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【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(11)3つのキャリア支援:Savickas(2013)

クライエントのニーズに基づいて実践家が提供するキャリアに関する支援には、①職業ガイダンス、②キャリア教育とコーチング、③キャリア・カウンセリング、といった主に3つのものがあるとサビカス先生はしています。支援施策に関する相違点について、トマス・クーンのパラダイム論を引用しながら述べておられ、時代や状況による違いを強調したいことが推察されます。

Savickas, M. L. (2013). Career construction theory and practice. Career development and counseling- Putting theory and research to work, 2, 147-183.

職業ガイダンス

職業ガイダンスは、工業社会において転居を含めて個人が職業を選択するというニーズに即したものであることが説明されています。職業とは客観的指標に基づいてクライエントにとって適したものとのマッチングが図られるものである、という捉え方です。この職業ガイダンスはアクターに対応するともしています。

こうした職業ガイダンスに影響を与えているパラダイムにおける考え方は、①自己認識を向上させる、②職業に関する情報を収集する、③職業機会や学問上の専門性に個人をマッチさせる、というものであったとしています。

キャリア教育とコーチング

キャリア教育は、企業の中で出世の階段を登るための個人のニーズに合わせたものであると説明しています。職業ガイダンスが客観的な観点で行われるものだったのに対して、キャリア教育は主観的な観点、すなわち個人としての発達に焦点が当たり発達上の課題への対応として行われるものと解説しています。キャリア教育とコーチングはエージェントに対応するようです。

キャリア教育およびコーチングに影響しているパラダイムは、①人間の発達段階を測定する、②差し迫った発達上の課題や職業の移行に合わせる、③関連する態度・信念・コンピテンシーの準備を進める、ものであるとサビカス先生は解説しています。

キャリア・カウンセリング

職業ガイダンスは客観的な観点、キャリア教育は主観的な観点、であったのに対して、キャリア・カウンセリングはプロジェクトの観点から行われるとしています。このキャリア・カウンセリングはオーサーに対応していることも併せて説明されています。

ここで影響を与えているパラダイムは、①キャリアの物語を構築・脱構築する、②機会的なプロットやキャリアテーマを再構築する、③自身の物語における次のエピソードを共創する、といったものだそうです。訳してしまうと伝わりづらいと思いますが、construct、deconstruct、reconstruct、coconstruct、という4つの「construct」が続けられていてサビカス先生はかなりこだわりを持っておられるようです。次の節で詳しく書かれているのであらためて取り上げます。

補足

念のために補足しますが、職業ガイダンス、キャリア教育とコーチング、キャリア・カウンセリング、の3つの間に優劣関係があるわけではありません。それぞれに影響を与えたパラダイムに時代や環境の相違はあるものの、アクター、エージェント、オーサー、というサビカス先生の三つの社会的な関わりとしての役割に対応していることからも、いずれも大事でありそれぞれに役割が異なる、という位置付けであることを補足しておきます。

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