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【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(8)キャリア・アダプタビリティ:Savickas(2013)

ようやく、私の主な研究領域であるキャリア・アダプタビリティに辿り着きました。ここまでを簡単にラップアップします。キャリア構築理論では、三つの社会的役割としてアクター、エージェント、オーサー、を提示しています。そのうちのエージェントは家族以外の社会的な環境における適応を、適応準備、適応資源、適応反応、適応結果という四つを想定し、このうちの適応資源がキャリア・アダプタビリティであるという位置付けです。

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. Career development and counseling- Putting theory and research to work, 2, 147-183.

適応準備とキャリア・アダプタビリティ

キャリア・アダプタビリティの先行要因である適応準備について少しだけ触れます。適応準備とは、環境変化に適応しようとする柔軟性や意思といった特性です。自尊感情とかビッグ5などが具体的には先行研究で明らかになっています。

サビカス先生によれば、適応準備そのものだけでは行動(適応反応)には移らないとしています。特性と行動の間には、行動しようという心理的資源が間に介在し、この心理的資源=適応能力=キャリア・アダプタビリティ、ということなのです。

キャリア・アダプタビリティ

キャリア・アダプタビリティについては過去のnoteでも何度か扱ってきましたので詳細は端折りますが、ざっくりいえばキャリアを開発する上での障害やトラウマに対処するための心理社会的な資源であり、四つの下位次元で構成される概念です。

どうやら過去の私が訳してくれているので以下にその図を貼りつつ、当時のnoteのリンクも載せておきますので気になる方はご笑覧ください。

ポイントは上の図に記載されていますが、少しだけマニアック解説をそれぞれの下位次元に対して行います。

concern/関心

四つの下位次元は基本的には並列関係のようなのですが、サビカス先生は、「Concern about one’s own vocational future is the first and most important dimension of career adaptability.」と述べていて、キャリア・アダプタビリティの四つの下位次元のうち最も重要な次元であると明言しています。関心は未来志向に関するものであるとしていて、サビカス先生に影響を与えた方々の言葉で言えば、スーパーの「planfulness」、クライツの「orientation」と近いものであるとしています。

control/統制

統制は二番目に大事だとサビカス先生は述べています。その上で、個人間の関係性を自己規制するという意味合いではなく、個人内のプロセスを自己規制することによって、自分自身の職業上の将来を統制するものであるとしている点に着目するべきでしょう。

curiosity/好奇心

好奇心については「三番目に大事」というような表現はありません。外側に向けた意識であり、キャリア開発に向けた探求情報探索といったオープンさに関するものであるとしています。

confidence/自信

自信とは、自分自身の関心に基づいた行動を行えるというものです。自己効力感とつながるものであるという言及もあります。

まとめ

好奇心での探求と情報探索、自身での自己効力感、というようにこれらの二つは適応反応として想定されている概念との関連が示唆されています。つまり、好奇心と自信は外的な志向性がやや強く、関心と統制は内的な志向性がやや強い、ということなのかもしれません。

サビカス先生は、4つの下位次元の内容について端的に一文で以下のように説明しています。

In theory, individuals should approach tasks, transitions, and trauma with a concern for the future, a sense of control over it, the curiosity to experiment with possible selves and explore social opportunities, and the confidence to engage in designing their occupational future and executing plans to adapt.

p.161

一文で要約されているのがありがたいですね。それぞれの役割がはっきりとわかるような気がします。

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