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【論文レビュー】リアリティショックと組織コミットメントの不思議な関係!?:Dean et al.(1988)

職業柄(研究柄?)、リアリティショックに関する設問を読み込む機会があり、設問文という極めて具体的な文言を読んでいると、リアリティショックという概念って改めてなんだっけ?というゲシュタルト崩壊的な感覚に陥りました。今回は、古典的なリアリティショックの実証研究を取り上げます。

Dean, R. A., Ferris, K. R., & Konstans, C. (1988). Occupational reality shock and organizational commitment: Evidence from the accounting profession. Accounting, Organizations and Society, 13(3), 235-250.

リアリティショックとは

リアリティショックは、新しい組織での現実に直面した際に私たちが感じるショックです。本論文では、リアリティショックを以下のように定義しています。

the discrepancy between an individual's work expectations established prior to joining an organization and the individual's perceptions after becoming a member of that organization

p.235

こちらについては尾形真実哉先生が『若手就業者の組織適応』できれいに訳出してくださっているのでありがたく引用します。

組織に加わる前に形成された期待と組織構成員となった後の認識の間の不一致

『若手就業者の組織適応』p.32

調査対象

本研究での対象はフォーチュン100に選定されている企業および会計事務所のビッグ8(現在は再編されて「ビッグ4」と呼ばれますね)で働く172名です。平均年齢は23.2歳となっていますので、いわゆるアメリカの大企業に学校を卒業した直後くらいの若手社会人をイメージすれば良いでしょう。

リアリティショックと組織コミットメントの非対称な関係

本論文で興味深いのはリアリティショックと組織コミットメントの一見すると不思議な関係性です。

まず私たちにとって違和感がない真っ当な結論としては、リアリティショックは組織コミットメントに影響するという部分です。具体的には、個人が事前の期待よりも事後の現実に幻滅する場合には組織コミットメントが低下するとしています。これは、わかりやすいでしょう。

興味深いのは、「事前に期待していたよりも良かった!」という良い意味でのギャップは組織コミットメントの向上をもたらさなかった、という部分です。二要因理論のような捉え方をすると良さそうです。

ポジティブサプライズ

この非対称性については、のちに尾形先生がポジティブサプライズを定義して実証したことと関連しそうです。リアリティショックという概念の捉え方では、期待を下回るとネガティブに組織コミットメントに影響するものの、期待を上回ってもポジティブには作用しない、ということになると一旦は理解しておけば良いでしょう。

ポジティブサプライズについて理解したい方は、尾形先生の著書をまとめたことがあるので以下のnoteをご笑覧ください。


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