渡米7ヶ月 まさかこんなことになるなんて・・・

(更新中)
ボストンは今年は暖冬で雪も1月以来ほとんど降らず、3月中旬にサマータイムにシフトしてからは夕方が一時間長くなった。

3月12日(火)に長男の脊髄炎のフォローアップ検診でBoston Children’s Hospitalの神経内科を受診した。自己免疫が原因のMOGと判明したとの連絡を事前に受けていたが、はっきりしたデータはないものの、もし何も治療をしなかった場合、半数近くが再発する可能性があること。もし再発した場合には最悪の場合、視力の低下や損失、感覚の麻痺をもたらす可能性があること。一方で今後、免疫グロブリン(IVIG)の投与を半年に渡り4週間に一度続けることで再発率を20%程度に抑えられることなどを知る。だが、一回の接種に2000ドル以上がかかる。幸い、加入する海外旅行保険が、初診日から180日までの医療費をほぼ全額負担してくれることになった。しかしながらこのIVIGの投与が終わってもフォローアップの検診が3ヶ月おきに続くため、それ以降の治療費をどう捻出するか要検討だが、4月上旬からIVIGの投与を開始することにした。

「名前を変えたい。学校に行きたくない」

そんな矢先、長男が、学校でいじめを受けていることが判明した。集団で名前をからかうなど、度を超えた嫌がらせが渡米後から半年近くに渡って続いていたことがわかり、学校に相談したところ、校長のブライアンがとても丁寧に対応してくれて、それに関わる子ども達と親に事情を伝えるなどの手をすぐに打ってくれた。また今後、それでももし同じようなことが起きるようであれば、学校としても関係者を停学処分にするなどのさらなる対応を取る準備があると言ってくれた。このあたりの対応の素早さは、やはりアメリカの素晴らしいところだと思う。

全ての病がそうかもしれないが、長男の脊髄炎の主な原因の一つはストレスが引き金になったとも言われている。13歳の長男は思春期でコミュニケーションが難しい年頃ではあるが、親としてなぜもっと早く気づいてあげることができなかったのか。

「あのまま日本の中学校にいさせてあげたかった。せっかく自分でやりたいことを見つけて、吹奏楽も頑張っていたのに。その芽を摘んでしまったんだよ。もう時間は巻き戻せないよ」

妻にそう言われて、返す言葉もなかった。もっと長男の声に耳を傾けてあげるべきだった。今回の渡米は、子ども達の将来にとってきっと大きな財産になるからと信じて疑わなかった。こんなことになると知っていたら、僕は子供達をわざわざここまで連れてきただろうか。取り返しのつかないことをしてしまった。

「日本に帰りたければ帰ってもいいんだよ・・」

もう家族を日本に帰した方がいいのではないか。無理にここにいなくてもいい。そんな思いが芽生え、長男にも何度か聞いてみた。だが、ここまでの大きな変化を経験して、また日本に戻ったときに大きな変化が生じることにも抵抗感があり、今はこのままの現状を維持したいのだという。また今回のいじめに関わった子ども達はほとんどが日本人で、アメリカ人のクラスメイトとはまだほとんど話ができないものの、とても日本のことが好きで親しく話しかけてきてくれる子もいるのだという。最近では、英語を以前よりも少しだけ積極的に勉強するようになってきた。いろんなことがあっても、本人はあと一年はここで勉強するつもりでいるようだ。また気持ちは変わるかもしれない。時計の針は戻せない。でもこれからは本人が決めることを一番大切にしてあげたいと思う。

信じがたいニュースが・・・

精神的にも経済的にも厳しい状況が続く中で、とても信じがたいような嬉しいニュースが続けて飛び込んできた。奨学金が激減する2年目以降に向けて、(1)日本のフルブライト同窓会にあたる財団から(2024年の9月から翌5月にかけて)月々18万円の生活費の追加支給が得られることになったことに加えて、(2)エマーソン大学からはなんと学費の全額免除(年間4万ドル相当)が得られることになったのだ。

渡米後、歴史的な円安物価高も重なり自己資金は想定以上に目減りを続けてきた。それでも2年目以降に向けて、なんとか1000万円近い資金を手元に残せればと節約に節約を重ねてきたが、学費と家賃だけでも年間73,739ドルがかかる中、追加の支援がなければ、もはや生活が成り立たないところまで追い込まれていた。このニュースを聞いたとき、それまで相当辛い状況が続いていただけに、心底救われた気がした。悪いことばかりは続かない。どこかで神様が僕たちを見守ってくれているような、そんな気持ちがした。

もちろんこれで全ての経済的な不安が解消されるわけではないが、今回の決定は今後に向けて非常に大きな追い風となった。

この春学期は、ホラーやサスペンスの人気脚本クラス「Writing Dark」、映画撮影監督を養成する「Graduate Cinematography」、卒業制作に向けて個々の作品制作に臨む「MFA Production Workshop」の3クラスを履修している。それに加えて、音への思考を深め、映画音楽を制作する「Sound Thinking」、NetflixやApple、Amazon、Disney+など世界的なストリーミング企業のコンテンツ戦略を研究する「Streaming Film and Television」の2クラスを聴講している。本来、3つのクラスを受講するだけでもフルタイムの学生となり皆一杯一杯なので、そこにさらに2クラスが加わると当然、ブログを更新している時間もなくなる。加えて、この春学期は3本の短編映画を手がけている。

毎日、フル回転でインプットとアウトプットを繰り返す日々。正直、息をつくまもないし、医師や法律家になるための勉強をしているわけでもないので、先の保証もないと言えばない。だが、大切な家族がそばにいて、奨学金にも恵まれ、大好きな映画を学び映画と向き合うことができる日々は、いつか僕がずっと夢に見てきた時間そのものではないのか。

今ここにある時間にもいずれ終わりがやってくる。きっと終わりを迎えたときには、例え今は不安が尽きなくて大変だとしか思えなくても、あの頃はとても恵まれた時間だったといつか振り返り懐かしく思う日が来るだろう。

結果ばかりを求めると、今が見えなくなる。余裕がなくなって苦しくなる。結果はいつかついてくる。頑張れば頑張っただけの結果が出るし、そううまくいかない時もあるだろう。でも大切なことはきっとそれじゃない。いまここにあるプロセスそのものを楽しもう。それこそが最高の贅沢じゃないか。

生きている、ということは常に過程の中にあるということだ。明日が来ることは当たり前じゃない。そのプロセスの中にある「今を生きる」ことは、今の僕たちにしかできないことだ。

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