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ゴーストバスターズ/フローズン・サマー

海水浴のシーンはあるからサマー・シーズンの話なのだろうが、登場人物のほとんどが長袖姿ということを考えると、海開きが始まったばかりの時季(5月下旬から6月上旬あたり)の話なのだろうか?
なので、フローズン・サマーという邦題には違和感しかなかった。原題通り、フローズン・エンパイアで良かったのでは?

それから、予告編で使われていたバナナラマ“ちぎれたハート”が本編では流れなかったのも残念だった。

同曲は1984年の映画「ベスト・キッド」の挿入歌となった楽曲だ。

「ゴーストバスターズ」と同じ84年に1作目が公開され、その後、シリーズ化されたり、リブートされたり、オリジナル版のキャストが再登板した続編も作られたりと共通点が多い両シリーズがバナナラマでつながるのも面白いなと思っていただけに本編で使われなかったのは残念で仕方ない。

楽曲と言えば、前作「アフターライフ」もそうだったが、レイ・パーカーJr.による1作目の主題歌“ゴーストバスターズ”をかければファンはそれだけで満足すると思っていないか?

確かに満足するけれどさ。

でも、89年の続編の時にはRUN DMCによるラップ・バージョン、2016年のリブートの時にはフォール・アウト・ボーイとミッシー・エリオットのコラボ・バージョンと、ウォーク・ザ・ムーンのカバー・バージョンが発表されていたことを考えると、ちょっと手抜き感はあるかなと思ってしまう。

そう言えば、1作目公開当時、自分はレイのオリジナル・バージョンのシングルを買って、何度も繰り返し聞いていたんだけれど、祖母はこの曲が「ゴーストバスターズ」という映画の主題歌だということも知らないのに、“お化けっぽい曲、最近よく聞いているよね”と言ってきたんだよね。
老若男女、誰が聞いてもお化けの曲って分かるのはすごいと思う。盗作騒動を抜きにしてね。

ストーリー自体はつまらなくはないんだけれど、コメディ色が薄かったことには物足りなさを感じた。その分、ホラー要素は増していたような気はするが。

ただ、ドラマ部分は非常にエモーショナルだった。

前作から主人公となったメガネっ娘女子(オリジナル・メンバーのうちの1人の孫)と母親やその恋人との関係の描写はこれぞ青春映画という感じだった。

母親の恋人は学者としては尊敬しているけれど父親としては認めたくない。母親は祖父や母の恋人と比べると普通の人だから偉大な人物には思えない。そういう思春期の若者の持つ複雑な感情がよく描けていたと思う。

この主人公に関しては同世代の幽霊(幽霊になった時点での年齢が今の彼女と同世代というだけだから、生誕した年という意味での実際の年齢は遥かに年上だとは思うが)との友情と裏切りの描写も感動的だった。

それから、今回、初登場となったインド系の青年の成長とか、オリジナル・メンバーが老いを認めながらもできる限りのことをしていこうと悟る姿なども心に訴えるものがあった。

ところで、ここ最近のハリウッドはキャンセル・カルチャーが蔓延しているのに、ビル・マーレイに関しては発動されないのは何故?差別の対象がアジア人だったから軽視されているのか?相手が黒人やLGBTQだったら、干され状態になっていたよね?
ビリー・アイリッシュもアジア人蔑視発言をしたのに普通に賞レース常連のままだしね。その一方で、絶大な人気を誇りながら、黒人蔑視で批判されたモーガン・ウォレンはグラミー賞に無視されているし。

どこまでが真実かは分からないが、今回のアカデミー賞授賞式で一部受賞者がアジア系のプレゼンターを軽視したのではとの騒動が起きたが、ビル・マーレイが干されていないのを見ると、米エンタメ界には意識しているか否かはさておき、アジア人に対する差別や蔑視とまでは行かなくても、軽視する傾向はあるんだなというのを実感した。

本作は1作目、2作目のメガホンをとったアイヴァン・ライトマン監督の死後初めて発表される「ゴーストバスターズ」シリーズ作品ということで、エンド・クレジットには彼に捧げるとの表記があった。1作目を楽しんだ世代としては寂しい気持ちでいっぱいになった。

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