高山京子

詩を書きます。たまに短歌を載せます。仕事は近現代の日本文学研究、教育。ブログ:http…

高山京子

詩を書きます。たまに短歌を載せます。仕事は近現代の日本文学研究、教育。ブログ:https://takayamakyoko.hatenablog.com/(文学や映画の長めのお話はこちら) X :@takayamakyoko

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  • 取り残された者たちの詩

    生きることのせつなさ・かなしさ・わびしさ・やりきれなさについて。

  • 常に暫定版の詩集(仮)

    消え去るイメージを中心とした私的世界。

  • 短歌

  • スナック京子

    虚構の文学的私詩。

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2024年6月1日、高山京子第一詩集『Reborn』いよいよ発売!

私の第一詩集『Reborn』が、いよいよ今週末の6月1日、発売になります。詳しくはこちら。 詩集 Reborn (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社) | 高山 京子 |本 | 通販 | Amazon 詩を書き始めて約5年と、まだまだ修行中の身ではありますが、これ一冊の中に高山京子のすべてが詰まっている、と言えるだけのものにはなりました。きょうはそのなかからいくつかの詩のほんの一部分をご紹介したいと思います。 わたしという いのちの欠片 あなたという

    • 【詩】冬の日

      いままで生きてきて いちばん悲しかったことは やっぱり 君が死んだことだった 幼いどころか まだ育つこともないままに 死んでしまって 僕はただ呆然と泣いた 仙台駅前 ひっきりなしに人が通る 誰も振り返りもしなかった 寒い冬の日 尖った梢の向こうから 君がさよならするのが見えた もう僕は大人になっていたし 死ぬというのは どういうことなのか わかっていたつもりだったのに 誕生日と命日が同じになってしまった君のことは 長いあいだ考えたけれど どうしてもわからなかった いまでは少し

      • 【詩】絵日記

        ○月✕日 オリオン座が 死滅するとき 夢でうなされた僕も 小さな村の寄り合いに 参加させられて その中心にいるのは まだ顔も知らない 夫なのだった 体温計は 三十八度五分をさし 苦しみのなか 手をつないで逃げる 生きることに向いていなかった者の 結末にふさわしい朝焼けだ ✕月〇日 浮袋をつけて泳ぐなら 北千住より 錦糸町にかぎる おじいちゃんはそう教えてくれた 宮大工をやっていただけあって 泳ぎが得意 ではなかったので 浮袋には精通していた 僕もその血を引いている きょうも

        • 【詩】アネモネ

          吐息の混じった欲望が空気をふるわせる、遠い国からそれはやってきた、もうすぐ会えるというのに、あと一日が待てない、あと一時間が苦しい、手を伸ばした先には雪をかぶった熱い肌、それが溶け出したらもうあとは知らない、明日なんて来なくていいから、流れていく体には、アネモネの血の色が、日に透けて、無数の空に溶け出した、わたしはそれをひとつひとつ掬って、あなたに捧げる、わたしがこの世でできることは、たったそれだけ、アネモネの青色が降り注ぐ夕方、わたしとあなたにも、やがて深い暗闇が訪れる、手

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        2024年6月1日、高山京子第一詩集『Reborn』いよいよ発売!

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          【詩】heaven

          あなたは生きたまま 石膏色の噴水になって みんなはその顔が あなたに似ていると噂する 心ないことを言う あなたは黙っている だけど毎晩 わたしが水のなかに入り その首を抱いてくちづけると あなたの目からは 涙が溢れ出す わたしにはわかる あなたは生きていることが だってあなたを 石膏のなかに 生きたまま閉じ込めたのは わたしだから あなたが欲しかった 誰にも渡したくなかった だからこうするしかなかった だってあなたは みんなに愛されていて わたしなんか 誰にも愛されたことがな

          【詩】heaven

          2024年6月1日に高山京子第一詩集『Reborn』出します

          先日(3月4日)、「詩集を出そうかなと思っています」というタイトルで投稿しましたが(詩集を出そうかなと思っています|高山京子 (note.com))、このたび、ようやく、それが出版の運びとなりました。高山京子第一詩集『Reborn』、6月1日に出ます。Amazon、楽天ブックスで予約・購入が可能です。詳細は以下のリンクからお願いします。 詩集 Reborn (∞books(ムゲンブックス) - デザインエッグ社) | 高山 京子 |本 | 通販 | Amazon 詩誌「コ

          2024年6月1日に高山京子第一詩集『Reborn』出します

          【詩評】園イオさんの詩のこと

          先日、詩誌「凪」第五号を読んでいて、園イオさんの「若き亡者」という詩にぶつかったとき、大げさな表現でなく、私は正直、ぶったまげてしまった。なんだ、これは。こんな詩を書く人がいるのか。詩に関しては浅学無知であるにしても、これではいくらなんでもひどすぎる、と己を深く恥じたことであった。 とにかく、言葉が、走っている。躍動している。そのリズム感、深いところに流れる音楽性などに、私はすっかりやられてしまったのである。それはすべて、自分の詩にはないものであった。なぜか私は、小林秀雄の

          【詩評】園イオさんの詩のこと

          【詩】鼓動

          血が流れていない 生きることが薄い 世界とは透明な壁一枚で隔てられ 人びとは無関係に通り過ぎて行く 泣いても叫んでも 声が聞こえることはない しかし あなたの言葉にだけは あたたかな血が脈打っている 濃密な生の刻印 誰かはきっと気づいている いまこの瞬間にも必ず 妙本寺の海棠の花は 無限に落ちていく それを見ている男ふたりを わたしがまた見ている あれはいつだったか 男のうちのひとりは詩人で もうひとりの男に恋人を奪われた かなしみはそんなところに宿る 海堂の木は す

          【詩】鼓動

          【詩】かぞく

          ああわたしは あなたがたに ころされたかったのだ うまれるまえから きょうのこのひまで ころされたいぐらい あなたがたをあいしていたのだ なぜうまれたのか わからなかったけれど わたしはあなたがたに ころされるためにうまれてきたのだ うれしいです おとうさんおかあさん あなたがたは うまれたいえからにげたくて あたらしいかぞくをつくった それはどんなにがんばっても たよりなくて やがてわたしがうまれた にげるようにつくられたいえ みんなにげながらせいそくしている わたし

          【詩】かぞく

          【詩】桜の森の満開の下(坂口安吾に)

          誰もいらない 殺されてもいい 斬られたい 首を絞められたい 指を絡ませ 脚を絡ませ 舌を絡ませて 抱き合った しがみついた 溶けて重なり合いたかった 名前を呼ぶ 際限のない愛の言葉 いまとここがあるだけの 鈴鹿山の奥の奥 桜の森はしんとして わたしたちの息遣いだけがこだまする まばらに咲いていても、喜ばれる、桜、嫉妬してしまうほど、僕は、世界から、拒まれていた、吹きっさらしの、風のなか、立っていることを、余儀なくされる、宇宙に、放り出される、ひとつだけの魂、きっと、君は、見

          【詩】桜の森の満開の下(坂口安吾に)

          【詩】自傷する言葉たち

          苦しみがのどにつかえて 声が出ないような そんな日がある ひとりぼっちで 消えたくなるような そんな夜もある だけどこういうおばかさんは 泣くに泣けない 泣いていいのに 叫んでもいいのに すべてが内向しては 心を閉ざして 自分を傷つけようとする はっきり言いましょう、ばかです あなたを傷つけることなんか 望んでいやしないのに 傷つけてしまう 大事にしたいのに 崖っぷちのところまで 追い詰めてしまう それがわたしの愛し方 呼吸をするように 愛がわからないひとの愛し方 ぶ

          【詩】自傷する言葉たち

          【詩】世界の終わりと僕たちと

          空が割れて落ちてきた、海が崩れてこなごなになった、世界の終わり、僕は君の手を取って走り出す、街ではひとがあっちへこっちへ、でも僕は君を離したりはしない、だって木星の裏でやっと見つけたんだからね、星が地滑りを起こしているから、いまここでキスしていいよね、フジサンが噴火したら大変だ、逃げまどうひとたちで道路は大混雑、僕らは手をつないで走る、坂口安吾の「白痴」かよ、みんなとは違う方向へ、二人きりになれるチャンス、こんなときなのに君はうれしそう、僕もニヤけている、フジサンは怒っている

          【詩】世界の終わりと僕たちと

          【詩】春の日

          寝ても寝ても夢の中、春の午後、僕は君の髪に溶けてゆく、絡めた指までいつしかひとつになって、どうせだったら桜の花びらになってしまえばいいのにねって君が笑うから、一緒に散る姿を想って僕は欲情してしまった、春だから発情かな、消える、僕らはいつか、それまでは、好きすぎてどうしていいかわからないから君の耳を噛んでみた、他にやることもあるだろうに、外は春の嵐、洗濯物が飛んで行きそうだったから、とりあえず洗濯ばさみになってみたかったのかな、君はくすぐったそうに笑う、いつもそれを見たくて僕は

          【詩】春の日

          【詩】逆説

          わたしのすべては 逆説でできている 本当のわたしを見てほしいから 誰にも見られたくない 捨てられなくないから 捨てる 嫌われたくないために 先に嫌いになる 好きだから 離れたい 好きすぎるから 死にたい 幸せだから 死にたい 何が何でも今すぐ 死にたい だから それなのに 別れの時間が迫るなかで 泣きそうな顔をしながら キスをしている わたしという存在は 逆説だから 究極のところ 死にたいということは 生きたいということ 真実のわたしは ただ生きたいだ

          【詩】逆説

          【詩】もう、それだけで。

          君のからだが好き。そう言っても、怒られなかった。軽蔑されなかった。君はうれしそうに、プラトニックラブじゃなくて本当によかったね、なんて言ってる。僕はたまらなくうれしくなる。僕を否定する世界のなかで、僕は生きてこなきゃならなかった。君は僕を否定しない。絶対に。もう、それだけで。あなたは生い立ちがひどすぎる。だから精神的な恋愛が信じられないんだよ。むかしの彼女はそう言った。僕は穢らわしい人間なんだ。そう思っていた。だけど君は違う。好きだったら触れたいって思うよ。性愛のない愛なんて

          【詩】もう、それだけで。

          【詩】憂鬱な午後

          いのちをかけているひとにしか 用はない いのちをかけて作られたものしか 欲しくない いのちをかけた恋しか したくない いのちをかけた言葉しか 書きたくない 読みたくない 話したくない 聞きたくない いつかは終わる あした死ぬかもしれない だからすべては美しい だけど、でも、ときどき思うよ 愛さなければ 傷つけることもないし 傷つくこともなないし さみしくなることもなければ せつなくなることもなくて 楽なんだけど それでも僕たちは 愛するのを やめることができない

          【詩】憂鬱な午後