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ついに連続ミリオン記録が途切れたAKB48

どこからをコロナ禍とするかの定義はさておき、アイドル業界的に言えば、多くのCDショップが緊急事態宣言の発令に伴って休業となった去年4月以降とするのが一つの目安ではないかと考えている。

2020年3月には世間的にはコロナの脅威が伝えられるようになり、一部の映画館では休業になったりもしていたが、まだ、マスク着用は義務化されてもいなかったし、この月にはAKB48や乃木坂46がCDシングルを発売し、接触系イベントの開催の可否が明らかでないにもかかわらず、100万枚以上のセールスを上げているので、アイドル業界的には2020年3月までをコロナ前と言っていいのではないかと思う。

そのギリギリ、コロナ前の2020年3月に「失恋、ありがとう」をリリースして以来、1年半ぶりとなるCDシングル「根も葉もRumor」をAKBがリリースした。オリコンによると初週売上枚数は約35万枚だ。「失恋」が累計で約119万枚なので、単純計算で言えば、前作比3割程度の売上しか上げられていないほど人気が下降したということになる。
初週と累計という違いはあれど、アイドル系のCDなんて2週目以降はイベント開催時に加算される分以外はほとんど伸びがないので、単純計算しても、そんなに問題はないと思う。

何故、1年半もリリースできなかったのかといえば、誰もが指摘するように、AKBというのは握手会などの接触系イベント参加券をCDに付けることによってCDの売り上げを伸ばしていただけなので、コロナ禍によって、接触系イベントが開催できなければ、CDの売上枚数を維持できないからだ。

去年7月に配信シングル「離れていても」をリリースしたが、新型コロナウイルス関連のチャリティ・シングルであるにもかかわらず、Billboard JAPANのチャート上位にランクインすることはできなかったことからも(CDシングルとしてリリースされた楽曲なら毎回、首位を獲得していたにもかかわらず)、ファンが楽曲自体には興味がなく、接触系イベントに参加するためだけにCDを買っていることは明白だ。

そんな中、他の女性アイドルグループは、接触系イベントではなくオンラインイベントの参加券を封入するという形に変更し、CDシングルのリリースを再開するようになった。
コロナ前に比べれば、どのグループも売上を落としてはいるものの(そりゃ、実際に会うために金を払うのと、オンライン上で顔を見るために金を払うのが同じ価値とは思えないから、売上が落ちるのは当然だが)、それでも、無収入になるよりは、存在が忘れ去られるよりはマシということで、そうした売り方にシフトしていった。

AKBの姉妹グループや坂道シリーズなど、他の秋元康系アイドルもそうなっていった。

でも、AKB本店だけはその路線になかなか踏み込めなかった。

その理由はドルオタなら誰もが分かることだが、長らくAKBのCDシングルとしてリリースされていた楽曲の歌唱メンバーというのは、AKBからではなく、AKBグループから選抜されていたからだ。

つまり、AKB名義のCDシングルでありながら、実際はSKE48、NMB48、HKT48、NGT48、STU48の人気メンバーが選抜されていたということだ。
そして、何故、そういう戦略を取るかというと、姉妹グループのメンバーを選抜することによって、選抜されなかったメンバーも含めた姉妹グループのメンバーを握手会などの接触系イベントに参加させることができ、それによって、AKBだけでなく各姉妹グループのファンにもAKB名義のCDを買わせることができたからだ。

ただ、コロナ禍によって、首都圏以外を本拠地とする姉妹グループのメンバーやスタッフを首都圏で開催されるイベントに参加させるのは感染リスクが高まることになってしまった。

また、これまで姉妹グループは原則、AKSが統括していたが、分社化されてグループごとに運営会社が変わったために、姉妹グループを本店のイベントに強制参加させるのが難しくなったというのも背景にはあると思う。

かといって、これ以上、CDをリリースしないままでいると、運営を維持していくための収入が途絶えてしまう。

そんな事情もあり、2010年12月リリースの「チャンスの順番」以来10年9ヵ月ぶりとなる本店メンバーのみで選抜が行われたCDシングル表題曲を出さざるをえなくなったということだろう。

もっとも、「チャンス」はじゃんけん大会上位入賞メンバーによる選抜であり、当時のじゃんけん大会は本店メンバーのみが加できるという規定だったから、そうなっただけなので、純粋な本店メンバーのみの選抜曲ということになると、配信シングルなのに何故か他の配信シングルとは異なり○枚目シングルにカウントされている2008年6月の「Baby! Baby! Baby!」以来となる。そして、これはCDシングルではないとして除外すると、その前の2008年2月リリースの「桜の花びらたち2008」以来となる。

さらに、これはインディーズ時代の楽曲のニューバージョンにすぎないとすれば、その前の2008年1月リリースの「ロマンス、イラネ」以来となるわけだから、いかに、姉妹グループメンバーを動員した接触系イベントで、AKBは延命し続けていたかが分かると思う。

ちなみに、コロナ禍になって各姉妹グループが最初にリリースしたCDシングルの売上はこんな感じだ。

SKE「恋落ちフラグ」27万枚
NMB「だってだってだって」21万枚
HKT「3-2」19万枚
NGT「シャーベットピンク」13万枚
STU「独り言で語るくらいなら」23万枚
合計103万枚

単純計算は難しいかもしれないが、AKB名義の「失恋」の売上枚数119万枚のうち8割以上は姉妹グループのファンが支えているという見方もできるのではないだろうか。

つまり、今回のAKB久々のCDシングル「根も葉も」の初週売上が20万枚ちょっとになってもおかしくなかったということだ。
それが35万枚まで伸ばせた最大の理由は、レンタル移籍というか、徴兵というか、そんな形でK-POPグループIZ*ONEのメンバーとして活躍していた本田仁美がIZ*ONE解散に伴って、AKBに戻って来たことにあるのではないだろうか。

IZ*ONEの最後の日本向けCDであるアルバム『Twelve』が13万枚くらいの売上だから、IZ*ONEのファン分の数字が足されているって感じなのかな?
勿論、アルバムとシングルでは条件が違うし、IZ*ONE全体のファンの全てが本田仁美推しではないというのは分かった上で言ってはいるけれどね。

それから、「根も葉も」のセンターは岡田奈々だが、彼女のおかげってのもあるのかな。
今度リリースされる新曲をもってSTUとの兼任が解除され、AKBに専念するというのは彼女のファンを取り込みたいという狙いだろうね。

姉妹グループの人気を支える超人気メンバーの状況を見れば、本店としてもそうしたくなるのも一目瞭然だろう。

たとえば、HKTは指原莉乃のラストシングルとなった2019年4月リリースの「意志」は30万枚も売れているのに、2020年4月の「3-2」は19万枚、今年5月の「君とどこかへ行きたい」では17万枚にまで減っている。
SKEも今年1月リリースの「恋落ちフラグ」はコロナ禍のリリースにもかかわらず27万枚も売れている。これは、コロナ前の2020年1月リリースの「ソーユーとこあるよね?」の32万枚からわずかに減った程度だ。
ところが、松井珠理奈卒業後第1弾となった今年9月リリースの「あの頃の君をみつけた」は19万枚にまでセールスが落ちている。

HKTにしろ、SKEにしろ、超人気メンバーの卒業がコロナによる影響以上に売上に響いているのは明白だ。

一方、STUは2020年9月リリースの「思い出せる恋をしよう」こそ、表題曲を1期生バージョンと2期生バージョンにわけて発表するというやり方が支持されなかったのか、コロナ前の2020年1月リリースの「無謀な夢は覚めることがない」の29万枚から20万枚にまで落ちてしまったが、今年2月の「独り言で語るくらいなら」では23万枚まで戻している。

この安定した人気は岡田奈々によるものと見て間違いないと思う。

だから、今回、AKBが岡田奈々や本田仁美のファンを取り入れようとして、実質的に“岡田奈々 feat. 本田仁美 with 愉快な仲間たち”みたいなプロモーションの仕方をするのは当然といえば当然なのかもしれない。

病み上がりのゆきりんに激しい歌やダンスは無理だし、卒業を発表したゆいはんはカップリングの卒業記念ソロ曲でフォローするから、とにかく、売上枚数減少を最小限におさえるには岡田奈々と本田仁美にかけるしかないってなったんだろうね。

まぁ、少しでもオワコン感を薄めようという苦肉の策はミエミエだけれど、やっと、ミリオンの呪縛を解き、本店メンバーのみで選抜する気になったことは評価していいんじゃないかな。

本当だったら、2015年12月リリースの「唇にBe My Baby」で、それまで続いていた初週ミリオンの連続記録(2011年5月の「Everyday、カチューシャ」以来21作連続)が途切れたんだから、そこで、ミリオンの呪縛を解けば良かったんだけれど、「唇」のカップリング曲だった「365日の紙飛行機」が朝ドラ主題歌ということもあって人気を集め、アイドル曲としては異例の配信でのロングヒットとなり、しかも、カップリング曲であるにもかかわらず、レコード大賞の大賞候補曲である優秀賞受賞作品となってしまった。当然、CDシングルの累計もミリオンを突破した。

つまり、表題曲の選定を間違えたために、初週ミリオンが達成できなかっただけ。まだまだ商売になるって思ってしまったせいで、AKBの人気は落ちていないとおごってしまったってことなんだろうね。

でも、それ以降、初週ミリオン達成が復活するようになっても、AKBグループのオタク以外に知られる楽曲は1曲も出ていない。「365日」が現時点での最新の代表曲だ。
だから、運営側はそれまで以上に接触系イベントでオタクを釣る売り方を強化せざるをえなくなってしまった。その考えは勿論、本店のみならず支店(姉妹グループ)にも広がっていった。
その結果が、特定のファンとつながることによって起きたNGTの暴行事件であり、この事件の発覚により、AKBグループのイメージは悪化し、それがきっかけで運営会社は分社化することになった。
さらにそこへ来て、コロナ禍になって接触系イベントも開催できないという事態になり、もう、握手会の参加券で売上を伸ばす商法は不可能となった。

まぁ、判断を下すまでに時間はかかったけれど、やっと重い腰をあげることができたって感じかな。

とはいえ、その新曲の「根も葉も」だが、やたらと難度の高いダンスとか、カッコいい曲とかを強調してプロモーションをしているけれど、個人的にはダンスも曲もダサいと思うんだよね…。

それこそ、初週ミリオンが途切れた2015年の頃だったらカッコいいって言えたかもしれない。かつて、「RIVER」や「Beginner」、「UZA」みたいなカッコいい曲を出したり、EDM調の「僕たちは戦わない」を出した時のような挑戦的な感じに捉えてもらうことができたと思う。

でも、2021年の新曲としてはダサいよ!

岡田奈々や本田仁美を意識して、AKBとしては精一杯のカッコいい曲にしたつもりなんだろうけれどね…。

ところで、歌詞ではI heard the rumorと言っているけれど、個人的には、アイ・ハード・ア・ルーマーと、ザではなかアにした方がしっくり来るんだよね…。

バナナラマ、1987年の大ヒット曲のせいかな?

もっとも、バナナラマは英国のアーティストだから、ルーマーの表記は米国式のrumorではなく、英国式のrumourなんだけれどね…。

あと、Come on, let's do it all night!ってフレーズはTM NETWORKっぽいよね。80年代のいくつかの楽曲を思い出す…。


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