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ヴィンテージってあたらしい

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北欧ヴィンテージ食器のショップ『コグマス』をはじめました。20世紀からやって来た美しいデザインの数々を、歌う絵本作家マキタカシが独自の視点からご紹介してまいります。よかったらお付… もっと読む
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魅惑のお尻コレクション

 リサ・ラーソンは1950年代から数多くのフィギュリンを作ってきました。  フィギュリンは人間や動物をかたどった小型の像。彼女が作る陶製のフィギュリンは表情や仕草が愛らしいだけでなく、うしろ姿まで素晴らしいんです。お店で見かけたらぜひ背中やお尻もチェックしてみてください。  私が選んだリサ・ラーソンのお尻コレクションをご紹介します。 ・ ・ ・ ・ ・  まずはこちらの犬。  がっしりと逞しいのに、お尻は小さく引き締まっています。  犬種、わかりますよね。  はい

250周年の北欧絵皿に込められた遊び心と優しさ③

 今回で謎解きは完結です。  3枚の絵皿をめぐる旅、いかがでしたか。 「君たちに謎が解けるかね?」  スウェーデンの絵本画家フィッベン・ハルドは、ロールストランド創業250周年を祝う絵皿で私たちにどんなメッセージを伝えようとしたのでしょうか。 『18世紀』『19世紀』の絵解きは、我ながら上手くいったと思います。 『18世紀』は貴婦人とおかしな顔のセールスマンでした。 『19世紀』は時計屋に来店したマダム。  そして3枚目『20世紀』がこちら。  一番見てもらいたかった

250周年の北欧絵皿に込められた遊び心と優しさ②

 前回の記事では絵皿『18世紀』を紹介しました。  今回は『19世紀』と題された絵皿の話です。  この絵皿には19世紀ヨーロッパの上流階級で大流行したものが3つ描かれています。どれだかわかります?  ヒント)ここはおそらく時計店。  右のヒゲの男性は店主でしょう。  19世紀に流行したチェーンストラップ付きの懐中時計を豊富に取り揃えたお店のようです。  マダムは時計を買いに来た?  いいえ、彼女のお目当てはローネット(Lorgnette=長柄付きの眼鏡)。当時の裕福

250周年の北欧絵皿に込められた遊び心と優しさ①

 皆さんはアニバーサリーをどのように祝っていますか。  お祝いのヒントになるかもしれない3枚の絵皿をきょうはご紹介します。 「何だ、この絵!?」  初めて絵皿を見た時びっくりしました。描かれているのは人間‥‥にしては奇妙なかたちですよね。もっと驚いたのは絵皿を製作したのがスウェーデンのロールストランド(Rörstrand)社だったこと。  ノーベル賞授賞式の晩餐会で使われる陶磁器ブランド、ロールストランドはドイツのマイセンに次いでヨーロッパで2番目に古く、1726年にスウ

70年前の食器に新しい呼び名を付けてみた

 友人の北欧ヴィンテージ食器店を手伝っています。商品のキャッチコピーを書いたり、PR動画を作ったり。北欧デザインは森のように深く、家のように暖かい。知れば知るほど愛着が湧いてきます。  先日、店主から相談を受けました。 「この商品をどう売ろう」  カップ&ソーサー?  にしてはソーサーが大きい。しかもカップを置く位置が中心からずれています。  どう使うかというと‥…  お菓子を載せます。  この食器セット、当時何と呼ばれていたと思います?  ヒントはこちらの写真。

絵本のような絵皿たち(北欧カタログ19)

 読書の秋。趣向を変えてこんなひとときはいかがですか。  ご紹介するのは本ではなく、物語のひとコマのような絵皿や陶板。眺めていると登場人物たちの話し声が聞こえてきそうなヴィンテージ品を集めてみました。 港町の小皿Paul Høyrup 作|デンマーク  コペンハーゲンのニューハウンは童話作家アンデルセンも住んでいた港湾地区。潮風の広場を人々や馬車が行き交い、入り江に多くの船が集まるようすが深緑の線で端正に描かれています。ポール・ホイラップは旅情をさそう景色を描くのが得意

「カランバ!」と叫んだのは誰?(北欧カタログ18)

noou 海外でこんなフレーズを耳にしたことはありませんか。  ¡Ay, Caramba! (アイ・カランバ!)  カランバは驚いた時などに使われるスペイン語のフレーズ。  うわっ。おいおい。何これ。くそっ。あちゃー。  漫画 『タンタンの冒険』やアニメ『シンプソンズ』にもよく出てくるセリフなので、なじみのある人も多いかもしれません。 「うわっ」という名の 北欧アートガラス 陽気な響きのラテンの感嘆詞をそのままタイトルに冠したガラス作品が北欧にあります。  1987

400年の平和を見守る丘 (北欧カタログ17)

 水色と青の対比が美しいスウェーデンの絵皿。  作られたのは1923年。  釉薬を塗った表面を引っ掻くズグラッフィート技法(Sgraffito)で描かれた、99年前の作品です。  何の建物か分かりますか?  スウェーデン第2の都市ヨーテボリ(Göteborg/イェーテボリとも)を訪ねたことのある人は見覚えがあるかもしれません。  スカンセン・クローナン(Skansen Kuronan/王冠の意味)。  街の丘に立つ六角形の建造物で、屋根に王冠のかたちを戴いています。

水も時には休みたい(北欧カタログ16)

 川の流れから取り残されたような、まったりした水。  英語ではstream poolと呼ぶそうです。  水底が深く時が止まったように見えるその場所は、いわば高速道路のサービスエリア。日だまりでしばし休んだ水は再び下流へと急ぎます。  こういう水をフィンランドの人々は一語で表現します。  スヴァント(suvanto)。流れのゆるやかなところという意味です。  転じて音楽では、アップテンポの楽曲の途中に展開するスローな部分。  激動の歴史の中で穏やかだった一時代もスヴァント

ある夫婦の旅(北欧カタログ15)

 彩り豊かな一枚の絵皿。  裏面にはタイトルが記されています。  The Flight Into Egypt (エジプトへの逃避)。  古来より多くの画家たちが描いてきた聖書の物語です。  ヘロデ王の追っ手から逃れるため、ヨセフは妻のマリアと生まれたばかりの幼子イエスをロバに乗せてエジプトへ旅立ちます。描かれているのは月に照らされて進む家族の姿。ナツメヤシの木の向こうにはピラミッドらしき影も見えます。  でもこの絵、宗教画にしてはちょっと変ですよ。 ちりばめられた不思

おかげさまで2周年を迎えることができました(北欧カタログ14)

 あっというまの2年間でした。  北欧ヴィンテージ食器のコグマスがBASEにお店をオープンしたのが2019年12月。その翌月から世界にパンデミックの激震が走り、開店早々予測不能の日々が続きました。  この2年を乗り越えてこられたのは応援してくださった皆様のおかげです。本当にありがとうございました。 ・ ・ ・  3年目もがんばるぞ!  と決意も新たに目覚めたきのうの朝、ショップのメール受信箱に一通のお知らせが届いていました。差出人はPinterest Japan。

空から降ってきた白いベリー(北欧カタログ13)

 紺地にくっきりと浮かび上がる白い実と青い葉。  幻想的な絵柄が美しいタイカ(taika)のカップ&ソーサーです。  Taikaはフィンランド語で「魔法」。  描かれている白い実は空想の産物?  いいえ、ヨーロッパの森にふつうに自生する植物です。  実がなっているところをじっさいに見た人はあまりいないかもしれません。  なぜならこの植物は……  はるか頭上、木の高枝に緑の玉のように生えているから。  フィンランド語で misteli。  英語は mistletoe(ミ

リンドベリが咲かせた大輪の花(北欧カタログ12)

 タヒチと聞いて何を連想しますか?  南太平洋に浮かぶフランス領ポリネシア最大の島。ポール・ゴーギャンの絵も有名ですが、タヒチといえばやっぱり……  花ですよね。  タヒチは別名「花の島」。  いたるところに花が咲き、女性も男性も髪に花やつぼみを挿して歩く習慣があります。そういえばゴーギャンの絵に登場する少女たちも花飾りを着けていましたっけ。  北欧デザインの巨匠スティグ・リンドベリ(Stig Lindberg/1916-1982)は、原色を大胆にあしらった花柄のシリ

フィンランド生まれの美しい《急須》 (北欧カタログ11)

 急須のようで急須でない。  ぽってりと丸いフォルム。  つや消しの優しい手ざわり。  日本でも人気の高い、北欧ヴィンテージポットの名作《GAシリーズ》です。  デザイナーはフィンランドARABIA社のウラ・プロコペ(1921-1968)。彼女が1955年に作った《GAシリーズ》は大きなGA3と小さなGA1があります。今回GA1が入荷しました。  色は黒、茶、白の3種類。  Hilkka Liisa Ahola (ヒルッカ・リーサ・アホラ)が描いた青い薔薇の柄も入荷して