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あの夜、ベイカー・ストリートで。(読書と旅に纏わるごく個人的なエッセイ)

大人になった今でこそ学ぶのがとても楽しいが、むかしから勉強が好きなわけではなかった。とくに化学や物理は壊滅的だった。英語もぱっとしない。でも国語だけは大好きだった。

それはやはり、母親がちいさいころから本を与えてくれていたからだと思う。母親は毎年わたしの誕生日に、本をプレゼントしてくれていた。いつも対象年齢よりも少し上の本っていうのがミソで、はじめは「こんなむずかしい本はとても最後まで読みきれない」と思うのだけど、いつのまにかスイスイ読めるようになっているのが不思議だった。いま思えば、むずかしすぎず退屈すぎない絶妙なセレクトだったのだと思う。母とは進路のことで衝突したこともあったけど、読書の習慣をわたしに与えてくれたことは、ほんとうに感謝している。

通信制大学の文芸コースでの小説の授業で、好きな小説を100篇あげなさいという事前課題があった。この作業はとても楽しかった。小さいころからいままでに読んできた本を思い出しながら100篇を選んだ。

課題ではさらにそこからベスト3にしぼり、そのなかの一冊を自分を紹介する一冊として発表することになった。ベスト3は、「自分の人生への影響度」を基準にして選んだ。

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ドレスの仕立て屋タケチヒロミです。 日本各地の布をめぐる「いとへんの旅」を、大学院の研究としてすることになりました! 研究にはお金がかかります💦いただいたサポートはありがたく、研究の旅の費用に使わせていただきます!