竹美(タケミ・ガ・ミエタラ・オワリ)

ゲイでパヨクで映画ファンです。ベスト映画は『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』です。日本映…

竹美(タケミ・ガ・ミエタラ・オワリ)

ゲイでパヨクで映画ファンです。ベスト映画は『皆はこう呼んだ「鋼鉄ジーグ」』です。日本映画では木下恵介監督が好きです。 「映画パンフは宇宙だ」に参加、Fan Zine 『Us[アス]』を担当しました。 https://pamphlet-uchuda.com/

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映画から眺めるインド社会④ 炸裂する母親パワーと息子

※書き始めたら長くなってしまったので、関連する作品を先に挙げておく。 『バーフバリ 伝説誕生』『バーフバリ 王の凱旋』(テルグ映画) 『サラール』(テルグ映画)※祝7月日本公開! 『Rocky and Rani ki Prem Kahani』(ボリウッド映画)※日本未公開 『Kumari』(マラヤーラム映画)※日本未公開 『RRR』 『Heeramandi』 『Bhoothakaalam』(マラヤーラム映画)※日本未公開 『マダム・イン・ニューヨーク』(ボリウッド映画)

    • 竹美映画評98 加害性と悲劇性が交差する 『スケアリー・アパートメント』(”Malasaña 32”、2020年、スペイン)

      本当に映画を観る体力すら落ちて来ている気がする。ものすごく暑い。 とは言えなんか見ようと思ってスペイン・ホラーの『スケアリー・アパートメント』を観た。前半は、どこかで観たような気がする描写の畳みかけをスペインホラーらしい「影」で表現していて、まあまあかなと思っていたが、後半、怪異の正体が分かってからの流れは、2024年の今、全く違う地平も見えて来て奇妙な感動と困惑が残った。 あらすじ: 1976年。農村から都市マドリードのアパートに引っ越してきた一家。慣れない都会生活とあ

      • 異文化パワーに圧倒されていよう ~『バジュランギおじさんと小さな迷子』の再上映に寄せて~

        乗れなくて困った『バジュランギおじさん』 私が観たのは、2019年の最初の方、インド人の彼氏と一緒に観に行った。彼は既に母国で観ていて好きだと言っていて、やっぱり見た後彼の目からは涙が出ていた。 私はこの映画観ても泣けなかった。何故なのか未だに分からないが、きっと、びっくりするようなことが一つも起こらない映画だったからではないかと思う。老け込んだものだ。 現地の人ですらひどく心を動かされているというのに…。 そして時は流れ、インドに住み付いた。 最近のボリウッドがこ

        • 映画から眺めるインド社会③ LGBT∞が連帯し得ない地平

          今回のテーマは、LGBT∞という集合体の虚構性が見えて来てしまってつらい私のお気持ち表明と、文句である。 インド映画において、LGBT∞は様々に表象されて来た。むしろ「こんな大胆な表現があったのか」と驚かれる程である。その長い歴史については書けないが、現状、欧米仕込みの虹のパワーで皆が幸せになれるという物語に共鳴しているボリウッドと、同性愛者を公言した監督リトゥポルノ・ゴーシュを擁したベンガル映画が突出しているため、他の言語圏での様相は偶然見つける程度(例えばテルグ赤色映画

        映画から眺めるインド社会④ 炸裂する母親パワーと息子

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        • インド映画日記 ~きっと、何かある~
          52本
        • 竹美のホラー映画論
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          ホラー映画から見る現代社会④ 身体から脱走するSF、身体が追って来るホラー

          昨今、同性カップルの子育てというトピックが日本でも目に入るようになってきた。 私は、自分の遺伝子が残ろうが残らなかろうがどうでもいいという価値観を持ったゲイ男性に育ってしまった。小鳥たちと彼氏とインドで過ごしていていればもう充分! 一方自分の遺伝子を保持した存在を慈しみたいという欲望を生きる性的少数者男性もいる。無責任リベラリストの私は、好きにやればと思っていた。しかし、代理母出産への批判や、性別移行に関する様々な意見を読むにつけ、これは身体という越えがたい事実と絡んでい

          ホラー映画から見る現代社会④ 身体から脱走するSF、身体が追って来るホラー

          ホラー映画から見る現代社会③ 弱者は「外」を恐れ「内」に籠る

          ホラー映画で私がとても気に入っている部分は『隠しておきたいほど恐れている秘密』とその暴露のプロセスだ。自らの心に蓋をし、鍵をかけて鍵を隠したり(なぜか捨てない)、井戸を埋めたり、扉を塗り込んで壁を作ることで、あまりに苦しく恐ろしい過去を振り返らないようにする。 封印した本人はそれを忘れることができず絶えず暴かれることを恐れる。何かを恐れるとき、人は弱くなる。過去は幽霊だから、人に憑いて心を弱らせ、「弱者」にしてしまうことがある。ホラーというのは、人をとことん追い詰めて弱者に

          ホラー映画から見る現代社会③ 弱者は「外」を恐れ「内」に籠る

          竹美書評 傷つくべきは誰なのか Abigail Shrier著『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters』

          皆の死者の書 上記の投稿から三か月が過ぎた。やっと英語版で『あの子もトランスジェンダーになった…』を読むことができた。 私なりにここ数年アメリカの映画やドラマや事件をウォッチしてきて思っていたことが本書の中で語られていた気がして面白く感じた。 また、松浦大悟が3年も前に『LGBTの不都合な真実 活動家の言葉を100%妄信するマスコミ報道は公共的か』の中で既に述べたことを一次資料で裏付けるような感じもあった。彼にアメリカ映画、特に本書のような若者の問題を扱った作品について

          竹美書評 傷つくべきは誰なのか Abigail Shrier著『Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters』

          竹美書評 「思想転向」を訂正する(東浩紀『訂正する力』(2023年)朝日新書)

          思想転向。思えば私はこの言葉に30代を支配された気がする。 20代、まだ学生だった私に、左翼思考は今後の学問の世界では受けないから、という表面的な理由ではあったが、「思想転向しなさい」とアドバイスを下さった先生の言葉は強烈だった。そっか!私は左翼なんだ!そしてこれでは今後の世界を分析できないんだァ!と2006年頃に思い知った私は、色々な本を読んで分かりやすく左翼的思想を「嫌い」になろうとした。が、嫌いにはなれても、その思考から脱することはできないのだ! その頃に、伏見憲明

          竹美書評 「思想転向」を訂正する(東浩紀『訂正する力』(2023年)朝日新書)

          竹美映画評97 サブコンテクストも美味。インドホラーの新しい傑作 ”Bramayugam”(インド、2024年、マラヤーラム語)

          そのうちマジで『ホラー映画で巡るインドの旅』という本を書きたいという企画を持っている。需要あるかは分からないけど、私には需要があるッ! 空前のインドブームに乗らない手はない!!! そういう目標を持ったので、面白い・面白くないは関係なくホラーを観ることを続けようと思う。 ライターのバフィー吉川さんは記事でインドのホラー映画について解説している。 上記記事の中で、配信サービスの普及でホラーの概念が変わったというストーリーについてはそこまで言い切っていいかは難しいところ。『

          竹美映画評97 サブコンテクストも美味。インドホラーの新しい傑作 ”Bramayugam”(インド、2024年、マラヤーラム語)

          映画から眺めるインド社会②:みんなで見られる夢

          2/2加筆 一昨年前、「ボリウッドの曲がり角」問題について何度か考えた。 しかし、じきに『パターン』のような現代インディアの戦争・スパイ映画が曲がり角を乗り越え、ボリウッド健在をアピールすることになった。なーんだ、ボリウッドはまだまだまだまだインドのブランドとして生きているじゃないか! 文化の政治化を論じる 一昨年あまりしっかりと私の考えをまとめられなかった以下の主張について考えてみたい。 文化の政治化を正面から論じるとは真実どういうことなのだろうか。 最近のラーマ

          映画から眺めるインド社会②:みんなで見られる夢

          映画から眺めるインド社会①:若い男たちの就職先

          最近、『ハヌマーン』というテルグ語のスーパーヒーロー映画がヒットしている。 正直言って、この予告編を観たときにはヒットするとは思えなかった。多分私の好みの映画じゃないからなんだろう…公開直後から人気を博し、順調にヒットを続けている。 監督はPrashanth Varma、主演は子役から経験を積んで来た若手俳優Teja Sajja。 このコンビの映画は前に観たことがあった。その名も『Zombie Reddy』!ホラーです。 「田舎の大家族の長年にわたる諍い&鉈」とゾンビ

          映画から眺めるインド社会①:若い男たちの就職先

          竹美映画評96 韓国女幽霊映画と『エクソシスト』のマリアージュ 『너 또한 별이 되어(お前もまた星となりて)』(1975年、韓国)

          (ま、写真は月なんですけども…) 前回紹介した韓国映像資料院の2009年の季刊誌から見つけたのが今回の作品。 今回の作品『너 또한 별이 되어(お前もまた星となりて)』は、1975年製作の韓国のホラー映画。韓国のホラーが本当に女幽霊ものが基調だった時代の作品。恐怖シーンの演出が同時代のイタリアやアメリカのホラー作品を先取りしているようにも見え、悪魔要素をほとんど抜いてしまった『エクソシスト』がどう翻案されたかという面からも面白い。 あらすじ 普通のサラリーマン、サンギュ

          竹美映画評96 韓国女幽霊映画と『エクソシスト』のマリアージュ 『너 또한 별이 되어(お前もまた星となりて)』(1975年、韓国)

          韓国映画ファンにお勧め。韓国映像資料院~韓国ホラー研究の端緒

          韓国の文化庁に当たる省庁の下部組織に「韓国映像資料院한국영상자료원」という機関がある。 韓国映画ファンの皆垂涎の施設で、映画ファンなら絶対行ってみたい場所だ私も知らなかった!←関心を持ちましょうね…。次回ソウルに行くことがあったら是非行ってみたい。 紹介文は以下の通り。 場所 場所の案内は…以下はソウル経済振興院ビルへの案内だが… 充実の映像コンテンツ ページは韓国語なので英語に切り替える。 上記HPを下に下がっていき、「YouTube Korean Class

          韓国映画ファンにお勧め。韓国映像資料院~韓国ホラー研究の端緒

          竹美映画評95 有害な男性性をデトックスするプラバース 『Salaar: Part 1 – Ceasefire』(2023年、インド)

          南インドアクション映画に結構前から飽きていたのだが、二か月も映画館に行けなくて寂しかったからかしら、評判のよいという『SALAAR』を観たくなり、鑑賞した。 これが大当たりだった。とても面白かった。またプラバースには、こういうインドギャングものに漂う有害な男性性をデトックスする力が備わっているという発見もあった。 あらすじ 都市国家Khansaarで深い恩情と友情で結ばれた二人の少年、VardhaとDeva(プラバース)。1985年、Devaとその母親はVardhaに窮

          竹美映画評95 有害な男性性をデトックスするプラバース 『Salaar: Part 1 – Ceasefire』(2023年、インド)

          竹美映画評94 北朝鮮の「RRR」 『猛獣の狩人(맹수 사냥군)』(2001年、北朝鮮)

          土曜日早朝(朝五時半ゴゴゴゴ)から研修を受けたり、土日にも少しだけ仕事を入れたりしたせいで疲労が溜まって来た年の瀬。 映画館には、2か月前に『エクソシスト 信じる者』を観に行って以来行ってない。インドにいるので当然試写会なんか行けるわけがなく、そもそも記事執筆のお声も全然かからないので、実質映画ライターとしては休止状態。 このことを日々痛々しく思っており、「今はインドでの生活の基盤を作ることや、そもそもここに慣れることが先だから、映画のことは今は後回しにしている」という虚

          竹美映画評94 北朝鮮の「RRR」 『猛獣の狩人(맹수 사냥군)』(2001年、北朝鮮)