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【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(2)自身を形作る:Savickas(2013)

今回は自身を形作ること(self-making)についてです。サビカス先生は、自身を形作るというプロセスは人生を通じたプロジェクト(lifelong project)であるとしています。つまり、本当の自分という絶対的なものがあってそれを探すということではなく、常に自分自身というものを形作り更新していくというプロセスとして捉えていると考えられます。ここからポイントを深掘りしていきますが、先日のまとめと同様、研究者以外の方には活用できる場面が浮かばないので読まない方が良いと思います。

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. Career development and counseling- Putting theory and research to work, 2, 147-183.


社会構成主義と言葉

ここからマニアックなワールドを展開しますが、そのためには前回のnoteが前提になるので以下に貼っておきます。

自己を形作る上での鍵となる存在として、サビカス先生は言葉を重視しています。

Words do not come to adhere to an essential, preexisting self. Rather, language provides the words for the reflexive projects of making a self, shaping an identity, and constructing a career.
(ざっくり和訳)
言葉は、本質的な既存の自己に固着することはない。むしろ、言語は自己を形成し、アイデンティティを形成し、キャリアを構築するという再帰的なプロジェクトのための言葉を提供する。

p.147

「固定的で本質的な自己」なるものを想定するのではなく、言葉によって自己を形作るという動態的な捉え方をしています。ここを読むと、先日のまとめの際に心理的構成主義ではなく社会構成主義寄りであるとふわっと書きましたが、やはりサビカス先生は社会構成主義に拠っているようです。ケネス・ガーゲンが構成主義を語る際には言葉を重視しており、ガーゲンは心理的構成主義ではなく社会構成主義の立ち位置にいるので、サビカス先生の理論も社会構成主義であると考えられます。

この辺りの社会構成主義のざっくりまとめは、修士の時のアウトプットをnoteにしたものがあるのでご関心ある方はご笑覧ください。

経験とアウトサイドイン

言葉によって自己を形作る上でサビカス先生は経験が源泉になると捉えているようです。

We need experiences on which to reflect, particularly interpersonal experiences, because a self is built from the outside in, not from the inside out.
(ざっくり和訳)
自己は内側から外側(インサイドアウト)ではなく外側から内側(アウトサイドイン)に構築されるので、内省するための経験、特に対人経験が必要である。

p.147

経験を内省するためには言葉が必要となり、また言葉によって経験をアウトサイドインで自己形成する存在として位置付けています。インサイドアウトではなくアウトサイドインだよ、と言っているところからも、サビカス先生は心理的構成主義ではなく社会構成主義に立脚しているということを繰り返し説明しています。

出現する意識

… self denotes an emergent awareness that is culturally shaped, socially constituted, and linguistically narrated.
(ざっくり和訳)
自己とは、文化的に形成され、社会的に構成され、言語的に物語られる出現する意識である。

p.147

ここでサビカス先生は自己というものは出現する意識であるとしています。こうした意識は、内側に閉じたものではなく、文化にも影響するし、社会的に構成されるし、言葉によって物語れるものであるとしています。最後にサラッと書いている箇所が、この後に物語(ナラティヴ)に言及していく呼水になっているようです。

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