演技レッスン【『梨泰院クラス』と『六本木クラス』の演技の違い】
こんにちは。
演技講師、アクティングコーチのスギウチ タカシです。
この記事では演技力アップに役立つような内容を不定期に書いています。
今回のテーマは【『梨泰院クラス』と『六本木クラス』の演技の違い】についてです。
まず、簡単なぼくの自己紹介ですが
ボクは元々20代前半から俳優として活動していて、今から約7年前に俳優から演技講師、アクティングコーチに転向しました。現在も講師として活動中です。今までたくさんのプロの俳優、女優さんのコーチングやオーディション、撮影本番の準備のお手伝いをしてきました。
俳優時代は全く演技のセンスがなく、事務所の先輩から満面の笑顔で「タカシは本当に芝居が下手だなぁー」と爽やかに言われるほどでした。その為、たくさんの演技レッスンやワークショップに通って色々なメソッドを学んできて今に至ります。
では早速、本題に入っていきましょう。
『梨泰院クラス』と『六本木クラス』の演技の違い
韓国で放送されて大ヒットし、『Netflix』経由で日本でも大ブームを巻き起こした『梨泰院クラス』を、日本版としてリメイクしたのが『六本木クラス』です。
『梨泰院クラス』はボクも大好きな作品だったので、期待と不安を抱きながら『六本木クラス』の第1話と第2話を観ました。
感想としては…。
ほぼ設定が同じため、日本人俳優と韓国人俳優の演技の仕方の違いがハッキリと表れていました。
『内向的』な演技の日本人俳優、『外向的』な演技の韓国人俳優
過去の記事でも書きましたが、内向的な演技と外向的な演技というのがあります。↓
「六本木クラス」の俳優さん達は、この『内向的』な演技をしがちです。
なので、演技が自分だけで完結してしまい、相手役とのコラボレーションが起きにくくなっています。
それに対して、『梨泰院クラス』の俳優さん達は演技が『外向的』なので、相手の言葉に対してのリアクションが非常に細かく、小さな『変化』がたくさん起きています。
具体的な例を挙げてみましょう。
第2話のセロイとスアの刑務所での面会のシーンです。
(日本版では、新と優香)
ここでのスア(優香)との会話の中で、セロイ(新)は「復讐」という新たな目標を明確に意識することになる重要なシーンです。
面会でのシーン
まず『梨泰院クラス』でのセロイは、面会室に入ってきて顔のキズのことをスアに聞かれると「平気な振り」をして笑います。その後来てくれたお礼を言うと、スアが何だか暗いので、尋ねます。
すると「大学に受かったこと」と「長家(セロイにとっては宿敵)から奨学金をもらうこと」を聞きます。
自分の好きな人が、自分の敵から支援してもらう事実を知り、内心穏やかなわけがありませんが、セロイはほとんど表情を変えません。
それどころか、罪悪感から泣くスアに向かって感謝の言葉まで言います。「スアのおかげで殺人犯にならなくてすんだ」と。
そしてスアの罪悪感を軽くするために、優しく言葉を掛けます。
その間、セロイはずっとスアの様子を注意深く観察して、ケアしています。
そして一切、辛そうな顔は見せません。
自分は刑務所の中にいて、リンチを受けたりと辛い状況にいるのにスアを気づかうセロイ。スゴイ男ですね!!
このように相手に意識が向いている外向的な演技の結果、セロイの懐の深さが表現できています。
それに対して「六本木クラス」の新は、入ってきたときからちょっと暗いです。
これでは優香は顔のキズといい、余計心配してしまいますよね(T-T)
大学に合格したのを聞いたときのリアクションもセロイのように相手に掛けるように「おめでとう」の言葉を言うわけではなく、どちらかというと「感想」っぽくなっています。
そして宿敵からの支援を受ける事実を聞いた後は、言葉は発していますが、自分の世界に入り込んでしまっているように見えます。その証拠に、韓国版では入らない回想シーンが直前に入ります。それに対して、セロイは目の前のスアを見ています。
新は目の前の優香を気づかうよりも、事実を知ったショックの方で心がいっぱいになってしまってるんですね。その中で必死に言葉をつなげているように見えます。
それを気づかって優香が話題を変えている、という風な流れになっています。(『梨泰院クラス』では、セロイの言葉に感激の涙を流し心が軽くなったスアが、セロイに「未来」のことを尋ねます)
「六本木クラス」では自分の「気持ち」を優先する内向的な演技が主流です。
このシーンのクライマックス、去り際の告白の件も見てみましょう。
告白
面会時間が終わりを迎え、セロイ(新)が去り際、スア(優香)が呼び止めて過去のことを聞きます。
スア(優香)「あの時、なんで私に近づいて来たの?」
セロイ(新)「何のこと?」
と聞き返すのですが、このときのリアクションの仕方にも大きな違いがあります。
セロイはキョトンとした表情で聞き返します。唐突に「あの時」と言われたので、どの時かわかっていないんですね。セロイはこのシーン以外でも事あるごとに、このキョトンとした表情で聞き返すことが多いです。
特にスアやイソが何かしらのアプローチを仕掛けてきたときに。
そうです!!セロイは乙女心に対しては「超鈍感」なんです…。
なので、今後の展開でのイソのセロイに対するモヤモヤも理解できます。
それに対して新は一度笑ってから惚けるように「何のこと?」と聞き返します。
もうわかっちゃってるんですよね〜、優香が何を聞いてくるか。
その後「好きだった(過去形)」と告白すると、優香が「今でも?」とさらに突っ込んできます。それに対して新は、はっきりと頷きます。その後の優香の言葉に対して「これからお金持ちになるのが、オレの夢だ」と言い去っていきます。この流れでいくと、このセリフは言葉通りの宣言や決意のように聞こえます。
それに対してセロイは「好きだった」と告白し、スアに「今でも?」と聞き返されたときに照れながら「頭を触る」という、曖昧なアクションをします。ちなみにセロイは困ったときによく頭を触ります。
そのことを知ってるであろうスアが「貧乏な男は嫌いよ、将来金持ちになる?」と発破をかけます。それを受けてセロイが「今から夢は、金持ちになることだ」と答えます。
これは言葉通りの「金持ちになる」ということをスアに伝えているのではなく、「(まだオレは、オマエのことが好きだ)」という告白のセリフになっています。それを聞いてようやくスアは笑顔を見せます。
ほぼ同じような流れのシーンですが、受ける印象やキャラクターの特徴、関係性などの情報量に違いがあります。
さいごに
韓国版『梨泰院クラス』と、日本版『六本木クラス』の演技の違いについて書いてみました。それぞれ好みはあると思いますが、ボク個人的には『梨泰院クラス』の方が断然オススメです。
やはり、お互いのキャラクターが影響し合っている方が観ていてハラハラドキドキしますし、『変化』が見えるのが醍醐味です。
ちなみに『梨泰院クラス』では相手のセリフを聞いた後の『変化→セリフ』がキチンと映るようなカットがたくさんあります。
気になった方は是非チェックしてみてください!!
では
ST Acting Studio
スギウチ タカシ
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