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脚を外に開くって?②(股関節外転②)背臥位編

前回の横向き(側臥位)での股関節外転を取り上げました。
今回は、新人のとき老健でよくやっていた(私だけですかね?(笑))背臥位での開排運動について書いていきたいと思います。

【股関節外転・外旋筋】

1年目のときは、外転筋とひと括りにしてたことを覚えています。
起始停止も違うし、作用も少し異なってきます。

【開排運動で何が働くの?】
松本らの研究において、股関節開排運動中の筋活動は以下の通りです。
大腿筋膜張筋:77.8%
大殿筋:84.7%
中殿筋:52.8%
縫工筋:103%

狙ってた中殿筋と違うところがよく働いてた‼️となったりしました。
そもそも自分はどの筋をターゲットにしてたんだろう?と考えましたね。
これは、そもそも動作を見て分析することができてないことがいけませんでした。
機能障害を見つけて(証拠を集めて)、問題点(犯人)はどれなのかを見定めていないことに問題がありました。
【座位では?】
世古らは、股関節の異なる位置(外旋位、内旋位、伸展位)での大殿筋と中殿筋の筋活動について調査されています。この結果によれば、外旋位では大殿筋の活動が最も高く、内旋位では最も低かったことが示されました。一方、中殿筋の場合、外旋位でも内旋位でも伸展位でも、比較的一定した活動が見られました。
座位も背臥位も大殿筋を狙うエクササイズなのか?と思いましたねー(笑)
【開排運動で何を狙う?】
上記の論文だと、この動きには二関節筋のover useの可能性を秘めていて、狙いは大殿筋、大腿筋膜張筋、縫工筋になると思います。

【そもそも大殿筋・中殿筋が働くのは?】

  1. 大殿筋の各股関節運動方向における筋活動量は、以下のようになります:

    • 上部:伸展外転方向 111% > 伸展方向 100% > 外転方向 78%

    • 下部:伸展外転方向 105% > 伸展方向 100% > 外転方向 14%

  2. 中殿筋の各股関節運動方向における筋活動量は、以下のようになります:

    • 前部:伸展外転方向 109% > 外転方向 100% > 伸展方向 94%

    • 中部:伸展外転方向 100% ≈ 外転方向 100% > 伸展方向 54% > 屈曲外転方向 48%

    • 中殿筋は、前部線維が伸展外転方向で最も活動が大きく、中部線維は伸展外転方向と外転方向で同程度の活動量が認められました。
      【基本動作と中・小殿筋】



中・小殿筋(gluteus medius muscle)は
歩行における機能は重要で、歩行中において身体の重心を支え、安定させる役割を果たします。特に、片側の中殿筋が収縮することで、反対側の骨盤を持ち上げ、平衡を保つのに役立ちます。これは、歩行中における体重移動や一歩踏み出す際の安定性を確保するのに重要な役割を果たします。
方向転換などでも支持するときに働くとされています。
【クライアントの陥りやすい戦略】
開脚動作では、通常骨盤が動くことなく動作が行われます。クライアントは、大殿筋などの外転・外旋筋がうまく使えないと、以下のような代償が生じます。

  • 体幹での代償:骨盤を回旋させることで代償

  • 足関節での代償:足関節回外で下腿を外側傾斜させることで代償

  • 股関節での代償:反対側の股関節の外転で骨盤を回旋させることで代償

  • 骨盤での代償:骨盤を前後傾させることで、使用する筋を変更して代償

【開排動作で殿筋を鍛えるためには(臨床推論)】
まずは、開排動作に入る前を評価していきます。

①背臥位の評価
・矢状面:脊柱の湾曲や下肢の屈曲伸展を評価します。
・前額面:頭部の傾斜、肩の左右差、肋骨角、腸骨稜の高さ、
     ASIS(上前腸骨棘の高さ)
・水平面:頭部、胸郭、骨盤の回旋を確認。
    (回旋は各パーツの相対位置で確認してみてください。)
今回の注目点は骨盤の回旋です。

②背臥位が評価できたら、クライアントに両膝を立ててもらいます。
そして、骨盤の回旋を再度評価してみてください。
骨盤の回旋方向が背臥位と反対になっていたら、下肢の制限・マルアライメントが原因の可能性があります。 → ROM-Tなどで下肢を評価
骨盤の回旋方向が背臥位と同一方向の場合は、体幹に責任部位がある可能性を考えます。 → 体幹の評価(膝立て位へ)

③膝立て位から左右へ下肢を倒してもらいます。
クライアントに膝立て位で下肢を左右に倒してもらい、下肢の傾斜角度を見てください。そして、下肢が倒れる量が少ない方を制限と考えます。
制限のある方向と②の骨盤回旋方向が反対の場合は、下部胸郭に原因があると考えて評価を実施していきます。
制限のある方向と②の骨盤回旋方向が同一方向の場合は、骨盤に原因があると仮設して評価・介入を行います。

体幹の非対称性が取れたら、膝立て位で開排運動を分析してみましょう。

いざ!開排運動(背臥位膝立て位での股関節外転)へ

この代償を見逃さないようにしましょう。

骨盤動揺が見られた場合は、回旋方向、前・後傾を見てみてください。
両手をASISにおいて評価してみてください。
・傾斜:前傾することで梨状筋などの走行を変化させて、代償することが可能です。後傾も動揺に骨盤傾斜を変化させることで、目的と異なった筋を使って代償しています。この場合、骨盤の代償を消すか、低負荷する必要があります。
・骨盤回旋:上肢が押しつけてないかを確認してみてください。この場合、外転筋の筋力低下か、体幹の安定性低下を考えていく必要があります。背面筋の代償を考慮して、前にならえをしてもらい代償を抑制して再度開排運動を行ってもらってください。同側回旋が生じる場合で体幹に問題がある場合は、反対側の下肢をあらかじめ倒しておくとCWの活性化で代償が減ると思います。このときは体幹へ再度介入を考えていきます。

反対下肢:反対側下肢を外転させずに保持してもらうように指示して保持できない場合は、反対下肢の外転を行うことで、骨盤を同側回旋することで大腿を反対へ動かす代償を行っている可能性を考えます。
この際は、「反対の足は倒さないようにしてください」と指示して見てください。出来なければ、代償を抑制した状態で開排運動を行ってもらってください。

下腿:一見外転筋を使えているように見えている人も「踵の内側を浮かさないようにしてください」と指示すると途端に抵抗が弱くなる人がいます。そのときは、股関節外転筋を足部回外筋で代償していることが予測されます。
このときは、代償を抑制した開排運動を行ってもらいます。

【最後に】
老健で働いていたときは、周りもやっているので流されてやっていたことを思い出します。我ながら恥ずかしいです。笑
フローチャートにしてみました。分析なども兼ねています。日々の臨床の一助になればと思います。

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