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渡米51日 キャスティングコール開始!!

2023年10月12日(木)

担当のハーレン教授の許可を得て、先週に引き続き、特別にCinematography(映画撮影術)のクラスを聴講させてもらえることになった。その引き換えに撮影モデルを務めることが条件だ。

今日の授業では、シネマカメラのキャノンC70の撮影レンズを望遠の80ミリから広角の15ミリまで順番に切り替えながら、同じ画角でどのように見え方が変わるかを実践的に体感する。またブラックプロミストなどのフィルターを入れて、どのように映像の雰囲気が変わるかを実感する。僕は撮影モデルを務めながらも、大きなモニターに映し出される映像の違いに見入っていた。

「ひとつ、クラシックな僕のお気に入りのレンズがあるので紹介しましょう」

ハーレン教授がそう言って紹介してくれたのが「レンズ・ベイビー」と呼ばれる特殊レンズ。レンズの中心部はくっきり映るもののの、周辺部はぼやけて見える。後えば、画角の中心部にいるモデルの僕自身にはピントが合っているものの、僕の隣にあるローソクの光はぼやける。撮り方次第では、どこか非現実的で、ロマンチックなビジュアルイメージを表現できる。

「このレンズが映し出す世界は、実はまさに僕が見ている世界そのものです」
「タカヤ、それは面白いね。それで作品を作ってみたらどうか」

授業後、ハーランに今日の授業に特別に参加させてくれたお礼を伝えながら、自分も視野の病気についても共有し、レンズ・ベイビーが映し出した世界についての感想を伝え、ハーレンからはそのような感想を得た。

網膜色素変性症によってもたらされる視野の不具合は僕にとって、確かに「障壁」そのものだ。だが、それを嘆いてばかりいても始まらない。障害を美化するつもりはないが、それを逆手にとって何か新しい表現ができないか。

そうした思いがあり、ハーランを含めてそうした想いに素直に呼応してくれる環境がやはりありがたいと感じる。きっと彼らも力強いオリジナルな表現は、自らと向かい合うことによって生まれることを誰よりも知っているからだろう。

木曜日の夜は、恒例となったBright Lights映画祭での上映作品を堪能した。今日の作品はドキュメンタリー映画「Every Body」(2023年公開)。身体的な性別が男性・女性の中間、もしくはどちらにも一致しない状態を持って生まれてきた「インターセックス(intersex)」の当事者達と現在につながるムーブメント描いたとても力強い作品で、正直、インターセックスについて全く無知だった僕には目から鱗が落ちる思いがした。

性的自認とは別に、男性と女性の生理学的性質を両方有して生まれてくる人が世界の人口の2%近くいて、社会の無知や無理解や偏見が、いかにインターセックスの人々に不必要な身体的、精神的苦痛を敷いてきたか。登場人物の中には、映画や舞台、表現を通じてそのことを伝えようとしているアーティストも登場し、やはり自分と向き合うことで生まれてくる表現の力強さを感じずにはいられなかった。

監督クラスで撮影する映画「Pariah」キャスティングコール(オーディションの呼びかけ)のメールをしたためて、夕方、エマーソン大学のパフォーマンスアート(舞台芸術)の俳優志望の学生のメーリングリストに送ると、早速数人の俳優から出演希望のメールが届いていた。

帰り道、また地下鉄のなぜか複雑なグリーンラインに乗り間違えて、慣れない見知らぬ夜道を一人歩き、やはり目の見えにくさそのものにはうんざりしながらもながら、肌寒くなってきた夜道をなんとか無事に家路に辿り着いた。

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