【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティはどのようにプロアクティブ行動に影響するのか?:Cai et al.(2023)
ホットな概念や理論はどんどん研究が進んでいくのですね。日本では、キャリア・アダプタビリティを扱う研究は徐々に増えてきているという印象でしかないのですが、海外では日進月歩で積み重ねられているようです。今回は、キャリア・アダプタビリティがプロアクティブ行動に影響を与えるという結論の論文で、媒介効果や調整効果を明らかにしてくれています。
全体像
まず本論文では、キャリア・アダプタビリティはプロアクティブ行動(Proactive Work Behaviour)に影響を与えるということを明らかにしています。
その上で、LMX(Leader-Member eXchange)と同僚支援認識(Perceived Coworker Support)が媒介効果を持ち、将来の仕事の自己顕著性(Future Work Self Salience)が調整効果を持つ、という仮説に基づいて研究を行い、概ね仮説通りに検証されたとしています。
おおざっぱに理解するためには、上の図でイメージするとわかりやすいと思います。
将来の仕事の自己顕現性
上の関係性だけでも事足りるかもなのですが、個人的には将来の仕事の自己顕著性(Future Work Self Salience)とはなんだろう?という状況だったので、少しだけまとめます。
まず、将来の仕事の自己像(Future Work Selves)の定義としては、本論文では以下としています。
これにsalience(顕現性/顕著性)がつくので、可視化して外化されているという状態性を捉えれば良いのではないでしょうか。
キャリア・アダプタビリティ→プロアクティブ行動
最後に、キャリア・アダプタビリティからプロアクティブ行動への影響関係のメカニズムをまとめます。
まず、キャリア・アダプタビリティは、上司と部下との交換関係(LMX)が良好であったり同僚から十分に支援されているという認識(同僚支援認識)があることを経由して、プロアクティブ行動の発揮へとつながるという点が明らかになりました。
次に、両者の関係性は、将来の自身の仕事の中で実現していたいイメージが明確(将来の仕事の自己顕著性)の場合には、より効果が高まるというメカニズムも導き出されました。
本論文での調査では、キャリア・アダプタビリティとプロアクティブ行動の相関関係は0.57となっています。異常に高いというわけではないため、上記のような媒介効果や調整効果を明らかにした点は興味深いと感じました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?