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人生相談 谷川俊太郎対談集(著:谷川俊太郎) 読書感想文

人生相談 谷川俊太郎対談集(著:谷川俊太郎、朝日文庫、2022)


谷川徹三さんの言葉、

俊太郎が完全に人間になったのは、詩を書きだすようになってからだろうね。

こんな言葉親からもし言われたら絶対に嫌だ(笑)。

ぼくはずいぶん長いあいだ漂泊したが、(記者に)漂泊から立ち直って落ちついたのは、家内と会ってからですよ。そういう点でぼくは家内との出会いに感謝しているんですけれどもね。「一人でいる」生活が生活の土台として自分にはどうしてもなくてはならぬ、しかしその「一人でいる」生活を現実の生活のうえで支えるものは、「二人でいる」ことだというふうに思ったのですね。こういう若いころの気持ちはその後長いこと忘れていたが、六十をすぎてから、もう一度その気持ちがひじょうに切実になってきた。老夫婦の気持ちというんでしょうが、そういうところは俊太郎の考え方に近いかもしれない。


この谷川徹三さんの言葉が後の対談相手とのやりとりにも響いてくる。


外山滋比古さんとの言語論、鮎川信夫さんとの書くことについての悩みにも深い感銘を受けた。


鶴見俊輔さんの言葉、

つまり、わたしは子どもをそんなに保護したら子どもにとってもよくないと思う。わたしの親父なんて、もしわたしが保護を求めていったら、もういくらでも保護してくれる人だった、依怙贔屓でね。そのことの子どもに対してもつ恐ろしさ。だから、わたしとしては子どものために長生きしてやりたいなんて思うことないですね。

意識がもう殆どゼロになったときにも見栄が残るんだ。それはやっぱりそれを守り切れるように努力すべきではないのか。最後にはそれが崩れて終わるんだけども。それを守り切れる程度の領域はこれだっていうことを、いくらか知って老人のまわりにいる他人が助けてやらないといけないんじゃないか。それは子どもの発達に似てるんじゃないかな。

谷川俊太郎さんの伯母が心筋梗塞で入院している。父谷川徹三さんも行く。伯母に一言「どうですか」と言ったらまわりの付き添いとか患者とか全く無関係に雑誌を読み続ける。ぶきっちょで何話していいかわからないから。こういう徹三さんの面は俊太郎さんの成長にも大いに否定的に関わっている。

そして夏目漱石に認められて小説家になった野上弥生子さんとの対談。なんとこの対談当時野上さんは95歳。しかし、言葉に関する知識が豊富すぎて唖然とした。

俊太郎さんの息子谷川賢作さんの最後の対談も面白かった。やはりそこでも話題の一つに上がったのは「老い」についてだった。

谷川徹三さんの実感、鶴見俊輔さんの耄碌論、実際に老人として活躍する野上弥生子さん、三人の生き方が僕の中でつながって突きつけられている気がした。

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