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【読書メモ】『定年前と定年後の働き方』(石山恒貴著)

石山恒貴先生よりご恵投いただき、ありがたく拝読させていただきました。どうもありがとうございます!本書を読むと、シニアの活躍についてケースを基にしながら学びを深めることができます。個人的には、よく存じ上げている石山ゼミの現役生・修了生の方々が続々と登場されるのも興味深かったです。研究指導をされながら、石山先生ご自身も学びを深めていらっしゃることが読み取れ、じわじわと感動します。

幸福感のU字型カーブ

本書では、幸福感を縦軸にして年齢を横軸にプロットすると、なぜ48.3歳を底にしたU字型を描く現象が生じるのかを考察しています。具体的には、「シニアになり加齢していくと、様々な喪失や衰えがあるはずなのに、幸福感が高まっていく」(51頁)というエイジング・パラドックスに着目して、シニアが活躍するヒントを探究されています。

シニアの活躍に活きる三つの理論

シニアが元気にゆたかに活躍するために役立つ理論として、SST、SOC理論、ジョブ・クラフティングが紹介されています。

①SST

一つ目は社会情動的選択性理論(Socioemotional Selectivity Theory:SST)です。シニアの文脈で言えば「シニアが自分にとって意義ある目的と親密な人との交流を重視するという理論」(78頁)というように分かりやすく石山さんが解説してくださっています。ありがたや。

②SOC理論

SOC理論は、正確には「Selection Optimization with Compensation theory」で、選択最適化補償理論と訳されます。と言われてもちょっとよく分かりづらいかもですが、石山さんの解説によれば、「①選択によって目的を特定し、②その目的を最適化するための工夫を行い、③その際に自分ができないことについては補償していく」(79頁。太字ハイライトと丸内数字は引用者)という理論です。

③ジョブ・クラフティング

①と②は、シニアが自身にとっての意義のある目的を設定するという、幸福感が高まる背景についての説明でした。その上で、特定された目的に向けての意識と行動というプロセスを説明するものがジョブ・クラフティングです。

ジョブ・クラフティングは、これまでも何度もnoteで扱ってきたので、詳しく理解したい方は以下のURLをご笑覧ください。ざっくり一言で言えば仕事の工夫のことで、認知の次元、タスクの次元、関係性の次元の三つの次元で捉えられます。

ここまで理論的な部分に焦点を置いて私がまとめていますので小難しく感じるかもしれません。しかし、本書では、様々な事例を基に分かりやすく書いてくださっています。ケースから学びたい方はぜひ安心して読んでみてください。

周りが見えないジョブ・クラフター

ジョブ・クラフティングの解説の部分で、「周りが見えないジョブ・クラフター」という興味深い言葉が出てきます。つまり、独りよがりで勝手に工夫をしてしまい、ありがた迷惑な仕事になって周囲から疎まれる、というなかなかしんどい状況です。本書ではシニアの事例として出てきますが、シニアだけではないものと言え、若手社員でも「周りが見えないジョブ・クラフター」になっている例は見たことが何度かあります。

では、こうならないためにはどうすれば良いのでしょうか。認知の次元とタスクの次元だけで工夫を行おうとすると、ともすると独りよがりのものになってしまいますが、大事なのは関係性の次元も意識することです。自分視点だけではなく、他者視点も踏まえた取り組みが、職場での工夫には欠かせないということなのでしょう。


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