見出し画像

【読書メモ】リアリティ・ショックとは何か?:『若年就業者の組織適応』(尾形真実哉著)

尾形先生の『若年就業者の組織適応』の第3章ではリアリティ・ショックが扱われています。リアリティ・ショックとは、本書では「入社前に形成された期待やイメージが、入社後の現実と異なっていた場合に生じる心理現象で、新入社員の組織コミットメントや組織社会化にネガティブな影響を与えるもの」(p.33)という意味合いで用いられています。

リアリティ・ショックが生じる背景

私たちが新しい組織に参入する際、入社前の職業的および組織的予期的社会化から仕事や組織に対して期待を形成されます。その期待が入社後の組織の現実とズレる際にリアリティ・ショックが生じるという関係性です。

ではリアリティ・ショックをどのように測定できるのでしょうか。

四次元構成

著者は、事前のインタビュー調査から16項目を設定して調査を行い、探索的因子分析の後に確認的因子分析を行い、同僚同期ショック、仕事ショック、評価ショック、組織ショックの4次元11項目で構成されるとしています。

こうして把握できるリアリティ・ショックがどのような影響を与えるかについても調査されています。

リアリティ・ショックの影響

まず、四次元の中の仕事ショック、評価ショック、組織ショックの三つは情緒的コミットメントに負の影響を与えています。これらの三つの期待値のズレは、新たに参入した組織に対する情緒的な意味での組織コミットメントに悪い影響を与えるということです。

また、四次元のうち評価ショックは離職意思に正の影響を及ぼしています。つまり、給与や昇格といった評価に関する期待値のズレへの気づきが離職をもたらすということです。まあそれはそうかなという感じがしますね。

なお、職業的社会化や文化的社会化といった組織社会化へはリアリティ・ショックは影響を与えないということも検証されています。これはこれで興味深い発見事実で、リアリティ・ショックがあっても組織社会化には関係がないようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?