049 ブロッコリーの呪縛
ブロッコリーを見ると学生時代から友達のRちゃんを思い出す。
3年ほど会ってないけど、ブロッコリーを見ると必ず現れるRちゃんの影。
「ブロッコリーが大好き」
学生時代、どこで飲んでも、どこで食べてもブロッコリー!ブロッコリー!!とその一点で会話を押し通すRちゃん。ブロッコリー茹ですぎて泣いてたこともなかったっけ。
あまりにもブロッコリーって言うもんだから、僕の脳裏に「ブロッコリー=Rちゃん」が完全に植え付けられちゃったんだよね。僕も好きなのに上書きできない。
Rちゃんだけじゃない。
他にも「この食材が大嫌い」「この食材が大好き」というだけで、まるで生き霊のように現れる知人がちらほら。
指くらいの大きさの魚が嫌いなAや、ウィンナー大好きM、だし巻き職人Kなど。
その食材、料理が出てくるたびに「元気かな?」とか「これ食べさせたいな」なんて気持ちと共に現れる生き霊たち。
どんなに高級店であれ、誰と食事していたとて現れる彼らは、なんて傲慢なんだろう。
そんな中、知り合いでもないのによく現れる太々しい生き霊がいる。
「茄子娘」だ。
数年前に大戸屋でたまたま居合わせた母娘。
最初は仲睦まじい雰囲気だったのに、料理が配膳された途端に、娘が泣き叫びだした。
知らなくていいのに、ついつい知ってしまう他人の好き嫌い。
この問答はいつまで続くのか。
「正直言って茄子に栄養なんてないよお母さん!」
「しかもその茄子は、油しか吸ってなさそうだよお母さん!」
そう言って娘を助けてあげたかったけど、その親心が思い出となり生き霊へと昇格したようで、いまだに茄子を見るだけで泣き叫ぶ娘を思い出す。
顔は忘れたのに泣き叫ぶ、顔無しの生き霊。
怖い、怖すぎる。
きっと彼女は生き霊になっていることも梅雨知らず、今頃「やっぱり有機野菜だよねー」なんて言いながら、泣くことも忘れ、友達とランチを楽しんでいることだろう。
そう言えば昨日呑んだMちゃんは「大好きしかない」そう。
その生き霊最強すぎる、やめてくれ。
***
-もの-
AEROPRESS
前にも紹介したようなしてないような。友人からいただいたコーヒードリッパーの「エアロプレス」。コーヒーを淹れるための道具だけど、僕は紅茶にも使っている。というか紅茶はこれで淹れるのが正解なのではというくらい美味しく淹れられる。
そういえば物にも生き霊っているよね。エアロプレスを使えば、いつもプレゼンとしてくれたT君を思い出すし、今回入れた岡山お土産の紅茶なんて、産地が「吹屋」ってだけで吹屋のベンガラ染の染師兼魔法使いのおばちゃんを思い出す。
元気ですかー邦子さん。
(カバー写真:えんまん亭/松島)
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