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長春―Eternal Spring

本作はドキュメンタリー・アニメーションもしくは、アニメーション・ドキュメンタリーと呼ばれるジャンルに含まれる作品だ。

アカデミー賞の国際長編映画(旧・外国語映画)、長編ドキュメンタリー、長編アニメーションという3つの部門の作品賞でノミネートされた「FLEE フリー」、同外国語映画賞にノミネートされた「戦場でワルツを」や「消えた画 クメール・ルージュの真実」か代表的な作品だ。

これらの作品はいずれも政治的な題材を扱っているため、取材対象者や関係者が善人だろうと悪人だろうと、作品の公開でいわゆる“身バレ”して、その人の命が狙われるようなことはあってはならないとして顔出しのインタビュー素材を使わない配慮をしたものと思われる。

また、ジャンルはガラリと変わるが、「恐竜超伝説2 劇場版ダーウィンが来た!」は恐竜という現存しない生物の生態は実際に撮影した映像では表現できないことからアニメーションという手法が取られている。

このように、ドキュメンタリー・アニメーションもしくは、アニメーション・ドキュメンタリーと呼ばれる手法は、実写映像で伝えることができない題材の場合に使われることが多い。

しかし、本作はそうではない。

きちんと計測したわけではないが実写パートとアニメーションパートはほぼ同じくらいだ。しかも、法輪功TVハイジャック騒動の当事者が顔出しして取材に応じているし、そのうちの1人はナビゲーターも務めている。というか、そのナビゲーターはこのアニメーションの作成にも携わっている。また、中国当局に拘束後、拷問などで死亡した人についても写真で紹介されている。

いくら、生存者の多くが今は中国国外を拠点にしているとはいえ、当局が“スパイ”を送り込んでくる可能性もあるのだから、先述したアカデミー賞にノミネートされた3作品のようなアニメーション主体の構成にした方が無難なのではないかと思ってしまう。

でも、そうしないのは何故か。おそらく、法輪功の正当性を主張したいのだろう。良く言えばプロモーション、悪く言えばプロパガンダだ。
日本では現時点では1回限りのイベントでの上映しか予定されていないのも、そうした中身に対する懸念があるからだろう。

多くの日本人は思想を問わず、法輪功を弾圧する中国当局は非人道的だと思っている。

でも、チベットやウイグル、香港のように弾圧されている人たちに同情的になれない人がほとんどであることも事実だ。

それは、法輪功には新興宗教、カルト宗教的なイメージがあるからだ。というか、中国当局がそう定義付けしなくても、一般的な日本人から見たらそうとしか見えない。

幸福の科学製作による映画は実写、アニメ含めてかなりあるが、それらの作品が地上波や一般紙では取り上げられないのと同じで、法輪功側の主張を当事者が自ら語る映画を一般の映画館で流すのはどうなのかという議論は当然あると思う。また、中国大使館などからのクレームが来る恐れも否定できないと思う。

法輪功を題材にしたドキュメンタリーなら、中国当局の意見、さらには、第三者の意見もまじえて構成しないと中立性に欠けるとどうしても日本では見られてしまう。

それが、日本で一般公開できない要因だと思う。法輪功絡みでなければ中国当局を一方的に批判するドキュメンタリーは一般の観客に受け入れられるが、法輪功の思想に洗脳される可能性もゼロではない内容だと仕方ないよねってところかな。

とりあえず、アニメーションは映像や写真がないエピソードの穴埋め的なインサート映像ってことなのかな?

最後に一言。

アニメーションがCGだったことに驚いた。この手のドキュメンタリー・アニメーション(アニメーション・ドキュメンタリー)って、手描きアニメーションや人形アニメーションのようなアナログな感じの方が政治色が強く見えるからね。

とはいえ、「超恐竜伝説2」のようにバリバリのCGってワケでもないんだけれどね。

おそらく、中国の観客は国産作品に限って言えばCGアニメーションが好きだから、そうした層にアピールするにはCGでいくしかないと判断したのだろう。まぁ、この作品が中国で上映できるとは思えないのだが…。

※画像は上映会の公式HPより

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