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【論文レビュー】組織個人化とは何か?:小川(2006)

第1章で組織社会化についてのレビューを行った著者は、組織による組織社会化(組織社会化戦術など)個人による組織社会化(プロアクティヴ行動など)も、主体の違いはあっても組織への個人の適合を意図したものであるとしています。第2章で著者は、組織への適合という文脈ではなく、個人の主導性・積極性によって組織へ働きかけていく概念として組織個人化を提唱しています。

小川憲彦. (2006). 組織における社会化過程と個人化行動に関する理論的・実証的研究. 神戸大学大学院 経営学研究科 博士課程論文.

組織個人化とは何か

組織個人化について著者は、既存の組織社会化の概念との相違を踏まえて以下のように位置付けています。

p.96

具体的な組織個人化の定義としては、「知覚された個人特性(欲求・能力・価値観)に基づいた組織成員個人の要求を、組織と個人との適合を図るよう反映させることによって生じる、組織やそのサブ・システムの変化」(97頁)としています。

組織個人化の特徴

その上で組織個人化の特徴として三つあげています。第一の点は、組織からの要求ではなく個人側の要求に動機づけられているというものです。組織社会化に対するものであると捉えれば、この特徴は自然なものと言えるでしょう。この点については、ジョブ・クラフティングと類似していると考えられ、2020年代の現状ではジョブ・クラフティングの方にその後の研究の潮流は向かっていると言えそうです。

第二の点は、組織と個人との適合を志向しているという点です。両者の適合を視野に入れていることは、組織社会化と共通しながらジョブ・クラフティングとは異なるものと言えます。

第三の点は、働きかける対象が様々なレベルに及ぶという点です。この点については、個人の視点でいえばジョブ・クラフティングにおける職務の次元関係性の次元との近似性があり、組織の視点で捉えればJD-Rと近いものと言えるかもしれません。

おまけ

新しい概念を生み出すということは本当に難しいものです。先行研究を踏まえて新たなものを提示したとしても、その概念がその後も使われるかどうかは分かりません。ジョブ・クラフティングやJD-Rに言及しましたが、組織市民行動(OCB)やi-dealsといった近似の概念と近しいものであったため、なかなかその後は発展しなかったようです。個人的には、すごくよくわかる問題意識を基に提示された概念であると理解できるので、噛み締めてみたいと思っています。

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