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【論文レビュー】職業的社会化はどのように測定できるのか?:藤井(2018)

職業生活への適応を表すものとして職業的社会化という概念があります。本論文では、看護職員を対象として職業的社会化を測定するための尺度を開発し、その信頼性と妥当性を検証しています。

藤井宏子. (2018). 看護職員の職業的社会化尺度の開発. 産業カウンセリング研究, 19(2), 69-81.

職業的社会化と組織社会化

本論に入る前に、職業的社会化組織社会化についての相違について触れます。すごくややこしいことに両者は同じものなのか、違うものなのか、でいくつかの異論があります。日本での組織社会化研究のレビュー論文として高井評価を得ている高橋(1993)では、Scheinも用いながら以下のように整理しています。

高橋(1993)p.4

Scheinは、職業的社会化の中に組織社会化が含まれるという包含関係を述べているのですが、高橋(1993)では組織社会化には二つの側面があり、職業的社会化=技能的側面、「組織社会化」=文化的側面というように考えているようです。本論文も高橋論文を引用しているところから、高橋論文の概念整理を踏まえての職業的社会化と捉えれば良いでしょう。

対象が看護職員であることを鑑みれば、プロフェッショナル色の強い職業において職業的社会化が課題になると想定されているとも考えられます。

信頼性の検証

信頼性についてはクロンバックのα係数で検証しています。六つの下位尺度および全体の尺度について以下のように検証されたとしています。

p.75

下位尺度で最も低い値でも0.79ですし、問題がないことが窺えます。

妥当性の検証

妥当性については職業的コミットメントとの関連性を検討しています。両者の相関係数が0.36であったことから弱い相関が確認されたとしながら、値が比較的低いことから課題が残ったと要約で言及されています。

下位尺度の利用可能性についての検討

信頼性の箇所で書いた通り、六つの下位尺度が抽出されたものの、探索的因子分析の結果としては一因子が妥当であると結論づけています。そのため著者は、二次因子分析を行い、下位尺度で個別に分析するのではなく、下位尺度の総和である尺度全体で測定されるべきである、と結論づけています。

p.74

二次因子分析の取り扱い方法についても参考になる論文でした!二次因子分析について詳しく知りたい方は以下をご笑覧ください。


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