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負けない力(著:橋本治) 読書感想文

負けない力(著:橋本治、大和書房、2015)

「“分からない”と言ったらバカだと思われるかもしれない」という危惧はあるにしろ、「とりあえず、相手に対して自分はバカだ」という負け方をしてしまった方が、トクではあろうと思います。少なくとも、「自分はバカかもしれないと思って腰を低くしてるのに、その相手を本気でバカにしているこの人は、たいした人じゃないな」ということだけは分かります。
お忘れかもしれませんが、知性は「負けない力」です。「負けない力」を本気で発動させるためには、「負ける」ということを経験した方がいいのです。負けることをバカにする人に、ろくな知性は宿りません。

一度「負け」を認めてしまう より


例えば学校の授業でも質問があったら遠慮なくと先生から言われても誰も手を挙げなかった。そして私は授業後こっそり先生に尋ねたものである。「分からない」のが気持ち悪かったからである。だいたいの場合は先生は喜んで質問に答えてくれた。自分は後輩に対してそのことができていた(る)だろうか。たいしたことない人にはなりたくない。

「根拠」を求めて「他人の言葉」を探し出して来ても、「これは自分にとってどういう意味を持つものなんだろう?」と考えなければ、自分の役には立ちません。「他人のものは他人のもの」で、それを「自分のもの」にするためには、「自分のものに変える」という行為が必要で、「根拠」は自分で作るものなのです。

「根拠」は自分で作る より


果たして自分はこの本を読んでこの著者という他人の言葉を自分の言葉に変えられることができるのだろうか。

そして、著者は、日本人の「自分」というものは「自分の中」にではなくて、「自分の外」にあると言う。
だから自分なりの考えをみんなに言うと引かれたり、理不尽ないじめが起きたりする。
なぜかといえばそれは「正解というのは自分で考えて出すものではなく、外のどこかにあって、それを当てに行くことが“考える”ということだ」と近代化が進んでからの考え方があるからであり、すなわちそれは「長い物には巻かれろ」ということであり、「さっさと正解を当てて勝者になれ」という教育の基本トーンなのである。
これが「空気を読む」ということである。
自分はこの「空気を読む」という日本の体質がどうも嫌いである。

しかしこうした「今までの考え方」を変えるのは非常にむずかしいはずだ。だから著者はこう言う。

「「考えることの根本にあるもの」を考えてみたらどうでしょう?つまりは「知性」のことですが」と。

では知性とは何か。
一つは知性とは、他人に知性があるとジャッジする能力であるということ。例えばあの人は頭がいい、盲点をつかれた、鋭いことを言われたと経験したことはないだろうか。
一つは「答え」ではなく「問い」を見つけるということである。
もう一つは「モラルとかマナーというようなもの」つまり「謙遜する」ということである。
そして「「勝とう」と考えるよりも、「負けない」と考えること」すなわち「負けない力」である。
だが人間はそれを持つのが下手だ。なぜなら「不安」があるからである。
ではどうすればいいか。「悲観的であるような方向に落ちて行きながら、最後の最後に方向を“楽観的”の方向にグイッと変えるのが必要だ」と著者は言う。つまりそれこそが「ものを考える」ことなのだと。
「なんかへんだな?」と考える。それが大事なのだ。

私はこの本を読んでこのままだとやばいんじゃないかと自分自身への危機感を改めて持った。

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