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【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(9)適応:Savickas(2013)

前回は、キャリア適応戦略の中の適応資源に該当するキャリア・アダプタビリティの4つの下位次元について扱いました。もう少し俯瞰すると、アクター、エージェント、オーサー、という社会における役割におけるエージェントの説明として、キャリア適応戦略の4つの要因(適応準備、適応資源、適応反応、適応結果)をサビカス先生は前段で説明していました。今回は、適応準備、適応資源、適応反応、適応結果の関係性についてまとめます。

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. Career development and counseling- Putting theory and research to work, 2, 147-183.

4つの要因の関係性

適応準備、適応資源、適応反応、適応結果はそれぞれどのような関係性になっているのでしょうか?サビカス先生はその関係性を一文で明瞭簡潔に説明してくれています。

Better outcomes (adaptation results) are achieved by individuals who are willing (adaptive readiness) and able (adaptability resources) to perform coping behaviors that address changing conditions (adapting responses).
(ざっくり和訳)
より良い成果(適応結果)は、意欲を持ち(適応準備)、[その意欲を遂行する]能力を有し(適応資源)、変化する状況への対処行動を取る(適応行動)個人によって得られる。

p.162

意欲と能力と行動によって成果(アウトカム)を得るという関係性であることがわかります。この関係性について、フライト・アテンダントを例に説明してくれているのですが、長いのでここでは割愛します(他の箇所でも出てくるのですがサビカス先生は譬え話がお好きなようです)。

適応して何を目指すのか?

では、適応することによって私たちが目指しているゴールについて、サビカス先生はどのように説明しているのでしょうか?

Career construction theory views goals as arising from what an individual needs to feel secure. Interests connect personal needs and relevant goals.
(ざっくり和訳)
キャリア構築理論では、ゴールは個人が安心を感じたいと求めるものから生じるとしている。関心は個人的なニーズと関連するゴールとを繋ぐものである。

p.162

ここでキーとなるのは個人的なニーズとゴールとを私たちは繋いでいるという考え方です。個人と社会との相互作用を述べながら、サビカス先生は、個人がニーズとゴールとを繋ぐとして個人による働きかけを重視しているとも読み取れます。

interest

個人のニーズという言葉をハイライトした上で、サビカス先生は「interest」という単語の原義を説明して深掘りしていきます。「adapt」に続いてここでもラテン語ではどういう意味だったのか、という点からの熱い記述です。

From Latin, inter est means ‘‘to be between.’’ Interests are psychosocial tensional states between an individual’s needs and social opportunities to fulfill those needs. The individual looks for interesting objects and activities in the environment that will be useful in meeting goals.
(ざっくり和訳)
ラテン語では、「inter est」は「間に存在すること」を意味する。関心とは、個人のニーズとそれを満たす社会的な機会の間に介在する心理社会的な緊張状態である。個人は、ゴールを達成する上で役立つ興味深い対象やアクティビティを自身を取り巻く環境の中で探す。

p.163

interestもinterestingも中学校で習う単語のためサラッとした理解になっていましたが、ここでのサビカス先生の分厚い解説によって理解を改めることになりました。個人と社会との関係性が述べられているとともに、そこにおける個人の働きかけについてここでもサビカス先生は重視していることが読み取れます。

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