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普通じゃない、ちあきなおみの世界。斜め上をいくエイジレスな楽曲たち。

「ちあきなおみブーム」の火付け役となった6枚組BOX「ねぇあんた」のリリースからはや24年。いまだ音楽業界ならびに音楽ファンを沼らせているちあきなおみ。ここまで来るともはやブームと呼べるような一過性のものではなく、完全に現役シンガーとしての人気と支持を得ているだけでなく、その熱量はますます勢いを増している気さえする。

では一体彼女のどんな歌がわれわれを沼らせているのか。われわれを沼らせる楽曲をピックアップし、シェアしていこうと思う。

「四つのお願い」「喝采」「夜へ急ぐ人」「かもめの街」「紅とんぼ」「紅い花」など時代とともに代表曲を持つちあきなおみの秀逸なカタログには目を見張るものがある。メジャーヒットや認知度の高い曲は彼女の歌の世界への導入としては十分なポテンシャルであるが、それらはいわゆる「表の顔」。今現在でも彼女の魅力にどっぷり沼っているファンというのは、これから紹介するような「裏の顔」、つまり認知度は低いが彼女の個性に裏打ちされるアーティスティックなユニークさや尖り、怖い物知らずな攻めまくった楽曲にこそ真骨頂があると信じきって譲らないのである。ゆえにファン同士でも好きな楽曲が異なり、それぞれの好みをぶつけ合い議論するのだが、それも一興と長時間を費やすのだからさすがである。

彼女のメジャーシングルの中でもコアなファンの間で寵愛されている1曲がメロウファンクな「禁じられた恋の島」である。物語の情景を想起させる巧みな歌唱力はこの歌で開花し、次のシングル「喝采」で揺るぎない個性となるのである。その「喝采前夜」ともいうべきこの曲はヒットこそしなかったものの、曲調の壮大さ、物語性に飛んだ歌詞、語るような歌唱が濃縮された完成度の高い1曲として紹介したい。

難解な曲として知られる「夜へ急ぐ人」はコロムビアレコードからの最後のアルバム「あまぐも」からのシングルカット。このアルバムの何がすごいって、会社の難色を振り切って彼女と当時のパートナーとの独断でほぼ無理やり出し切ったといわれる、ある意味「決別の切り札」である。売れ線にこだわる会社側と、自分の歌いたい歌にこだわりたく本格的な歌手へと舵を切りたいちあきとの乖離はこの作品で決定打となったと言われている。アルバムはハードを極めた歌謡ロック路線。バックバンドにはなんとメジャーデビュー前のゴダイゴを起用。タイトでシャープな演奏が鳥肌が立つほどかっこよく、痺れるような電気の走る歌ばかりが揃う。そんな彼らが奏で、ちあきのドスの効いた歌声が全編に響き渡るアルバム「あまぐも」は本当に全曲おすすめだが、中でもクレイジーなくらいに狂いまくっているのが以下の数曲。中でも「普通じゃない」。これがマジで普通じゃないので必聴です。これらをきいてあなたは沼る?

80年代に入り独自の路線を突き進み始めたちあきなおみはビクターに移籍。インビテーション・レーベルから4枚の作品をリリースした。中でもポルトガルのファドを取り上げた「待夢(たいむ)」は訳詩モノとしてのクオリティが高く、音も良い仕上がりで知る人ぞ知る名盤といわれている。ファドはどこか演歌や歌謡曲のこぶし回しにも似た郷愁音楽で、日本の音楽ともシンクロしているのがよくわかる。彼女の土着的な色香と湿り気のある歌唱がたっぷり堪能できるのでファンは最高の“イヤガズム”アルバムとも言える。

テイチクへ移籍後、本格復帰を果たしたちあきはT V出演やライブ活動、新譜リリースも積極的に行い、それまでのフラストレーションを発散するかの如く、オリジナルからカバーまで幅広い歌をレコーディングした。カバー曲として面白いなと思ったのが「喝采・紅とんぼ 参分劇」という吉田旺氏の作詞による楽曲を取り上げたカバー集。その中で自身の「喝采」と「紅とんぼ」を歌い直しているのだが、これが正直オリジナルよりも傑作の出来栄えで個人的にも大好きなアレンジ。「紅とんぼ」にいたってはタンゴバージョンという大胆さ!これはクセになるはず。こういう音楽的な遊び心をたやすくやってしまうのもまた彼女の魅力のひとつ。

そして現在のところ最後のアルバムとなっている「百花繚乱」。このタイトル曲がまさに豪華絢爛。叙情たっぷりな日本的なアレンジと、ドスのきいた低い声から優しさ溢れるソフトな声、突き抜けるような高音まで、それまでのちあきの歌手の歴史が凝縮されたような最高の一曲になっている。こじん的に「TSUBAKI」のCMに使われたらリバイバルヒットするのになーなんて思ってるんだけど、CMプランナーの方、いかが?

ちあきなおみの復帰を希望する声は年々高まっているけど、復帰して欲しい気もするし、このまま伝説になってほしい気もする。どうなるにせよ、彼女のこれまで残してきた楽曲たちは永遠であるのは間違いない。

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