
 若い2人には様々な意味での「新世代」という特徴をもたせました
 登場人物が新キャラクターばかりになってしまい、作品にインパクトが足りない印象だったため、キャッチーな名称と設定を持ったキャラを助演の登場人物として、主人公の2人を成長させるためのメンターとして配置しました。敵キャラも主人公にトラウマを与え、乗り越えるべき対象として設定し、主人公たち以外の登場人物はすべて主人公たちを成長させるピースに設定しました

 2人が憧れる英雄がいます。英雄のモチーフはモンゴル帝国を築いたチンギス・ハーンです。部族をまとめるカリスマ性と、急速にモンゴルを統一した強さをイメージしました。また、キャッチワードからの連想で、英雄が巨大な狼を従えて戦うシーンをイメージしたため、巨大な狼ダイアウルフを相棒として設定しました。英雄の口調やセリフ回しなどは、英雄っぽさってどんなだ? と悩みながら、いろんな作品の英雄像を参考にして作成しました

あらすじ

 舞台は遊牧民が暮らす草原の国。部族同士が争う戦乱の時代を迎えています。主人公は勇敢な部族の生き残りの少年です。主人公は、精霊を見ることが出来て会話ができるヒロインにほのかな恋心を抱いていました。一族の戦士としては少々情けないところがある主人公はヒロインになかなか想いを伝えることはできません。
 ある日、主人公とヒロインは草原で怪我をした巨大なダイアウルフと出会います。ダイアウルフは草原の国の統一を目指す英雄の相棒でした。ヒロインの不思議な力を見初めた英雄は、ぜひ自分の嫁に、とヒロインに求婚してしまい、主人公は驚きと危機感を覚えます。英雄との出会いにより、主人公とヒロインは草原の統一戦争に関わっていくことになります……。

感想

 書きたかった感情は「弱さ」「弱さを乗り越えた強さ」「恋愛感情」です。不変的で当たり前の感情ですが、草原の国というお国柄や、戦時中という時代感、キャラクターの設定を乗せることで無二の「らしさ」が表現できたと思います

 「英雄が死を迎える」「英雄が草原を統一する」の2つは歴史の時系列的に矛盾していたので(死後に草原を統一することになる)それをあえて利用して「英雄は志半ばで死ぬが、名前を継いだ何者かが英雄の志を受け継ぐ」という流れを作りました。「影武者 徳川家康」ですね。懐かしい
 英雄が無敵の実力者、という無茶な設定にしてしまったため、死をどういう形で迎えさせるかにめちゃくちゃ悩みました。英雄の死は秘したままにしなければならないため、戦場に知れ渡るような豪快な討ち死にができません。暗殺のような形にせざるを得ず、かといってたやすく暗殺されるようなボンクラではないので、最終的に優しさにつけ込んで背中を刺される形にしました。なんとかまとまって胸をなでおろしたのもつかの間、この「英雄が死を迎える」シーンがシリーズのお約束となるため、毎回苦労することになります……

 今回のストーリーはシリーズ全体の試金石でしたが、単体で楽しめる形にもまとめました。反省点としてはシリーズ物ということが伝わりづらかった点かなと思います。プロモーション等で解決するべきかもしれませんが、ストーリー内で工夫できる点がまだあったかなとは思います

 キャラクターの会話がポンポンとテンポよく生まれて、とても楽しいノリのストーリーでした。途中から「ラノベっぽいな」と思いながら、キャラクターたちが話す会話をシナリオを書きながら楽しんでました。草原の国ならではの挨拶、考え方や文化など、ならではのシーンがたくさん書けました。まさかこの硬派な世界観の作品で「女の子が着替えをしているところに間違って男の子が飛び込む」シーンを書くことになるとは思わなかったです。
 ラストシーンで男の子に告白させる想定ではいましたが、手段は思いついておらず、教科書通りの「好きだ」「私も」のベタなやり取りを絶対避けたい、という意思の元、ラストシーンを書きました。精霊という小道具を使った、個人的に好きな告白シーンのひとつです

 全6編の別のストーリーで、主人公の男の子が成長した姿を描けました。伸びしろがあるキャラクターを書くのは非常に楽しいです
「草原」というキャッチワードをずっとイメージしながら書いていました。セリフの1つずつ、行間の1つずつに風が吹き抜けるような、爽やかな読後感が味わえるストーリーを目指しました

印象に残っているシーン&セリフ

英雄の今際の際、相棒の狼に語りかけるシーン

「テリオス……。共に……走ってくれて感謝する……兄弟。
 そなたの背は……心地いいな。
 いつも……風の音が聞こえる……。
 俺に……とっては……。
 この世の……どんな土地よりも……。
 心が安らぐ…………草原だ……。」

ラストの告白シーン

「伝わってる。ずっと前から。」
「……へ?」
「セルジュクの精霊さんは、
 いつも素直で、まっすぐだから。
 他の人の求婚なんて、受けないよ……。」

最後まで読んでいただきありがとうございました!
面白ければぜひハートマークをポチり、お願いします。
ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?