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#24 【スケボー浜名湖一周】『つらいけれど楽しいね』と、心が言ったから十一月二十一日は旅の記念日

私は32歳にして8年働いた会社をやめ、6月からヨーロッパ横断の自転車旅⇒世界一周に出かけます。
皆さん旅や旅行は好きですか??旅や旅行にワクワクしますか??

世界一周まで行かなくても、少しでも旅に興味をもってくれる人がいいなという思いを込めて、私が初めて「旅が面白い」と思ったきっかけの旅を紹介したいと思います。


1泊2日 スケートボードで行く静岡県浜名湖一周(65 km)の旅

もし、こんなツアーを企画したとしてもおそらく誰も応募しないでしょう。しかも企画者(自分)がスケボー未経験というから驚きです。元々友達は少ない方ですが、こんなクレイジーな企画に乗ってくれるような友達は絶対いないので一人で企画、実行しました。

旅のきっかけ

2020年9月、コロナの第二派が落ち着き、密でなければいいかな?という世論になってきたそんな頃。インターネットで琵琶湖をスケボーで一周した方の記事を見かけました。

スケートボードはおろかローラースケートすらやったことない私。けれど、月1回の出社以外は在宅勤務で仕事終わりはVBAをいじりる毎日。1週間外に出ないこともざらだった私にはすごく魅力的に映り、さっそくAmazonで5,000円の激安スケボーを注文しました。

初めてのスケボーだったので、3か月後の年末年始にスケボーで琵琶湖一周するという目標を設定。琵琶湖一周は約200kmなので、その予行練習にちょうどいいかな?という軽い気持ちで始めて2か月後に約65kmのスケボー旅行を計画しました。

当時のスケボースキル

週3,4回ほど近くの公園でコソ練。YouTube先生に教わるも、まあ上達しません。ジャンプはおろか、チックタックという基本技すらできない状況です。しかし、進めば何とかなるだろうと思い、結局キック(地面蹴って進むこと)だけできる状態で本番の朝を迎えました。

想定ルート

日本広しといえど、スケボーで浜名湖一周をしている人は見つけることができなかったので、ルートは自転車で浜名湖を一周する「はまいち」の記事を参考にしました。
1日目は舘山寺温泉を出発し、途中でウナギ、三ケ日でみかんを食べて、湖西市で一泊(約45km)。2日目は湖岸をひたすら進み出発地点に戻る(約20km)という計65kmのルートです。
2日間あるし琵琶湖の200kmに比べれば余裕だろうと。完全になめていました。

旅の記録~2020年11月21,22日~(本編はここから)

1日目:人生最高のうな重を食べ、半泣きでスケボーを蹴り、人生最”熱”の銭湯で湯に目覚めた。私の人生が変わった日

9:00 出発

愛知県の家を車で出て、舘山寺温泉の駐車場につきました。出発早々、同じく浜名湖一周を目指す4人家族(小学生の女の子が2人いる)とご挨拶(このご家族とは途中までデッドヒートを繰り広げ私の精神的支柱でした)
最初の目的地は食べログ評価も高い鰻のお店「さくめ」です!

出発地点の浜名湖パルパル付近でパシャリ。
この時は空のように心も体も澄みきっていた。

11:30 お昼ごはんのはずだった

ちょっと予定より遅くなってしまいましたが、目的地の「さくめ」に到着し愕然とします。お昼どきとはいえ、とんでもない数のお客さん。話を聞いてみると朝9時過ぎから並んでいてまだ入れていない方もいます。仕方がないのでとりあえず先を急ぎます。

後で発覚しましたが、このお店「ゆるキャン△」というアニメのモデルになっていて、2021年1月から第二期が始まることもあり聖地巡礼スポットになっていたとのこと。
半年後にゆるキャン△を見た時にすべての謎が解けました。

『ゆるキャン△ 』(あfろ/まんがタイムKRコミックス)5巻より引用

12:30 気持ちの限界①

3時間30分スケボーを蹴り続け、右足が悲鳴を上げます。練習していない左足も使って蹴りだしたら、ちょっとの段差を見過ごし大転倒。ズボンに穴が開き、スマホも一部が欠けてテンションがダダ下がり。そんな中、ご家族の小学生に励ましてもらい元気をもらい進みます。

13:30 過ぎ去りし、うな重を求めて

空腹の限界。
途中1件くらいはうなぎ屋さんがあるのではという甘い観測ははずれ、4時間30分ほとんど休みなく蹴り続けた体は完全にエネルギー切れでした。

もうろうとしながら地面を蹴っている中、Google MAPで少し先に1件のうなぎ屋さん「康川」を見つけます。しかし、お昼の営業時間は14:00まで。Google MAPの徒歩の到着予想時刻は14:20を指しており、どう頑張っても間に合いません。

しかし、うなぎなくしてこの旅は成立しないと思っている私はどうにかしてうな重を食べたいのです。「食べれなければもう辞めたい」というところまで追い込まれていた私は意を決して電話をします。

「14時に間に合わないのですが、どうしてもうな重を食べさせていただきたいです。14:10には到着するのでうな重を食べさせてもらえないでしょうか。」

お店からしたら、息切れしながら、かなり追い込まれた声で、後ろにキャリーケースのようなガラガラ音を発しながら電話してくる男性は完全に不審者だったと思いますが、「絶対に来ますね?」と確認後「お作りしてお待ちしています」といっていただきました。

14:15 食べ物でひとは涙する

目標の14:10には間に合いませんでしたが、温かく迎えていただきました。
すぐにうな重が運ばれてきて一口。

皆さんは食べ物を食べておいしすぎて涙したことはありますか?
「ふわふわ」、「たれの香ばしい香り」など、うなぎのおいしさを表す表現はたくさんありますが、そのような頻出ワードでは表すことのできない多幸感につつまれます。

生まれてはじめての彼女ができた時の、この世に2人しかいないんじゃないかと思うようなあの感覚。間違いなく、あの瞬間。お店には、私とうな重しかいませんでした(あっ。営業時間外だからか)。

自然と目にはうっすら涙が。気力が超満タンに回復し店を出ます。

3時間待ち焦がれたうな重

16:00 三ケ日到着。しかし記憶なし。

人生最高のうなぎを堪能したのもつかの間。とんでもない現実を知ります。

まだ、半分しか進んでいない。

私は独身一人暮らしなのに、みかんを10キロ箱買いするほどみかんが好きです。みかんの名産地三ケ日で、無人販売が至るところにある風景をみたら、テンション爆上がりなはずです。
しかし、宿まであと15km以上あるという現実に絶望し、JAでみかんジュースを飲み先を急ぎます。写真ですか??撮っている余裕などありません。。。

18:00 気持ちの限界②

三ケ日から湖西市までの道は少しアップダウンもあり、私のスケボー技術では対処できない道でした。スケボーというより、ほぼジョグ+歩きで宿を目指します。

季節は11月。すでに日は落ち、スケボーを抱えながらスケボーのキックで感覚のない足で走ります。おなかもすいていたけれど、それ以上に私は何をやっているんだろうという気持ちで自然と涙が出てきます。残り5kmの看板がでてからは1kmずつが本当に長くて、とにかく無心で歩いていました。

19:30 旅の楽しさとの出会い

遂に予約していたビジネスホテルに到着。まだ明日もあるというのに、すべてが終わったような達成感。あんなにつらかったはずなのに、思い出すのは4人家族と抜かし、抜けれを繰り返した時の何気ない会話や、おいしいを超越したうな重のことばかり。

この時、自分は自分の足で進む旅が好きなんだって気が付きました。

止まらない私は、もう足は動かないのに、ホテルでママチャリをかり近くの静岡名物「さわやか」にハンバーグを食べに行く始末。

20:30 町の銭湯との出会い

土曜日の「さわやか」の恐ろしさをご存じでしょうか。夕飯どきということもあり驚異の1.5時間まち。しかし、うなぎと同様にハンバーグ以外は食べたくない心理になっている私は、近くの銭湯に行き時間をつぶすことにしました。

そうして訪れたのが、「みどり湯」さん。疲れ切った体を銭湯で癒すぞーと思って、かけ湯をした瞬間衝撃がはしります。

熱くてかけ湯すらできない。

私は家のお風呂は44度と熱いお湯が好き、草津温泉も大好きなので入れないお湯なんてないと思っていました。そんな私がかけ湯すらできず、5秒入れないのです。浴槽はおうちサイズの浴槽を除けば激熱の大浴場1つ。

番頭のおばちゃんに入り方を聞くと、「うちの常連さんは熱いお湯が好きな人が多いからねー。43度に設定してるんだよ。」との回答が。
絶対に43度じゃないだろ。温度計絶対壊れてるよと心の中で突っ込んでいると、次々と加水せず入っていく常連たち。

町の銭湯には、こんなにも個性的なところがあるんだ。スーパー銭湯もいいけれど色々な銭湯を巡りたい。こうして趣味に銭湯巡りが追加されました。

この後、いくつか高温を売りにしている銭湯、温泉に行きましたが、いまだにみどり湯を超える熱さのお湯には出会ったことがありません。もし、激熱の銭湯ご存じの方。教えてください。

その後食べた「さわやか」はよく覚えていません。1つ言えることは、ハンバーグはみんなで食べたほうがおいしいっていうこと。

床は木で一部が腐食しておりみしみしと音が
レトロ感満載の、ザ町の銭湯

2日目:自分は旅が好きかも知れない。そんな疑問が確信に変わった日。

ハンバーグを食べてホテルに帰った私は泥のように眠ります。朝起きると、当たり前ですがとんでもない筋肉痛(この頃は翌日に筋肉痛が来てくれていました)。昨日派手に転んだ回数は3回。長ズボンと手袋はしていましたが、至る所から出血しもう文字通り満身創痍です。

ホテルからは徒歩5分で駅に着きます。しかし、不思議と電車で帰りたいとは思いませんでした。
チェックアウトギリギリまでホテルにはいましたが、まあ昨日の45kmに比べればお散歩だな、くらいの気持ちで地面を蹴りだす自分がいます。

昨日は蹴っても蹴っても進まないように感じたたスケボーが、心なしか昨日より早く進んでいる気がします(実際は初日よりも遅かったです)。橋の上から湖を眺め、でっかいお魚がいると何とか撮ろうとする心の余裕があります。

気が付けば10km経過
なんの養殖をしているんだろう

両足ともスタートから感覚なんてありません。何もない道で転びます。
お昼ご飯を食べたのか記憶すらありません。それくらい、ただ目の前の道を無心で進み続けました。

午後3時、最後の直線を蹴り進め、車が止まっている駐車場に到着します。服装はボロボロになっており、昨日から約30時間しか経っていないとは到底思えません。ですが変わっていたのは身なりだけではありませんでした。

車に到着した瞬間思ったことは2つ。

  • 2日目も楽しかったな、だれど1日目も楽しかったな

  • 次はどんな冒険をしてみようか

昨日の夜に銭湯で抱いた旅が好きかも知れないという疑問が、確信に変わりました

余談ですが、その2週間後、この感動を仲間と味わいたいと思い、大学の友人を誘いレンタサイクルでの富士山一周が企画されます。結果は4人中2名脱落。この話もいつか書きたいな。

私がこの旅で気が付いたこと、失ったもの

気が付いたこと

アラサーと呼ばれる年だけれど(当時28歳)、小学生みたいに冒険が好きだということ。初日にライバルだったご家族だけでなく、本当に色々な人に声を掛けてもらい、こんなバカやってる大人を温かく応援してくれる人がたくさんいるということ。

この2つは学校と職場しか社会を知らなかった私にとっては衝撃的でした。「旅は自分自身のことを知ることができるんだ」。そう気が付いた私は遅咲きながら旅にのめりこんでいきます。

失ったもの

  • 長ズボン×2、パンツ、手袋

  • スケボーで琵琶湖一周という目標

旅の記録が長すぎて覚えている方はいないと思いますが、この浜名湖一周は琵琶湖一周のための予行練習です。しかし浜名湖一周があまりにもきつかったので断念しました。これ以降1日たりともスケボーに乗っていません。

では年末年始何をしていたかといいますと、12月に企画した1泊2日レンタサイクルで回る富士山一周の旅でスポーツ自転車に出会い、翌週にはロードバイクを購入。琵琶湖一周を経て、自転車を初めて1か月で四国を一周していました(一部電車使用区間あり)。

最後に

皆さん、旅に出たくなりましたでしょうか。
おそらく99%の方が、大人になってこんなにつらいことしたくないと思われたかなと思います。
ですが、これほどではないにしろ、ハイキングや町の散策など、ちょっと体を動かす旅もいいなと思っていただいた方が一人でもいらっしゃればうれしいなと思います。

特に温泉好きの方、朗報です。
疲れ切った後に入る温泉は、脳汁大放出ですよ

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